
厳密に言うと、『ナイトフライ』はフュージョンのアルバムではないのですが、ドナルド・フェイゲンも『ナイトフライ』も、この「フュージョン万歳」で取り上げないわけにはいかないのだろう?と思うわけです。・・ですよね?
ロックンロールが誕生して以来、多数のジャズ・ミュージシャンがロック・ミュージシャンに影響を与えてきましたが、ドナルド・フェイゲン~スティーリー・ダンという人たちは、数少ないその逆・・・ロックのサイドから、ジャズ・ミュージシャンに影響を与え続けた典型的な人たちなのかもしれません。

ニュー・アルバムが出るたび、誰かどの曲のどのパートを弾くか?が話題となる特異な2人組ユニット、スティーリー・ダン。腕利きのプレイヤーに演奏を試させて平気でボツにし、他のプレイヤーを試すツワモノ。
スティーリー・ダンから離れたドナルド・フェイゲンの初ソロ・アルバムである『ナイトフライ』は、スティーリー・ダンの延長線上にあるものの、その世界観をさらに突き詰め「粋」を極めた作品。
全編に渡りラリー・カールトンのギターが絶妙に響き渡り、ブレッカーのサックスも冴えに冴えています。それのみならず超一流のフュージョン系ミュージシャンがこれでもか?と大集結。本当に上手い人たちだけが集まって歌の伴奏すると一体どういうことになるのか?が強烈にわかる1枚です。
昔は今と違って子供はオトナの音楽を聴いていて、いつのまにか音楽的に耳年増になってた・・・なんてこともあったのですが、この「ナイトフライ」は、すべてがショックでした。
とことん難解な歌詞と世界観、POPではなくJAZZに寄ったAORサウンド、オトナなジャケット。全てに「これがオトナの世界なんだよ」というものを感じました。そんな音楽を1982年・カフェバーという設定で聴かされたら、当時多感なおマセな高校生だった私にはもうたまったもんではありませんでした。さらに言うと、フュージョンを聴かせてもキレイなお姉さんの反応は鈍いのですが、『ナイトフライ』だと演奏してる人はほとんど同じなのに、キレイなお姉さんの反応が良かったのです。かくして高校時代に「フュージョンってモテる音楽ではない」とわかったキッカケになったのでした(涙)。
「ナイトフライ」発売から27年ということは、僕が初めてカフェ・バーでこれを聴いてからも27年。自分は少し成長したと思う。変わらず部屋の棚にずっと、このアナログを飾っております。
しかしまだまだ僕にとって は何もかもカッコ良すぎる作品。
「いつになればこのアルバムの全てが理解できるのだろう」と時々思うのです。
ドナルド・フェイゲンがこのアルバムで歌った近未来は、果たしていつ来るのでしょう?
少し成長したはずの僕は、まだこの作品の世界が夢物語だとは思えないでいるのです。