エリック・クラプトンとスティーヴ・ウィンウッド――ブリティッシュ・ロック・シーンを代表する2人のミュージシャンが中心となり結成された伝説のスーパー・グループ、ブラインド・フェイス。その解散から40年もの時を経て、クラプトンとウィンウッドによるジョイント・ライヴがついに実現! 2008年2月25日、26日、28日、ニューヨークはマディソン・スクエア・ガーデンでのライヴを余すところなく収録した『ライヴ・フロム・マディソン・スクエア・ガーデン』(CD2枚組、DVD2枚組)が6月10日にリリースされる。
ワーナーミュージック・ライフでは、ロック・レジェンドが凝縮された同作品の魅力に迫るべくスペシャル・インタビューを敢行! ご登場いただくのは、実際にマディソン・スクエア・ガーデンでの2人のパフォーマンスを間近で体験された翻訳家/ライターの前むつみ氏。クラプトンとウィンウッドによる、奇跡ライヴ・パフォーマンスの全容はもちろん、海外ライヴならでは楽しみどころ、マニアならではの裏話にいたるまで、とことん語りつくしてもらいました。
前編はこちら
インタビュアー:井本京太郎(ワーナーミュージック・ジャパン)

前むつみ:『カントリーサイド・ロック・フェスティヴァル』と『クロスロード・ギター・フェスティヴァル』の時は、ブラインド・フェイス時代のナンバーを中心に据えたセットリストでした。2人のお互いの持ち歌をプレイするというよりも、ブラインド・フェイスがメインというような印象。すでに2回やり、もうないのかなと思っていた中、マディソン単独公演3日間決定という報にはびっくりしました。しかも、39年前のブラインド・フェイスのマディソン・スクエア・ガーデン公演は、2人にとっては悪夢のような体験だったと思うし。
井本京太郎:バンドが終焉を迎える間際の出来事ですよね。
前: 69年の米ツアーのマディソン・スクエア・ガーデン公演の時、暴動みたいなことがあったんですよね。ステージの上のジンジャー・ベイカーのところから客席に向かって撮影した写真を見たんですけど、ステージの上に警官がいるんです。ステージが低くて、乗り上がろうとするオーディエンスと警官がもみ合いになっている傍らで、ブラインド・フェイスが演奏しているんですね。どんなに怖かったことかと…。
井本:なぜ、そんなことが起きたんですかね。
前:当時、クラプトンがあまりにも有名で、クリームがすごく評価が高かったんですね。そんな中、ブラインド・フェイスを始めたら、「クラプトンはあまり弾かないし、歌わないじゃないか!」という批判にさらされたわけです。ハイドパーク公演の映像でも、アンプの後ろで下を向いて、あまり目立たないように弾いているクラプトンをお客さんが「クリームの曲をやれー!」とか「お前、弾け!」っていう状況。ジンジャー・ベイカーなんて、どこかから棒を持ってきて殴っているし(笑)。
井本:さすが怖い先輩だ(笑)。
前:単独では、それぞれマディソンでやっていますけど、2人で、しかもマディソン・スクエア・ガーデンっていうのは、39年前の悪夢がよみがえってこないのかなって。もう克服したのかなって。だからこそ、マディソンで2人がやるっていうのはすごく意味があると思ったんですね。自分としても、マディソンであの2人がやるブラインド・フェイスのナンバーを生で聴くっていうのは、すごく重要だったんです。


井本:では、実際のライヴの模様をひも解いていきたいと思います。1曲目からいきなりブラインド・フェイスの「泣きたい気持」なんですが、事前にコアなファンの間では、こういう曲をやるんじゃないかとか何かありました?
前むつみ:前の2回、バークシャーの『カントリーサイド・ロック・フェス』と『クロスロード・ギター・フェス』でやった時の曲は当然やるんだろうなっていう予想。あとは、それぞれのレパートリーの中から選ぶのかなと。ま、いつもの曲をやるんだろうなと思っていたんですが、情報としてはまったく入ってこなかったですね。『カントリーサイド・ロック・フェス』では、「泣きたい気持」もやったし、「プレゼンス・オブ・ザ・ロード」「キャント・ファインド・マイ・ウェイ・ホーム」もやったと思う。
井本:ポイントは完全に押さえていてくれたという。そもそも、ブラインド・フェイスって、持ち曲自体が少ないじゃないですか。それをどうするのかなっていうのが、お客さんにしてみれば気になるところですよ。1時間半とか2時間半とかもたせられないですよね。
前:だから当然、それぞれの自分の持ち歌をやるんだろうなと思ったんですけど、今回のセットリストは、開けてびっくりでした。しばらく、やっていない曲がけっこうありましたから。例えば「フォーエヴァー・マン」とか。ものすごく久しぶり。
井本:単独ライヴでも聴かないですよね。
前:最後にやったのって…。90年代はたぶんやっていないと思うんですよ。だからそれぞれの持ち歌でも、長いことやっていなかった曲が多かったですね。でもそれは、スティーヴ・ウィンウッドのリクエストだったのかな。お互いのナンバーで、それぞれ好きな曲があって、「この曲やりたいな」と出し合ったそうです。だから、定番曲を今回やらなかったっていう。例えば「レイラ」とか、スティーヴ・ウィンウッドも「ハイヤー・ラヴ」や、ソロ・ライブで必ずやる「ギミー・サム・ラヴィン」もやっていないし。ちょっと不思議な選曲でしたね。
井本:アップテンポの曲の合間にやる、アクセント的なナンバーが多かったような。
前:そうですね。とはいえ、トラフィック好きの私としては、「ノー・フェイス・ノー・ネイム・ノー・ナンバー」を聴けたのは感激でしたね。まさか生でウィンウッドが歌っているのを聴けるなんて、これだけでも私はニューヨークに行った甲斐があるというね。スティーヴ・ウィンウッドって、グラミー賞も獲ってるし、ヒット曲もたくさんありますけれど、あえてそういう曲をやらずに、割と渋いというか通好みの選曲をしてましたね。「グラッド」なんていうトラフィック時代のインスト・ナンバーも入ってますし。
井本:前半と後半を比較しますと、前半は自分たちの古い曲をやりつつ、後半で、最近の傾向といえるリスペクト・シリーズをボツボツと。例えばジミ・ヘンドリックスの「リトル・ウィング」とかレイ・チャールズの「我が心のジョージア」とか、ロバート・ジョンソンが入ったりとか、J.J.ケイルをやったりとかね。
前:あと、間に1曲ずつ、バンドメンバーなしのソロでそれぞれやったナンバーも良かったですね。スティーヴ・ウィンウッドは「我が心のジョージア」を。クラプトンは、最初の2日間が「ランブリング・オン・マイ・マインド」。最後の日だけ「カインド・ハーティッド・ウーマン」をやりましたね。特にウィンウッドの「我が心のジョージア」がものすごく盛り上がってましたよ。ウィンウッドって、レイ・チャールズが本当に好きなんです。白人なのに黒人みたいに歌い上げる天才少年って、昔は言われてたくらいだから。まさに、ルーツですよね。そのウィンウッドが歌うレイ・チャールズを、アメリカ人が大絶賛していたのは印象的でしたね。
井本:共演シリーズという括りだと、この前のジェフ・ベックとクラプトンの共演を、日本人としては思い出しますよね。2日間あって、初日のクラプトンは…。
前:初日は、正直微妙でしたね。
井本:2日目になると、ものすごく柔らかく融合しているという感じが強かったと思うんですね。明らかに2日目のほうがなじんでいるというか…。
前:続けて2日間なのに、ああも違うのものかと。クラプトンは大人で、ジェフ・ベックは子供という雰囲気でしたよね。今回のジェフは、うれしくてしょうがないという感じではしゃぎまくり。若い頃はすごくストイックなプレイ・スタイルだっただけに、あの弾けっぷりは新鮮でしたね。
井本: 笑顔があまり似合わない感じ…。
前:しょっちゅう間違えるし、曲の構成も3回繰り返さなきゃいけないのに、2回で終わっちゃったりとか(笑)。感性で進んでいるような感じですね。だからベックのバッキングのメンバーは大変だと思いますよ。クラプトンはきちんとやらなきゃいけないと思ってる人だから、初日は緊張していたと思うんですよ。
井本:様子をうかがいながらやっていたというのがすごくわかるんですよね。
前:あんなクラプトンはある意味貴重。様子をうかがうあまり、体力を温存しているのかなっていうくらい弾いていないっていう印象。でも、マディソン公演は、ジェフ・ベックとの共演の時と比べると、まったく緊張しているという雰囲気は伝わってこなくて、むしろ本当に楽しそうでしたね。クラプトンはすごくスティーヴ・ウィンウッドを立てているんだなっていうのもわかりましたし。スティーヴ・ウィンウッドって、キーボード奏者としての印象があるけれど、実はギタリストでもあり、ものすごく弾けるし、ソロもいっぱい取っているんですよ。今回、クラプトンって、ウィンウッドのギターソロのバッキングに徹している場面が多いんです。立ててるなぁと。それを見た人が「クラプトンって、バッキングうまいよね」って(笑)。クラプトンがバッキングに徹しているのって珍しいじゃないですか。また違うところでの評価が(笑)。
井本:そうですね。だからスティーヴ・ウィンウッドってギタリストとして過小に評価されているんですけど、このDVDを観たり、CDを聴いた人はびっくりしますよ。実はこんなに弾ける人だったんだって。
前:いろんな意味で、貴重な体験をさせていただいた3日間でしたね。お互いにツアーのスケジュールとかも決まっていたので、すぐにやるのは無理だろうなと諦めかけてたら、いきなり6月にツアーが決定。
井本:1年4カ月後にまたこれやるっていう珍しいケースですよね。
前:珍しいですよね。でも内容を見たら、納得だと思います。こんなに楽しそうにしているクラプトンって見たことないかも。ずっと最初から最後までうれしそうにしているんですよ。スティーヴ・ウィンウッドがソロを弾いていて、うれしそうにバックでギター弾いて すごくニコニコしているんです。今まで何度も見てはいるけれど、こんなにニコニコしながら、終始プレイするクラプトンって、なかなかないと思いますね。
(輸入盤)
(輸入盤)

CD
【DISC1】
01.泣きたい気持
02.ロウ・ダウン
03.ゼム・チェンジ
04.フォーエヴァー・マン
05.スリーピング・イン・ザ・グラウンド
06.プレゼンス・オブ・ザ・ロード
07.グラッド
08.オール・ライト
09.ダブル・トラブル
10.パーリー・クイーン
11.テル・ザ・トゥルース
12.ノー・フェイス、ノー・ネイム、ノー・ナンバー
【DISC2】
01.アフター・ミッドナイト
02.スプリット・ディシジョン
03.ランブリング・オン・マイ・マインド
04.我が心のジョージア
05.リトル・ウィング
06.ヴードゥー・チャイル
07.マイ・ウェイ・ホーム
08.ディア・ミスター・ファンタジー
09.コカイン
DVD
【DISC1】
01.泣きたい気持
02.ゼム・チェンジズ
03.フォーエヴァー・マン
04.スリーピング・イン・ザ・グラウンド
05.プレゼンス・オブ・ザ・ロード
06.グラッド
07.オール・ライト
08.ダブル・トラブル
09.パーリー・クイーン
10.テル・ザ・トゥルース
11.ノー・フェイス、ノー・ネイム、ノー・ナンバー
12.アフター・ミッドナイト
13.スプリット・ディシジョン
14.ランブリング・オン・マイ・マインド
15.我が心のジョージア
16.リトル・ウィング
17.ヴードゥー・チャイル
18.マイ・ウェイ・ホーム
19.ディア・ミスター・ファンタジー
20.コカイン
【DISC2】
01.ザ・ロード・トゥ・マディソン・スクエア・ガーデン
02.ランブリング・オン・マイ・マインド(アコースティック/サウンドチェック時のパフォーマンス)
03.ロウ・ダウン(ボーナス映像)
04.カインド・ハーティッド・ウーマン(ボーナス映像)
05.クロスロード(ボーナス映像)
★注目!
ワーナー・ミュージック・ダイレクトとエリック・クラプトンのサイトでしか買えない限定商品も絶賛発売中。
輸入盤 2CD+2DVDのセット
・2CDと2DVDが、ナンバリング入り特製デザインのスリップケースに収録。
・Danny Clinch撮影による未公開フォト・カード4枚
・2008年ツアー オフィシャル・ツアー・プログラム
・公演告知ポスター
・10ドル相当の ERIC CLAPTONオンライン・ストアのギフト・カードが付属。
品番:2-517586