
今、ジャズ・ギタリストで人気ナンバーワンといえば、パット・メセニー。
アルバム発売や来日のたびに音楽雑誌を特集で飾り、コンサートやればお客さんは満員、演奏も感動的で完璧。
ジャズ以外のジャンルの人のみならず、音楽関係以外の人でも、「普段ジャズとか聴かないけどパット・メセニーは別」と言う人は多くおります。普通に考えて、ここまでの人気を誇るパットは、他のジャズ・ギタリストとは何かが違うはずです。
・・・何かが違う・・・って何なのか?を時々考えるのです。

もちろん、パット・メセニー・グループの作品の完成度たるや、他のアーティストの作品とは次元が違ってる・・・ってことはわかります。それこそ「もうこれはジャズとかフュージョンとかそういうジャンルを飛び越えてる」という曲もありますし、ある著名な人で「クラシックも含めたすべての音楽ユニットの中で、一番高いところにいるのがパット・メセニー・グループ」と言い切ってる人までいるほど。
でも、グループのみならず、シンプルなトリオ、カルテットやソロで演奏してるアルバムも多数あるわけで、どれもスゴイ。
特に前回のこのコーナーで、「パット・メセニーよりジョージ・ベンソンの方がジャズ・ギタリストとしてのテクニックはある!」と書きましたが、なのに聴くとパットの方が感動させてしまうとすれば、その理由はどこにあるのでしょう。
で、私は、それは「音色」ではないか?と思うのです。
ジャズ・ギタリストって、なぜかみんな基本的に同じような音色を作りたがります。伝統的な箱鳴りの音。どういうわけか、音色で個性を出さず、腕(フレーズやテクニック)で特徴を出そうとするのです。
しかしパットは、フルアコのほかにもシンセ・ギターも使うし、ソリッドギターも使う。更に積極的に複雑な回線で特徴的なエフェクターを使います。おまけにやわらかいピックを使い、しかもピックの「角」じゃなく「腹」の部分で弾いてる・・・その結果、「この音色といえばオレ!」というものを作り上げたわけです。
例えば、ラリー・カールトンも、シンプルなセッティングで気軽にギターを弾いてるように見えて、エフェクターその他で細かく音色をコントロールしております。ハード・ロックでは、エディ・ヴァン・ヘイレンなんて、ギターを歪ませたときの音色のこだわりは半端じゃありません。
結局、超一流の人はジャンル関係なく、みんな「これが自分の音」という音色を、意識的に作り上げています。
音楽そのものも素晴らしさに加え、その中心にあるべきものの音色が独特で人を惹きつける・・・それが人を感動させるのではないか?と。ボーカリストの命が声質であるのと同じなのですね。
アルバムとしては、ECMレーベル時代の方が聴きやすいとは思いますが、ゲフィンに移籍以降の作品はギターのみならず、すべての音色についてクリアで作り込んでいてゴージャスになっております。時代による機材の進歩もありますが、ECMを離れた理由のひとつが「レコーディングに時間をかけさせてくれない」ということもあったようで・・・アルバムのたびに最新機材を投入するお方。やはり昔から、考え方が(あまり音色にこだわらない)ジャズの人ではなかったのかもしれません。
そんなわけで、パット・メセニーで1枚というと、私は迷いなく、当時のゲフィン・レコード移籍第1弾だった『スティル・ライフ』をおススメいたします。じっくり時間をかけて全てのアレンジと音色を作りこんだ芸術的作品。たぶんECM時代からこういう作品を作りたくて仕方なかったのでしょう。
1曲目の「ミヌワノ」を最初に聴いた鳥肌は今でも忘れません。初めて生で見たのは1987年に大阪・サンケイホールでした。なぜかこの名盤、今は輸入盤しか手に入りません。国内盤出せよ、ワーナー。
で、今手に入る輸入盤はリマスターされています。あの壮大なスケール感がよりわかりやすくなっている、いいリマスタリングです。
「普段ジャズとかフュージョンとか聴かない」とか言う人も、メセニーは別ですよ。
●パット・メセニー最新作"オーケストリオン"
http://wmg.jp/artist/pat_metheny/WPCR000013761.html