ホーム >> Another Side of Music >> 第58回 Muse / ミューズ 『HULLABALOO - LIVE AT LE ZENITH - PARIS / ハラバルー ~ライヴ・アット・ル・ゼニース~』
Another Side of Music

第58回
Muse / ミューズ
『HULLABALOO - LIVE AT LE ZENITH - PARIS / ハラバルー ~ライヴ・アット・ル・ゼニース~』

『HULLABALOO - LIVE AT LE ZENITH - PARIS / ハラバルー ~ライヴ・アット・ル・ゼニース~』

夏フェスに行けない体質の人に

世界的ブレイクの直前に発表し、ミューズの“究極の美学”をシーンに知らしめた、初の映像作品。2001年秋のヨーロッパ・ツアーでのパリ公演2夜から選りすぐられた約90分のライヴ映像21曲を収録したDisc-1、そして2001年春以来からの各国ツアーでのオフステージの模様がドキュメンタリー・タッチで編集された約40分のDisc-2からなる豪華内容の2枚組DVD(2002年作品)。
http://wmg.jp/artist/muse/WPBR000090701.html


オンライン購入 amazonで購入 HMVで購入


気がつけば、いつの間にか日本でもすっかり「夏フェス」が定着している。今の若い人は知らないかもしれないが、昔はそんもんなかった。いや、野外コンサートやいくつかのバンドが出演するイベントはあった。しかしそれを「夏フェス」とは呼んでいなかったし、数日間にわたって海外からもたくさんのアーティストが参加する、なんていう巨大なものではなかった。夏フェスがこれほど盛んに行われるようになったのは、ここ10年ほどのことではないだろうか。

そして自慢ではないが、これまで夏フェスというものに一度も足を運んだことがない。理由は、暑いから。その他、遠い、人が多そう、長時間立って観るのはきつそう、テントで寝るのが嫌、途中で心が折れそうなどなど、どれも軟弱なものばかり。若いときならそのようなマイナス要素は、「楽しそう」というひとつのキーワードですべてが打ち消されていたのかもしれないが、30代ともなると、少しためらってしまう。ためらっているうちに39歳になってしまい、今や少しではなく、思い切り躊躇してしまう自分がいる。

昔はよく「夏フェス、一緒に行かない?」と誘われていたが、その度に「行かない」と返事をしているうち、誰からも誘われなくなってしまった。しかし、世の中の同年代がすべてこのような反応なのかと思えば、そうでもないらしい。実際、自分のまわりをみても、30代でがんがんに夏フェスに行きまくっている人もいるし、さらに40代でも50代でも夏フェスに行く人は行くのだろう。そういう人たちは、決まって「行けば楽しいよ」という。

この違いは、いったいどこにあるのだろう。音楽好きかどうか、という部分はそれほど関係がないように思う。その証拠に、花火大会やその他の夏のイベントというイベントは、すべて夏フェス同様の理由から行くことはなくなってしまった。恐らく人間は、何歳になろうがどんな状況でも「楽しめる人」と、その前に横たわる「だるいこと全般」に嫌気がさして、その領域までたどり着けない人とに別れるのではないだろうか。いつからこんな人間になってしまったのだろう。このまま、夏フェスを楽しむことは一生ないのだろうか。今年は特に暑いから止めとくとして、来年あたり、行ってみようかな。この考え方が、いかんのか。あぁ今年も苗場では熱い演奏が繰り広げられるんだろうなあ。

と、同じようなことを思っている人も絶対いるはず。というわけで、今回そんな人にお勧めしたいのが、ミューズというバンドの『ハラバルー ~ライヴ・アット・ル・ゼニース~』というライヴDVD。ミューズといえば、今や世界にその名を轟かせ、今年のフジロックでもトリをつとめるビッグバンド。とはいってもメンバーは3人。それなのに、とても3人だけとは思えない分厚いサウンド、鉄壁のリズム、見事なアンサンブル、独特のどこかもの悲しいようなメロディー・ラインは、一度聴いたら忘れられないくらいの個性があり、そのライヴは特に評価が高く、チケットは常に即完売するという。

個人的に、ミューズはデビューした当時にちょろっと聴いただけで、実はファンというわけでもなかったのだが、巷ではえらい騒ぎになっているというので気になって観てみたら、これがなるほど凄かったと。特にマシューの「変態ギター」っぷりには度肝を抜かれた。ただ、カッコいいとは思うんだけど、そのサウンドの根底からただようクラシックの香りに、「お行儀のいいどこかのぼっちゃんだったんだろうなあ」という印象を持った。「ロックをやる奴は馬鹿でないといけない」という持論からは、少しずれてしまったのだ。

ところがどっこい、DVDの特典映像を観てみると、これがいい。何がいいって、みんな凄い馬鹿なのだ。本編ではやってなかったが、ギターは投げるし、ドラムセットは蹴散らすし、舞台セットのスクリーンに突っ込むし、客席に突っ込んで行くし、楽屋ではがんがん酒飲んでるし、スリップノットのモノマネとかして爆笑してるし、ワインをらっぱ飲みしてホテルのロビーで倒れてる奴はいるし、もうやりたい放題。めっちゃ頭悪い感じ。そう、そうでなくっちゃ。こういう人たち、大好き。というわけで、ミューズのこのDVDをオススメしたいわけです。いいのか、こんな理由で。

今年、どの夏フェスにも行く予定のない人は、このDVDでも観て、ちょっとでも馬鹿騒ぎした気分を味わってみてはいかがでしょうか。あ、本編のライヴは本当に凄いですよ。というか、その前に夏フェスに行って本物を生で体験できる人間になりたいところですが。

今回紹介した1枚

『HULLABALOO - LIVE AT LE ZENITH - PARIS / ハラバルー ~ライヴ・アット・ル・ゼニース~』 Muse / ミューズ
『HULLABALOO - LIVE AT LE ZENITH - PARIS / ハラバルー ~ライヴ・アット・ル・ゼニース~』

オンライン購入 amazonで購入 HMVで購入

世界的ブレイクの直前に発表し、ミューズの“究極の美学”をシーンに知らしめた、初の映像作品。2001年秋のヨーロッパ・ツアーでのパリ公演2夜から選りすぐられた約90分のライヴ映像21曲を収録したDisc-1、そして2001年春以来からの各国ツアーでのオフステージの模様がドキュメンタリー・タッチで編集された約40分のDisc-2からなる豪華内容の2枚組DVD(2002年作品)。
http://wmg.jp/artist/muse/WPBR000090701.html



穴澤 賢 (あなざわまさる)

プロフィール

穴澤 賢 (あなざわまさる)
1971年大阪生まれ。
ブログ「富士丸な日々」の作者。
高校生の頃からバンドに明け暮れ、28歳という微妙な年齢で上京するが、音楽の道から挫折するという経歴を持つ。現在は文筆業でかろうじて食いつないでいる。口癖は「ま、いいじゃん」。著書に『ひとりと一匹』(小学館)、『富士丸な日々~明日は天気か?』(小学館)、『富士丸 おでかけ日和』(日経BP社)などがある。

「富士丸な日々」 http://fujimaru.blog16.fc2.com/
「Another Days」 http://anazawa222.blog13.fc2.com/