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口笛太郎のFUSION万歳! 特別企画 ジェフ・ベック対談(第1回)

みなさま、こんばんは。口笛太郎です。
毎度お馴染み「口笛太郎のFusion万歳」、今回は特別企画として初めてゲストをお招きしての対談形式。
テーマは、そろそろワーナー移籍第一弾のアルバム『エモーション・アンド・コモーション』をリリースするジェフ・ベック。ご存知の通り、伝説のロック・ギタリストですが、40代前後の音楽ファンには、名盤『ブロウ・バイ・ブロウ』『ワイアード』の大ヒットなどで、ジャズ・ロック(フュージョンと言われる前の呼び名)のギタリスト・・・・という印象も強いのです。
今日は、この「ジェフ・ベックのジャズ・ロック」ということに焦点を当てて、日本のジェフ・ベック研究家の第一人者とも言える音楽ライター、細川真平さんをゲストにお迎えして、赤坂見附の「わたみん家」での対談になりました。

● 第1回
気持ちよく裏切られた最新作!

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ジェフ・ベック対談(第3回) ジェフ・ベック対談(第2回) ジェフ・ベック対談(第1回) 011 010 009 008 007 006 005 004 003 002 001 FUSION MASTERPIECE 1500

太郎(以下「太」):細川さん、本日はどうぞよろしくお願いします。

細川(以下「細」):こちらこそよろしくお願いします。太郎さんご無沙汰ですね。この前飲んだ時は同じく赤坂見附の「坐和民」でしたね。

太:そうですね。でも今日「坐和民」は満員で入れなかったので「わたみん家」になりました。私、ワタミ・プレミアム・カードを持ってるので、和民グループの店は4月末まで食事代が20%OFFになるのです。どのみち今日はギャラもこの飲み代なので、どんどん飲んで食べてくださいませ。

細:そういうことですか・・・・(涙)。わかりました! 飲みましょう。

太:ではまず、今回の新譜『エモーション・アンド・コモーション』について。これは結構、問題作だと思うのですが。細川さんほどのジェフ・ベック研究家にとって、今回の作品ってどうなのでしょう?

細:うん。まず自分のスタンスなんですけど、僕は絶えずジェフの新譜が一番好きでいたいって思ってるんです。その時の最新のジェフ、これが最高だって。

太:いきなりカッコイイじゃないですか。

細:ていうのも、1964年生まれの僕ら(太郎は1966年)って、物心付いたときにはもうビートルズは解散してたし、高校のときにジョン・レノンは死んじゃったし、ジミヘンもジャニスも現役時代を知らない。で、スティーヴィー・レイ・ヴォーンも死んじゃったし、ジミー・ペイジなんて生きてるのに最近ほとんどギター弾いてないし。とにかく伝説として生き続け、今尚現役でやっているというのは、ほとんどクラプトンとジェフ・ベックくらいのものなんですよ。

太:でもクラプトンって、やってることが「ブルースの四国の八十八箇所巡り」みたいなことで、あんまり前向いてない・・・。けど、ジェフ・ベックって前人未到の宇宙旅行の旅って感じで、進化を感じますよね。

細:宇宙旅行で、もう地球からコントロール不能状態。いつどんな感じで帰ってくるのか? ってドキドキ・・・・みたいな感じでしょ?

太:リッチー・ブラックモアなんて、アコギ持って巨乳・白人の女性と一緒に活動して、「ディープ・パープル時代の俺の音楽はよくなかった」なんて言うし・・・・。こっちは今でもディープ・パープル聴いてるんだから、アンタがそんなこと言うなよ? 夢見れないだろって・・・・。

細:(笑)。でもとにかく前を向いて進化し続けてる偉人って、やっぱりジェフなんですよ。そういう人を追っかけたいなって、本当に思います。まぁ、どう考えたって、ジェフ佐藤さん(同じくジェフ・ベック研究の第一人者)のように「BBAの時のジェフを当時生で見た」なんて言われるとそりゃ敵わないんですけど。

太:名前まで「ジェフ」って付けちゃってるし。後発の細川さんは同じ名前付けれないですよね・・・。そりゃ敵わない。

細:それでも今の若いギター好きの子とかに、「1986年のルカサーとジェフとサンタナの共演は見たよ」とか言うと、「うらやましいー!」とか言われたりして、そんな風に次の世代に自慢話ができて優越感に浸れ、これから先も追いかけ甲斐のあるギタリストって、ジェフ・ベックくらいじゃないか? と思うんです。

太:考えてみればそうだなー。んじゃ、そんな細川さんにとってのジェフ・ベックの最新作、ハッキリ言って違和感なかった?

細:あった、あった。本当に裏切られました。最初は「えっ?」「何で?」「映画音楽?」とか思った。でも、何度も聴いてるうちに「こりゃスゴくいいアルバムかも知れない」って思い始めたんです。ひょっとして良い意味で裏切ってきたのかな? っていう・・・。

太:オーケストラも入ってるし。

細:それだって最初は4曲オーケストラと一緒に・・・とか言ってたのに、聴いてみて4曲だけじゃないだろ? と。参加ミュージシャンのクレジットも最初に聞いたのとは結構変わってました。おかげでライナー・ノーツをだいぶ書き直しちゃいましたよ。それに僕が昨年インタビューしたときは、次はけっこう激しい内容になる・・・ともとれるようなことを言ってたので、聴いてみて本当にびっくりしました。

太:例えが違うかもしれないけど、ウェス・モンゴメリーも晩年、オーケストラと一緒にアルバム作ったりして、当初ジャズ・ファンにはウケが悪かったんだけど、結局今ちゃんと評価されてるっていうか、すごい意味のあるアルバムだと思うんです。何かそんな感じかなぁ。

細:ですね。ウェスって、すごい歌心がある人で、テクニックというよりは、前面に自分の歌心を押し出した作品が晩年のそれらだと思うんです。ジェフにもそういう作品はあるべきだし、それでいてよく聴くと全然イージーな作品じゃないんですよね。

太:今のジェフのテクニックと感覚の全てを使って、「いかに、エレキ・ギターでいいメロディーを弾くか?」っていう究極の目的を成し遂げた、というか・・・・。しかもそれが、ATCO(アトコ)っていう非常に伝統的なレーベルから出るっていうのも意義深いですね。

細:同じくジェフにインタビューした時に言ってたんだけど、最近よくオペラを聴くらしく、とにかく女性オペラ歌手の歌声のように、あんな風に歌うようにギターを弾きたいと思ってるんだそうですよ。今回のアルバムにも女性ボーカルがフィーチャーされてますよね。そういう意味では、これって全然企画アルバムなんかじゃなく、ジェフ・ベックの「今」を形にしたアルバムですよ。

太:でも結構勇気いっただろうなぁ。

細:最初は迷いもあったそうなんですが、ヴィニー(カリウタ/ドラム)や、タルちゃん(ウェルケンフェルド/美女ベーシスト)とかに相談したりして「いいと思う」とか言われて弾みがついた、とか言ってました。

太:丸くなったなぁ、ジェフも。5回も離婚するようなオヤジが、今や小娘に言われて納得してるってか・・・。 それはさておき、個人的には、こういう作品だったから、これを機会にジェフ・ベックを「Fusion万歳」で取り上げてもいいだろう、と思いました。そこで、ジェフ・ベックとジャズ・ロックについて。ジャズ・ロックっていうのは、恐らくマイルス・デイヴィスが開拓者で、そこにはギタリストが不可欠だったと思うのです。ジャズではマイナー楽器であったギター、しかしロックの主役であったギター。これをフィーチャーすることで、マイルスは新しいクールな音楽を作りたかったのではないか、と。で、マイルスの場合そこにいたのが、ジョン・マクラフリンだったわけですが、ヤードバーズから始まり、自身のバンドを経てBBAに至ったジェフは何ゆえジャズ・ロックに走ったのか? というきっかけについてはどう思いますか?

ジャズ・ロックの目覚め

細:そりゃ、ジョン・マクラフリンですよ。ジョン・マクラフリンであり、マハビシュヌ・オーケストラ以外考えられないですね。ジェフはことあるごとにマクラフリンを絶賛し、尊敬していると言っています。ジャズ・ロック路線の一発目『ブロウ・バイ・ブロウ』のプロデューサーは、マハビシュヌ・オーケストラも手がけたジョージ・マーティンですし。ジェフにとって彼はけっしてビートルズのプロデューサーではなく、マハビシュヌのプロデューサーだったんですね。

太:なるほど。絶えずギターの新しい形を考えていたジェフにとっては、マハビシュヌ・オーケストラを聴いて、もうギターの可能性をここに見い出した! って感じなのですね。

細:で、次の『ワイアード』なんてヤン・ハマーとナラダ・マイケル・ウォルデンという、マハビシュヌのメンバーが参加でしょ?よっぽどマクラフリンにご執心だったと思います。ロックとかジャズとかいう枠を超えて、とにかくすごいことをやっていたっていうのかな。そういうことに刺激を受けたと思います。

太:そうか・・・・マクラフリンは同じイギリス人ですからね。で、是非いつか細川さんに訊こうと思ってたのですが、ジェフのジャズ・ロック路線と同時期に、アメリカにとんでもなくすごいギタリストがいたってことで、それは奇しくもマハビシュヌのドラマー、ビリー・コブハムのソロ・アルバム『スペクトラム』(1973年)への参加で名を上げたトミー・ボーリンなのですが、彼のソロ・アルバム『ティーザー』も、1975年発表で『ブロウ・バイ・ブロウ』と同じ年なのです(実際には『ティーザー』は『ブロウ・バイ・ブロウ』の半年後に発売)。ジェフって、トミー・ボーリンのことを、どう思ってたんでしょうね?

細:うん、実はトミー・ボーリンの原稿を書くことがあってその時に相当調べたのですが、ジェフ・ベックってトミー・ボーリンについて一言も語ってないんですね。ネットから本からどれだけ検索しても出てこないんですよ。

太:それって逆に不自然じゃないですかね?

細:そう! 不自然なんですよ。『スペクトラム』でアレだけ感動してたわけですし。要は『ワイアード』って『スペクトラム』のジェフ・ベック版みたいなアルバムなわけですよ。ヤン・ハマーがいて、それに対抗できるギタリストがいて、両方のソロがあってかっこいいわけですよね。それって、やっぱりどう考えても『スペクトラム』なんだけども、ヤン・ハマーにアレだけ影響を受けている人の耳にトミー・ボーリンのギターが聞こえてないわけがないんですよね。絶対に気になっていたはずなんですけど、ほんとに一言も言ってないですよね。だから、よっぽど悔しかったか本当に評価してないか。でも、あのアルバムを聞くと評価しない訳はないと思うんですよ。
『スペクトラム』って誰が聞いてもやっぱり凄いじゃないですか! もちろんビリー・コブハムも凄いし、ヤン・ハマーも凄いんですけど、トミー・ボーリンのギターも本当に凄いんですよ! 半端じゃないですよね! それを考えると、ジェフ・ベックがあえて言わないのは、よっぽど悔しかったのか、ちょっと真似しちゃったって引け目もあるのかもしれないですね。

太:ほぼ同じ時代に出てきて違う時代に片方は死んでるけど。。。

細:死んだのってジェフ・ベックのツアーの前座の時でしょ? ジェフ・ベック本人が前座に起用したかは別としても、一応自分のツアーで前座をやらせてたって事はやっぱ認めてないはずは無いと思うんですよね。

太:あるいはジャンキーをよっぽど軽蔑してたのか、とかね。

細:だったら前座につけるなよって感じもしますしね。

太:僕はめちゃくちゃディープ・パープルに思い入れがあるわけではないんですが、トミー・ボーリンってパープルのファンにとってA級戦犯みたいなものじゃないですか? でも、上手さから言えばリッチー・ブラックモアの倍くらい上手いと思うんですけどね。

細:あと、ファンキー度合いは凄いじゃないですか!?ディープ・パープルの第4期の『カム・テイスト・ザ・バンド』で、あれだけファンキーなハード・ロックっていう世界を作れたのはトミー・ボーリンがいたからこそだし。ただ、従来のディープ・パープルのファンには認められなかったんでしょうね。

太:ファンキーさは不必要だと(笑)。

細:でも、すでにその前のアルバム『嵐の使者』でもファンキーっぽさがあったんで、多分バンドとしてはそういう方向性を望んでたと思うんですよ。でもリッチー・ブラックモアじゃ、それは実現出来なかったし、トミー・ボーリンだからできたんですね。おかげでそれで人気がなくなって解散。あと、日本に来たときに腕を怪我してて演奏がひどかったとかね。

太:クスリで動かなかったんじゃないかって説もありますね。

細:そう。日本に来る直前に行った東南アジアの国で、ヘロインか何か注射しちゃったせいらしいんですよ。そういうところはよくないところなんですけど(笑)。

太:でも、ジェフ・ベックが一言も語ってないって言うのは本当にちょっとおかしいな。。。

細:ジェフ・ベックの文献やインタビューがそれほど世に出てる訳ではないんですが、僕もしつこく調べてみたんですよ。でも本当に一言も語ってないんですね。その代わり、「ヤン・ハマーは凄い! ヤン・ハマーのシンセサイザーみたいにギターを弾きたい」みたいな事を言っているんですよ。

太:でも、だったらトミー・ボーリンのことも語っていいのになぁって思うんですけどね。

細:一言でもジェフ・ベックがトミー・ボーリンは凄かったみたいな事を言っていれば、今トミー・ボーリンはもうちょっと人気があると思うんですよ。

太:東京裁判における日本側のA級戦犯みたいなもので、誰か庇う人はいなかったのかって。(笑)

第2回へ続く