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今、この刹那にのみ光り輝くポップ・ミュージック。かっこいい。美しいコンセプトだと思う。時代の変化ととも
に表層をくるくる変えながら、スピーディに現れては消える。“常に新しくあらねば”という強迫観念的な価値観
のもと、その激烈なスピード感に対応すべく、パンクだテクノだヒップホップだオルタナだと目移りさせていくの
も、確かに音楽ファンにとって楽しい追いかけっこではあるのだけれど。
でも、そんなふうに作り捨て/聞き捨ての勢いで時代を駆け抜ける数多のポップ音楽の中に、ときおり鋭く
永遠の真実を射貫くメロディなり歌詞なりサウンドなりがまぎれこんでいることがあって。それが、やがて時を超
え“永遠”へと昇華する。こうした流れなり歩みなりをじっくり味わうのも悪くない。時代の流行り廃りに左右され
ることなく、そうした渋い味わいの作品を見つけ出して、聞き捨てることなくじっくり愛し続けていくこともまた音楽
ファンにとって極上の楽しみのひとつなのだから。
と、そんな思いを新たにしてくれるのが今回の“ワーナー名盤50選〜 SHM-CD エディション〜 ”。往年の
名盤を、高音質なSHM-CDでぼくたちのもとへ改めて届けてくれる珠玉の再発シリーズだ。どんなに昔の音
楽だろうと、それがもし今なお有機的に聞き手の耳に、心に届くのならば、それは間違いなく懐メロなどではな
い、現役ばりばりの音楽なのだということを思い知らされる。ここにラインアップされた作品群に触れてみれば
わかる。単に新しく作られただけの新譜などよりはるかにいきいきと今の時代にダイレクトに響く旧譜名盤がい
かに多いことか。
レッド・ツェッペリンのファースト・アルバムに刻み込まれたやばい高揚感。クロスビー・スティルス・ナッシュ&
ヤングの『デジャ・ヴ』に漂うスリリングな緊張感。イーグルスのアルバムに溢れる爽快なハーモニーの裏側に
潜む切ない翳り。ジョニ・ミッチェルのクールでシニカルな視線に貫かれた歌詞と、静けさと激しさが共存する
歌声。シカゴのデビュー・アルバムにこめられた若者ならではの青い理想と実験精神。私的な体験をブコウ
スキーやケルアックを彷彿させるドラマティックな神話へと再構成するトム・ウェイツの卓抜したストーリーテ
ラーぶり。アメリカ南部に埋もれていた宝のようなグルーヴを躍動的に発掘してみせたリトル・フィートやドク
ター・ジョンの慧眼。白人ながらブルースやR&Bといった黒人音楽に捨て身の突進を展開したバター
フィールド・ブルース・バンドやラスカルズの男気。同じ黒人音楽に対してより理知的なアプローチを仕掛け
たドナルド・フェイゲンやトーキング・ヘッズのクールさ。鉄壁のポップ・スターとしての表層とイノヴェイティヴな
内面とを見事に共存させるプリンスやマドンナの天才ぶり。ロック音楽の歌詞に芸術的な沈静した時代の
中で孤独感を轟音ギターに乗せて爆発させるしかなかったニルヴァーナの切実さ……。
きりがない。これらすべてが世紀を超えて今なお現役の輝きを失うことなくぼくたちの耳に届く。そして、ロック
もジャズもR&Bも突然変異的に生まれたのではなく、全てひとつの太い縦軸のもと、歴史を継承しながら存
在していることをぼくたちは思い知るのだ。最新の音楽を存分に楽しみ抜くためにも、優れた旧譜には耳を
傾けねば。そのためにも、“ワーナー名盤50選〜 SHM-CD エディション〜 ”、きっとお役に立ちます。ぼくもお
世話になります。続編も待ってます。
2008年10月
萩原健太
Kenta Hagiwara
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