明けましておめでとうございます。別に年が明けたからといって、気持ちを新たにするということもなく、今年も相変わらずゆるいアルバム紹介になること間違いなしのこの連載ですが、どうぞよろしくお願いします。
しかしあれですね、年末年始というのは、特に三箇日というのは、こう、どこか世間の動きが止まったような独特の感がありますよね。若い頃からずっと正月休みなんぞ関係のない仕事(主にバイト)ばかりしてきたわけで、その頃は「いいよなぁ、正月休みがあって」くらいに思っていたんですが、ここ数年、正月に休みがとれるようになると、これほど暇なものもなく、更にフリーランスになってからというもの、休む期間も自分次第となるわけで、そうするとのんびり休んでいいものかという罪悪感と、今年はどうなるんだろうという不安感から結局気の休まる暇もないという。というわけで、すっかり正月が苦手になってしまいました。以上、小心者の愚痴でした。
フリーランス繋がりでいうと、よくこんなことも考える。たとえば、頼めば同じくらいの結果を残す2人の人間がいた場合、依頼する側は何を基準にするのか。恐らく、クオリティだったり、仕事の速さだったり、向き不向きだったり、暇そうだとかいう理由なんだろうけど、最終的には「いい奴かどうか」なのではないだろうか。もちろん、人によって好き嫌いはあるから一概にはいえないけども、少なくとも、嫌いな奴に仕事は頼まんだろうと。
音楽の世界でも、がっちり固まったメンバーでバンドとして活動する場合と、いろんな人のバックを務める、いわゆるセッション・ミュージシャンと呼ばれる人たちが存在する。前者はひとまず置いておいて、後者はその都度違った相手と仕事をするわけで、立場的にはフリーランスといえるのではないだろうか(事務所に所属していたとしても)。
いろいろなアルバムを聴いていくうち、世の中にはそうしたセッション・ミュージシャンが数多く存在し、あちこちのクレジットで同じ名前を目にする、なんてことも少なくない。一般的にそのような人を「一流セッション・ミュージシャン」というのだけれど、その腕が確かなのは当然として、やっぱり基本的に「いい奴」なんじゃないかと思う。だから、あちこちから声がかかって、どんどん活動の場が広がっていくのではないかと。
えー、例によって滅茶苦茶前置きが長くなってしまいましたが、今回紹介したいのは、そんな一流セッション・ミュージシャン(ギタリスト)であり、ソングライターでプロデューサーでもあるダニー・コーチマーが自ら率いたジョー・ママというバンドの1stアルバム、その名も『ジョー・ママ』。そのまんま。
ダニー・コーチマーが参加したアーティストの作品について書くときりがないんだけども(あるけどね)、ざっとあげただけでも、キャロル・キング、ニール・ヤング、ジェイムス・テイラー、ジョージ・ハリスン、ビリー・ジョエルと、これ以外にも、それはもうあちこちに参加しているわけです。ちなみに彼は「クーチ(Kootch)」というニックネームで、しばしば「ダニー・クーチ」と呼ばれることもあるけれど、本人的には「クーチ」か「ダニー・コーチマー」と呼んで欲しいらしい。りょうかい。
そのダニーちゃんが珍しくリーダー・シップをとってバンドを組んで1970年にリリースしたのが『ジョー・ママ』という作品なんですが、まぁ、これがなかなかいいんです。サウンド的にはソウルやフォークなどのテイストを盛り込んだ、ちょっとファンキーなウエストコースト・ロックといったところでしょうか。個人的には7曲目の「Great Balls Of Fire/火の玉ロック」(オリジナルはジェリー・リー・ルイス)で炸裂するダニー・コーチマーのパキパキしたギターが大好き。
ダニー・コーチマーのギターって、上手いのか下手なのか、よくわからないというか、いや、実際上手いんだけど、独特の雰囲気があって、そこがまたいいんですよね。それとね、やっぱり「いい奴」なんですよ、絶対。
やっぱり「いい奴」であることが大切なんだな、とこのアルバムを聴いて再確認しているところです。頑張って「いい奴」にならなくては。たとえ表面だけでも。
Jo Mama / ジョー・ママLAのディスコやクラブで演奏活動をしていたジョー・ママを見た<アトランティック・レコード>のアーメット・アーティガンが一目惚れし、<アトランティック>からデビュー。彼らの1stアルバム『ジョー・ママ』は、今だに多くのミュージシャンやファンから支持されている名盤中の名盤である。ちなみにジョー・ママとは「Your Mother」を意味するニューヨークのストリート的表現。
http://www.wmg.jp/artist/jomama/WPCR000011467.html

穴澤 賢 (あなざわまさる)
1971年大阪生まれ。
ブログ「富士丸な日々」の作者。
高校生の頃からバンドに明け暮れ、28歳という微妙な年齢で上京するが、音楽の道から挫折するという経歴を持つ。現在は文筆業でかろうじて食いつないでいる。口癖は「ま、いいじゃん」。著書に『ひとりと一匹』(小学館)、『富士丸な日々~明日は天気か?』(小学館)、『富士丸 おでかけ日和』(日経BP社)などがある。
「富士丸な日々」 http://fujimaru.blog16.fc2.com/
「Another Days」 http://anazawa222.blog13.fc2.com/










