
たぶんこのサイトを読んでる人の中で、結果としてスティーブ・ガッドのドラムを聴いたことがない、という人はいないと思います。なぜなら、ありとあらゆるところで、スティーブ・ガッドのドラムがレコーディングされているからです。
変拍子のプログレから、ポール・サイモンから、フランク・シナトラまで。スティーリー・ダンのレコーディングで、いろんな有名ドラマーで試したのに上手くいかなかったセッションが、ガッドを呼んで来たら一発OKで終了した・・・という逸話もあるほど。
生でガッドのしなやかなドラムを見たことがある人も、ワーナー・ミュージック・ライフを読む方なら案外多いのではないでしょうか?少し前までクラプトンのツアー・メンバーで来ることもありましたね。

もしブレッカーがいなかったら?サンボーンがいなかったら?・・・フュージョンはどうなってたのだ?という例え話がありますが、個人的に思うのは、実際一番いなくて困るのは、スティーブ・ガッドだったのではないか?と。
つまりガッドがいたから、ジャズとロックやポップが高次元で融合できたし、そんなカッドが凄すぎてカッコ良すぎるから、ガッドのようになりたい!というドラマーが後に続き、それがフュージョンを面白くしたのではないか?と思うのです。
フュージョンの楽しさって、そりゃエモーショナルだったり、さわやかだったり、テクニカルなテンション・ノートが入ったソロを聴くこと・・・なのですが、フュージョン暦が長くなるとそれだけではなく、複雑だったりグルーヴィーだったりするリズム・セクションを追うことが面白くなってきます。で、「オレってドラマー・フェチだから」とか言う人が増えるのです。
そうなると、みんな「ガッドの入ってるアルバムは・・・」と探し始めるわけです。
その結果、Stepsの『Smokin' in the PIT』や『深町純&ニューヨーク・オールスターズ』のライブとか聴いてしまうと、もう気がおかしくなりそうなほど興奮してしまい、「いや、もう、やっぱドラムはガッドだわ!」とか思ってしまいます。
その後、自分のバンドの練習とかでスタジオに入ったりライブやったりすると、必ずその後の反省会では自分のプレーは差し置いて、やたらドラマーに対する注文が多くなり「なんで・・・こう・・・ガッドみたいにさぁ・・・」とか言ってしまうわけです。無理だっつうの。・・・あぁアマチュア・フュージョン・ドラマーに幸せあれ・・・。
さて、そんな偉大なガッドが愛情を持って臨んだ初めてのレギュラー・バンドと言えば、「STUFF」。
当時のニューヨークの腕利きのセッション・マンたちが集まって何をやるのか?と思えば、「テクニックを追求する」というよりは「グルーヴを追及する」バンドが結成されました。この、かなりリラックスできるインストR&B/ソウル的な側面が強いバンドの代表作といえば、1枚目の「STUFF」ですね。ガッドとクリス・パーカーという誰もが平伏すドラマー2人によるツイン・ドラム。全ドラマー・フェチも納得です!
ガッドはその後、80年代後半に初めて自分がリーダーとなるバンド「ガッド・ギャング」を結成します。聴いてビックリ。まるでSTUFF。メンバーも似てたりします。
あれほど何でもできるガッドが本当にやりたい音楽って、小手先の凄さじゃなく、シンプルな「グルーヴ・ミュージック」なのかも知れません。
名物の黒いスティックを重たそうに扱い、体を揺らせて叩くガッド。
今年64歳。彼のグルーヴを追及する旅はまだ続いているのですね。