パット・メセニーは、常に行動することでエネルギーを自家発電する音楽家だ。そう思い知ったのは、『デイ・トリップ』の音源が2007年暮、届けられたときだった。
ブラッド・メルドー・トリオと共演した、『カルテット』(07年)発表から引き続き、すばらしかった07年9月の日本公演の興奮の余韻もさめやらぬうちに、新作が到着したからだ。わたくしが感じた驚嘆を、今あなたも共有しているのではないだろうか。
しかし、今作『デイ・トリップ』の場合、プロジェクトのスタートはいささか前になる。2003年、パットはクリスチャン・マクブライド(b)、アントニオ・サンチェス(ds)とトリオを組むことを決め、2人の快諾をえてツアーにでた。04年12月にブルーノート東京などで日本公演も行われたから、ライヴでみた方もおられるだろう。
だが、その後、ブラッド・メルドーとの共演作が2作リリースされ、気質的にも息があうブラッドとの共演に夢中なパットをみるにつけ、本トリオでのアルバムは発表されないのかもしれないと思っていた。それが、クオリティも一段とアップして見事なトリオ作として届けられたのだから、パットの実行力に頭をたれる想いなのだ。
今回のトリオは、パット史上5つ目のトリオになる。1975年12月にレコーディングされた、パットのデビュー・リーダー・アルバム『ブライト・サイズ・ライフ』のジャコ・パストリアス(b)&ボブ・モーゼス(ds)。83年録音の『リジョイシング』で組んだチャーリー・ヘイデン(b)&ビリー・ヒギンズ(ds)。このトリオ・メンバーは、2人ともパットが尊敬してやまない、オーネット・コールマンのグループの在籍経験者だった。89年には、デイヴ・ホランド(b)&ロイ・ヘインズ(ds)との『クエッション・アンド・アンサー』。そして99年にレコーディングされたのが、ラリー・グラナディア (b)&ビル・スチュワート(ds)とのトリオだ。『トリオ 99→00』を発表し、そのツアーのライヴを収録した2枚組『トリオ→ライヴ』もリリースされた。
そして今作の、クリスチャン・マクブライド(b)、アントニオ・サンチェス(ds)である。
パット・メセニー本人は、自身のギター・トリオを、結成過程で2つのケースがあると分類した。(1)演奏家同士に共演経験がなく、パットがぜったいにあうと確信して組む場合。(2)は、共演経験があり、演奏家として肌があう人同士に組んでもらう場合だ。パットは、(1)のケースがジャコ・パストリアス+ボブ・モーゼス、デイヴ・ホランド+ロイ・ヘインズで、(2)がチャーリー・ヘイデン+ビリー・ヒギンズ、ラリー・グラナディア+ビル・スチュワートだと指摘した。
そして今回の場合は前者のケースで、「ぼくがあうに違いないと、マッチ・メイキングをした」
理由は明快だった。
「この2人は、今、この地球上で最高のテクニックをもっている。そのクリスチャンとアントニオと、ギター・トリオで思いっきり演奏したかった。2人のことは人間としても大好きで、2003年から世界をツアーしてきたなかで、もちろん日本にも行き、アジア、アフリカにもまわり、親交を深めた。その過程で、トリオにバンドとしての一体感が生まれた。ツアー中のある日、ぼくたちはスタジオに入り、ライヴ感覚で演奏しまくった。その成果が、お聴きの『デイ・トリップ』だ。ぼくはその録音テープを聴き直すことなく、本トリオでのツアーを続行し、そしてブラッド・メルドーとのレコーディングとツアーへと移行した。 ブラッドとのツアーにでる前日だった。トリオでのテープを聴くと、これがとてもよかったんだ。実は数カ所でライヴ・レコーディングもしてみたが、そのライヴ演奏より、スタジオ録音の方が更によかった。いつもはアルバムを録音し、それからツアーにでるという流れだ。でも、今回のトリオは例外だ。まず最初にツアーにで、バンド感覚が生まれてから、スタジオに入った。それがよかったんだね。そしてレコーディングにあたっては、彼らのスキルのすごさ、そういう2人と演奏する喜びに焦点をしぼった。その瞬間=nowに全身全霊をこめた、ぼくたちのドキュメントを聴いてほしい」
今アルバムの最後を飾る、アルバム・タイトル・トラック「デイ・トリップ」に関し、パット本人はこう語っている。
「このトリオのために作曲し、はじめてツアーに出たときから演奏してきた。このトリオ、そしてアルバムを包括するものとして、ぜひ最後に収録したかった。このアルバムで、聴き手を『精神の旅』に連れていけたら、本望です」
3人の交わす会話に、もっと聴きたいという想いをもたせる曲であり、演奏だ。常に行動する音楽家として、パットは「次」につなぐのが大変巧い。
さて、今回の場合の「次」とは2月から3月にかけて決定している全米ツアーだが、果たして日本にもまたやってくるだろうか。
パット・メセニーのドキュメントは、ジャズの最前線を聴くことでもある。
その鼓動、息づかいを聴き、鼓舞されている毎日である。
2007年12月記
中川 ヨウ / Yo Nakagawa
日本全国のパット・メセニー・ファン感涙の一枚。アルバム『デイ・トリップ』のレコーディング直前に行われた、現トリオでの来日公演を追加収録!タイトルも感激の『トウキョウ・デイ・トリップ』!!
夢の共演、ふたたび! 『メセニー・メルドー』に続く、パット・メセニー&ブラッド・メルドーのコラボレーション第2弾。
パット・メセニーがオーネット・コールマンと共演した衝撃的名盤『ソングX』が、20年以上の歳月を経て、”リマスター&リミックス作品”として、6曲のニュー・トラックを加え、完全版として復活!
97年発表の『イマジナリー・デイ』以来実に4年半振りとなる「パット・メセニー・グループ」によるアルバム(2002年発売)。
『ア・マップ・オブ・ザ・ワールド』のサウンドトラックに続く作品。 オリジナル曲のほか、コルトレーンのスタンダード「ジャイアント・ステップス」、 ウェイン・ショーターの「カプリコーン」等のカヴァーが収録。
スコット・エリオット監督、シガニー・ウィーヴァー、ジュリアン・ムーア出演の映画 『A Map of The World』 のフィルム・スコア。オーケストラをバックに、 壮大なサウンド・コラボレーションを披露。
『レター・フロム・ホーム』発表後、 1991年に行われたPMGのヨーロッパ公演を収めたライヴ・アルバム。
前作『スティル・ライフ(トーキング)』のサウンドを踏襲し、 さらに発展させて再度グラミーを受賞した1989年の名作の再リマスター盤。
ゲフィン移籍後、1987年にリリースされグラミーを受賞したPMGの傑作が、ノンサッチから最高のリマスタリングを施されて再登場。