ホーム >> Another Side of Music >> 第59回 Geoff and Maria Muldaur / ジェフ&マリア・マルダー 『POTTERY PIE / ポテリィ・パイ』
Another Side of Music

第59回
Geoff and Maria Muldaur / ジェフ&マリア・マルダー
『POTTERY PIE / ポテリィ・パイ』

『POTTERY PIE / ポテリィ・パイ』

まあいいんじゃない? と思いたいあなたへ

「真夜中のオアシス」のマリア・マルダーが夫ジェフとともに発表した、古き良きアメカン・ミュージックのフレイヴァー満載の傑作(1969年作品)。
http://wmg.jp/artist/geoffandmariamuldaur/WPCR000075394.html


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個人的に、自己嫌悪に陥っている。なぜなら駄目すぎるからだ。あれは先週のこと。『CD/BOOK』の打ち上げがあった。制作に深く関わった宮治さん、編集の高間さん、デザイナーの岡さんと"楽しいひととき"を過ごした。そこまではいい。なぜ、そこで止めておかないのか。気がつけば泥酔していて、翌日はひどい二日酔いとなった。頭はがんがんするし、何もやる気がしない。

しかし、その日までに片付けねばならない仕事があったので、頭痛に耐えながらパソコンに向かった。もがき苦しみながらも、なんとか夜20時頃にはそれなりの文字数を書いた。それでも頭は痛いままだった。今日は一滴も酒を飲むまい。そう心に誓っていると、一通のメールが届いた。そうだった。今日は友人たちとの飲み会の約束があったのだ。「悪い、今日はちょっと止めとこうかと」そう返事を打つとすぐさま「ふざけんな早く来い! みんな待ってるからな」とのこと。まあ約束は約束だ。仕方なく重い頭を引きずって四谷のホルモン屋へ向かう。でも顔だけ出したら帰ろう。ビール一杯だけ、ほんとそれだけ。

しかし気がついたら「シロ」をつまみながら焼酎ロックをがんがん飲んでいた。頭痛はどこへやら。爆笑しながら馬鹿話で盛り上がる。でも、元気になったのは完全に向かい酒のせいなのだ。そして一件目でしこたま飲んだ後、飲み足りないからと二軒目へ。そこでなぜか店の大将と「江夏がいかにすごいピッチャーであったか」について熱く語る。野球に全然興味ないくせに。そして帰宅したのが、12時すぎ。そのままベッドへ倒れ込む。

で、翌日。二日連続で二日酔い。ああなんということだ。なぜこんなことに。そう思いながら昨日書いた原稿を読み直してみると、二日酔いが吹っ飛ぶほどひどかった。ああなんということだ。あんなに頑張ったのに、あの苦労はなんだったのか。もともとひどいが、自分基準でも許せない。昨日の俺の馬鹿野郎。慌てて書き直す。結局、昨日やった仕事はすべてやり直しとなった。何をやってるんだろう。アホすぎる。サイテーすぎる。でも自業自得だ。こんな自分が嫌になる。

というような気持ちになることはないでしょうか。今回はそんなときにオススメの名曲を。それはジェフ&マリア・マルダーの『ポテリィ・パイ』というアルバムに収録されている「ブラジル」というサンバのスタンダードのカヴァー(作曲:ザビア・クガート)。メロディーは誰もが一度は耳にしたことがあるかもしれないというくらい有名な曲だが、このアルバムのヴァージョンが個人的には大好き。

陽気なメロディーと軽快なリズムで、どこか脳天気な雰囲気が漂ういっぽう、その影になんともいえないもの悲しさや、諦め、絶望の中にある希望、みたいなものが潜んでいるようで、聴いていてなんとなく「まあいいか」となるのだ。ちなみにこのヴァージョンは、映画『未来世紀ブラジル』のテーマ曲でもある。そしてこの映画は『時計じかけのオレンジ』『ブレードランナー』と並び、なぜかロック好き男の間で人気が高いので、そういう男を釣るときの「エサ」として観ておいてもいいかもしれない。

なお邦題は「未来世紀」とついているが、元のタイトルはただの『ブラジル』。しかも全然ブラジルとは関係ないという。しいていえば、ひとつの「理想郷」として「ブラジル」を位置づけしているだけで、それも本当のブラジルのことを指しているとは思えない。歌のイメージだけで「いつか、あの懐かしいブラジルへ~♪」と夢見ている感じ。配管修理工というちょい役で出演しているロバート・デ・ニーロも、鼻歌でこの曲を口ずさむ。それがまたいいのだ。

おっといけない。肝心の音楽の話をほとんど書いていなかった。このアルバムは、他にも、アメリカのスタンダードなどの古い曲を焼き直したものが多く収録されていて、全体を通してどこか「懐かしい」サウンドの仕上がりになっております(終わり)。マリア・マルダーは以前にも取り上げたし、『CD/BOOK』にも収録されているので、気になった人はぜひ。あと、自己嫌悪に陥っている人もぜひ「ブラジル」を聴いてみてください。

ところで、今日も夜にお酒を飲む約束が入っています。大丈夫だろうか。また明日も「ブラジル」を聴いて、果てしなく落ち込む自分を食い止めるしかないのだろうか。まあそれでもいいか。俺もいつか、あの懐かしいブラジルへ。

今回紹介した1枚

『POTTERY PIE / ポテリィ・パイ』 Geoff and Maria Muldaur / ジェフ&マリア・マルダー
『POTTERY PIE / ポテリィ・パイ』

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「真夜中のオアシス」のマリア・マルダーが夫ジェフとともに発表した、古き良きアメカン・ミュージックのフレイヴァー満載の傑作(1969年作品)。
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穴澤 賢 (あなざわまさる)

プロフィール

穴澤 賢 (あなざわまさる)
1971年大阪生まれ。
ブログ「富士丸な日々」の作者。
高校生の頃からバンドに明け暮れ、28歳という微妙な年齢で上京するが、音楽の道から挫折するという経歴を持つ。現在は文筆業でかろうじて食いつないでいる。口癖は「ま、いいじゃん」。著書に『ひとりと一匹』(小学館)、『富士丸な日々~明日は天気か?』(小学館)、『富士丸 おでかけ日和』(日経BP社)などがある。

「富士丸な日々」 http://fujimaru.blog16.fc2.com/
「Another Days」 http://anazawa222.blog13.fc2.com/