ウォーには数多くの魅力が有る。様々な側面が、ルーツが有る。それが「様々な音楽要素の見事な融合」と評される場合と、逆に「ソウルでもロックでも無く、しかもラテンっぽくもジャズっぽくもあって中途半端」とされてしまう場合とがあり、時代によりその追い風と向かい風が彼等には吹いている。今回のリマスター再発売が最新の追い風になればと切に願い、先ず本稿の冒頭に記しておく次第。
いかにもヒッピー期のアメリカ西海岸音楽シーンから登場したバンドらしい、様々な人種・音楽性の集合体であるウォー。バンド及び元メンバーの多くは現在も活動中だ。
ウォーは1969年に誕生した(レコード・デビューは翌‘70年)。「朝日のあたる家 (The House of Rising Sun)」他で知られる英国のビート・バンド、ジ・アニマルズのヴォーカリストだったエリック・バードンは、新たな音楽的冒険をするべくバンドを解散。解散時の拠点としていたロス・アンジェルスに残り、リー・オスカーとの新たなバンド結成を画策する中で、地元の六人組、ザ・ナイト・シフトのライヴを観る。うち五名は以前よりザ・クリエイターズと名乗って活動しており、更にそのうちの二名は高校の時からの仲間だった。ザ・ナイト・シフトの音楽を気に入ったバードンは、早くも翌日にリハーサル・スタジオの予約を入れたという。それがエリック・バードン&ウォーとなる。ちなみに「ウォー」の命名はバードンによるものらしい。平和運動の盛んな時期の、しかも米西海岸でこの名前。かなり“狙っていた”と思われ、そしてその狙い通りに話題となった。
彼等の出会い、そして後の活動にとても重要な人物が居る。ジェリー・ゴールドスタイン。現在もバンドのマニジャーで、プロデューサー、共作者としてもクレジットされている。以前よりミュージシャン、作曲家、プロデューサーとして活動してきたヴェテランで、ウォーのバイオグラフィでは、彼の動向の方がメンバーよりも重視される事がある程の、ある意味ではリーダーとも言える存在だ。ジ・アニマルズに於いて、良くも悪くもバードンは「類稀なる優秀なヴォーカリスト」であった為、バックを支えるバンド・リーダー、音楽監督を別に抱える必要があったという(主にキーボード奏者だった)。解散後、その役を担当していたのがゴールドスタインという事が言えるだろう。ザ・ナイト・シフトをバードンより先に知り、彼等を薦めたのもゴールドスタインだったそうだ。
さて、冒頭に書いた「様々な音楽要素の融合」。
彼等の出身地であるコンプトンはL.A.のサウス・セントラル地区に隣接する都市で、市民の大半がアフリカ系とヒスパニック(中南米)系だという。スペイン語も普通に使用していたそうだ。よって彼等の音楽には黒人音楽とラテン音楽の要素が色濃く反映されている。そこにバードンの持ち込む英国風味のアメリカ(特に南部)音楽と、デンマーク出身のオスカーによる、ブルーズが基本ながらもヨーロッパ人らしい端正なハーモニカ・プレイが加わり、彼等にしか出せない音楽が出来上がった。その方向性は、バードンのもとを離れ、七人(+ゴールドスタイン)で再出発をはかった ‘71年以降、本格的に開花する。
リズム・カッティング中心のハワード・スコットのギターは、派手さは無いものの、ハロルド・ブラウンのドラムズとの息の合い方は抜群。流石は最も長い付き合いの友人同士といった所か。そのブラウンのドラミングはバンドの推進力として強力なビートを刻み続ける。ファンキーというよりロックやラテンの心地良い軽さを感じる。
ソウルやファンクに於けるパカッション、特にコンガはとても重要だ。それはアフリカ回帰であり、ラテン導入でもある。以前はクリフォード・ブラウン、ディズィ・ギレスピー(ディジー・ガレスピー)等と演奏していたというパパ・ディー・アレンのコンガは、アフリカ回帰色が強い。他のメンバーも打楽器を演奏するが、東海岸ジャズ仕込みのアレンの演奏と、ラテン文化色の強い他メンバーのそれらは不思議と無理なく溶け合っている。
音数少なめに、印象的なフレイズを奏でるB.B.ディッカスンのベイス。メロディよりもベイスのメロディを憶えている、そんな曲も少なくないだろう。現在もウォーに在籍する唯一のオリジナル・メンバーである(よって現在は必然的に彼がリーダーだ)ロニー・ジョーダンは、特にオルガンでバンドの個性確立に貢献している。
そして、いわゆる「上もの(うわもの)」担当なのがチャールズ・ミラーとオスカーだ。五人の作り上げたグルーヴに乗っかったり間を縫ったりしての二人のソロはスリリングだ。時にホーンセクションの様にハモり(オスカーのハーモニカがサックスみたいに聴こえる時がある)、時に「御手並み拝見」といった風に場を提供し合い、二人はソロを取る。
特にオスカーはジャズ/フュージョン界で名ハーピストとして名を馳せており、ここ日本ではそちらの評価の方が有名だと思われる。ジャズ系ライヴハウスへの来日が多く、古澤良次郎との共演盤等、日本のみで発売されたレコードもある。
地域性と時代も、特にこの時期のこの土地の場合は重要だ。理想を求める、そしてシリアスに世の中を見つめるメッセイジ性の高い言葉(歌詞、曲名、アルバム名、逆説的だがバンド名もそうだ)も、殊更に煽る訳では無く、どこか淡々と発している様に感じる。
地域性。アース、ウィンド&ファイアーとシカーゴ(シカゴ)は、出身地は違えど拠点をL.A.に置き本格的に活動を開始している。少々乱暴ながら同じ州のサン・フランシスコまで同じ括りとするならば、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのフォロワーとしてのグレアム・セントラル・ステイション、サンターナ(サンタナ)、マロ、ザ・ドゥービー・ブラザーズ、リトル・フィート、タワー・オヴ・パワーといった面々と歩調を合わせていた。ロス・ロボス(イーストL.A.だ!)やシーラ・E.は優秀な後継者と言えるだろう。
時代の横並びならば、NYのマンドリル、英国のオシビーサ(オシビサ)、NJのクール&ザ・ギャング、そして宇宙からあらゆる街のゲットーへ着陸したP-ファンク軍団等など。
上記の顔触れに属する形で、「ロック、ソウル、ファンク、ラテン、フォーク、ジャズ等の多くの要素を独自の配合具合で混ぜ合わせた、個性的な音楽を作っているバンド」として、ウォーを位置付ける事が出来ると思う。又、’71年のヒット曲「Slippin’ into Darkness」のハーモニカ・フレイズが、ザ・ウェイラーズ(ボブ・マーリー)の「Get Up, Stand Up」(‘75年)のメロディのヒントになっていると、当時も話題となったという(余談だが、レゲエは中南米のハード・ファンクという捉え方も可能だ)。
僕がウォーの歴史を振り返って先ず連想するバンドはシカーゴだ。音楽性というより、むしろバンドの体質や運営法に於いての共通項で、という事になるけれど。
どちらも拠点をL.A.に置いている。レコード・デビューは一年違い。マニジャーが音楽面でもリーダー的な立場(プロデューサーやソングライターでもある)。フロントマンを立てずに、バンドの結束を売りにしている(「顔の見えないバンド」というマイナス面も有る)。複数の音楽を混ぜる事で独自の個性を生み出している。曲を書けて歌えるメンバーが複数居る。シカーゴのマニジャーが経営するスタジオをウォーが使った事もある。
大きく違うのは、シカーゴはオリジナル・メンバーのうち半分が現在もバンドに在籍しているのに対し、ウォーは一人だけ。しかも何と他の四人(二名は既に物故)が別のバンド「The Lowrider Band」でウォーのナンバーを演奏しているという所。ザ・ビーチ・ボーイズ、ピンク・フロイド等もそうだが、かつての仲間が分裂してしまっているのは残念だ。ロゴマークの「W」「A」「R」は一つに繋がっているというのに。JRやVR[ヴェルヴェト・リヴォルヴァー]よりも遥か昔の話だ!
尚、ウォーのオリジナル・ラインナップは ‘79年に崩れている。今回の再発売分(ユナイテッド・アーティスツ在籍時代、~’77)は全てオリジナル・メンバーによるものだ。その後のメンバー中、特筆すべきは、2006年までハーモニカ奏者だった我等が同胞、仲村哲也(Tex Nakamura)。『Peace Sign』(’94、今回は再発売されない)と、それ以降のライヴDVDでその雄姿を拝める。僕は運良く2001年(アメリカ)と2003年(米軍横須賀基地内)に、仲村在籍時のウォーを観ている。日本人としてとても誇らしいと感じられるパフォーマンスだった。氏は自身のグループを率いて現在もL.A.を拠点に活動中。
今、特に好きなLP、‘74年の『War Live!』に針を落としながら本稿を書いている。’70年代前半のソウルやファンクのライヴ・アルバムはどれも客席が近く感じられて(実際に小さな会場なのだが)、素晴らしいものが多い。ダニー・ハザウェイ、クール&ザ・ギャング、ジェイムズ・ブラウン、ザ・クルセイダーズ、カーティス・メイフィールド、ジ・アイズリー(アイズレー)・ブラザーズ、アリーサ(アレサ)・フランクリン、ジミ・ヘンドリクス(バンド・オヴ・ジプシーズ)、フォー・トップス、キング・カーティス……。
『War Live!』、今回のラインナップにも含まれています。個人的に特にお薦めの一枚。上記と同じ括りの一作として是非お聴き下さい。
(2008年2月筆 人見 ‘Hit Me!’ 欣幸)
ブラック・ムーヴィーの傑作『Youngblood』のサウンドトラック・アルバム。サントラの枠を超越した充実の仕上がり。
ブルーノート・レーベルからリリースされた、新曲と過去音源で構成された2枚組(1977年作品)。シングル・カットされた重量級ファンク「L.A. Sunshine」は、全米チャート2位の大ヒットを記録。
『The World Is A Ghetto』と並ぶ代表作。 タイトル・トラックはポップ・ミュージック史に残る大名曲!
前作での大成功によるプレッシャーをはねのけ、制作された4枚目。 自由度の高いサウンドが話題を呼んだ、ウォーの新境地ともいえる1枚。
73年のビルボード年間アルバム・チャートにおいて見事1位を記録した、ウォーの大傑作。ソウル、ファンク、ジャズ、ラテン…を絶妙にミックスアップした、ウォー・サウンドの真骨頂がここに!
ウォーとバードンのコラボレーションによる2作目。バードンの白人とは思えないソウルフルなヴォーカル、ウォーのジャジー&ファンキーなサウンドが光る!
エリック・バードンとウォーの個性が溶け合った傑作。全米チャート3位の大ヒットを記録したシングル「Spill The Wine」収録。
LAファンクのアイコン、ウォーの決定的ベスト盤。レーベルを超え、珍しいシングル・ヴァージョンなどレア・マスターを多数含んだライノならではの選曲とニュー・リマスター。