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口笛太郎のFUSION万歳! 特別企画 ジェフ・ベック対談(第2回)

みなさま、こんばんは。口笛太郎です。
毎度お馴染み「口笛太郎のFusion万歳」、今回は特別企画として初めてゲストをお招きしての対談形式。
テーマは、そろそろワーナー移籍第一弾のアルバム『エモーション・アンド・コモーション』をリリースするジェフ・ベック。ご存知の通り、伝説のロック・ギタリストですが、40代前後の音楽ファンには、名盤『ブロウ・バイ・ブロウ』『ワイアード』の大ヒットなどで、ジャズ・ロック(フュージョンと言われる前の呼び名)のギタリスト・・・・という印象も強いのです。
今日は、この「ジェフ・ベックのジャズ・ロック」ということに焦点を当てて、日本のジェフ・ベック研究家の第一人者とも言える音楽ライター、細川真平さんをゲストにお迎えして、赤坂見附の「わたみん家」での対談になりました。

●第2回
ジェフに影響を与えたギタリスト・・・。

バックナンバー

ジェフ・ベック対談(第3回) ジェフ・ベック対談(第2回) ジェフ・ベック対談(第1回) 011 010 009 008 007 006 005 004 003 002 001 FUSION MASTERPIECE 1500

太郎(以下「太」):ところで、ジェフ・ベックっていわゆるジャズの影響ってあんまりないのかな。ジャズ・ロックはあっても・・・。

細川(以下「細」):いわゆるストレイト・アヘッドなジャズの影響は無いかもしれないですね。でも、レス・ポールはジェフ・ベックの若い頃のアイドルで、大きな影響を受けています。彼はウェス・モンゴメリーやチャーリー・クリスチャンとは違う路線で、アドリブというよりメロディを大事にするギター・インストじゃないですか。まぁ、トリッキーなところもあるし・・・かなり影響は大きいんじゃないかな。去年、レス・ポールは亡くなりましたけど、ジェフ・ベックは今年のグラミー賞の授賞式でレス・ポールへのトリビュートの演奏をしてますからね。

太:では、全然話が飛ぶのですが、ジェフ・ベックってヴァン・ヘイレンを意識したことはないんでしょうかね?

細:あ~、どうですかね。

太:ロック・ギタリストって全員エディが出てきた時ってビビったと思うんですよ。

細:それは絶対そうだと思います。

太:僕は絶対エディにビビらなかったロック・ギタリストはいないと思ってるんです。・・・ヴァン・ヘイレンのデビューの時は『ゼア・アンド・バック』ぐらいの時かな。

細:ヴァン・ヘイレンのデビューって1978年ですよね。『ゼア・アンド・バック』が1980年なんで。影響受けてるとしたら『ゼア・アンド・バック』ですよね。でも、確かにあのアルバムは結構ロックっぽいギターを弾いてるんですよね。ヤン・ハマーも何曲かに参加しているし、全体的にはジャズ・ロックっぽいんですが、ギターだけ聴くと凄いロックなんですよ。ただそれがエディの影響かどうかはわからないですよね。でも今、ライブではタッピングもやってますけどね。

太:エディってロックという枠を超えて、ギターの可能性を追及したっていうのもあるし、音色に対する執着がすごいじゃないですか。

細:ただ歪んでるんじゃなくて、どれだけふくよかないい歪みを作るか! っていうね。

太:多分、エディもロック・ギタ-と言うよりはギターの可能性を追求してると思うんですよね。そう考えると、あの存在はジェフ・ベックにとってどうなのかなって思いますよ。

細:エディについてもジェフ・ベックは語ってないんですよ。

太:あんまりギタリストを語らない人なんですか?

細:ジミヘン、クラプトンとかについては語るというか、クラプトンのことは共演もあったんで語らざるを得ないんでしょうけど。

太:今までクラプトンの事とか言いたがらなかったですよね?

細:言いたがらなかったですね。去年インタビューしたとき、すっごく面白かったんですよ。クラプトンのことどう思ってるんですか? って訊いたら、「ヤツは邪魔者だ!」って言ったんですよ。でも「歌って弾ける。ああいう人がいてくれるからギターの人気は衰えないんだよね。」とは言いながらね。クラプトンと一緒にタクシーとか乗ると、「タクシーの運転手は、みんなクラプトンの事はわかるんだよ。でも俺の事はロン・ウッドだと思ってるんだ!」って。

太:(爆笑)そりゃ、まあ遠目で見るとちょっと似てるからね。

細:そんなことを言うようになったんですけど。ジミヘンとかクラプトンとか昔のレス・ポールの話はするけども・・・やっぱり、エディとかトミー・ボーリンの話はしてないですね。実は言ってないのは悔しいからかもしれないですね。やられたって思ったから言えなのかもしれないし。

太:負けず嫌いだ。

細:負けず嫌いは負けず嫌いじゃないですか? そんな気はしますね。だってどう考えても、あの人練習してるじゃないですか。練習しないとあんなことできないから。多分ね、悔しくて練習してるんじゃないかなって気がするんですよね(笑)。

太:そりゃそうだ。トレモロ・アームの使い方とかエディを見て「コイツ腹立つわ!」って思ったかもしれいですね。

細:それはあるかもしれないですね。確かにアームの使い方ってあの頃から飛躍的に伸びたんですよ!

太:そう! それは感じたよ。正直言って、エディが出てきてからアームの使い方が、ちょっと変わったかも。

細:そう。それまで、ウヨヨヨヨヨ~ンみたいなトリッキーな感じだったけど、エディが出て以降、歌わせるためのアーミングになったというか。1985年の『フラッシュ』ぐらいから本当にアーミングが繊細かつ大胆になってるんです。それはやっぱりエディからの影響もあったのかもしれないですね。

太:ジェフ・ベックのオリジナルなのか、誰かの影響なのか? と考えると、エディ以外に考えられないんですよね。

細:うん。考えられないですね。あの頃にギターを進化させた人が他に誰かっていうと多分いないんですよね。タッピングもそうですけど、アーミングってところで考えるとやっぱりエディの影響はあるような気がするなぁ~。

太:語らなくても、影響はあるんじゃないかな~と思うんですけどね。

細:時代を考えるとありますよね。本当に1985年の『フラッシュ』でアーミングはガラっと変わりましたからね。

太:5年の間に家で練習してたんですかね。負けず嫌いだ。(笑)

ジャズ・ロック路線での変化

太:いわゆるジャズ・ロックと言われた『ワイアード』あたりで、作品ごとにジャズ・ロックに対するアプローチの変化みたいなのはあったんですか? メンバー・チェンジも含めて。

細:メンバーは『ブロウ・バイ・ブロウ』も『ワイアード』も結構変わってますね。それこそ、『ワイアード』は今回来るナラダ・マイケル・ウォルデンがドラム叩いてるじゃないですか。

太:おぉ・・・! ナラダが来るんですね!今回の来日のドラム。あの人まだドラム叩けるんですか!?

細:そう思うでしょう? イギリスのO2アリーナで見た人によると結構叩けてたらしいですよ。「レッド・ブーツ」も演ったって。ちゃんと叩けたって言ってましたよ! 僕ね、真っ先に訊いたんですよ、この間、ジェフ佐藤さんたちと会った時に。O2アリーナ行ってたみたいで。真っ先に「レッド・ブーツ」 演ったんですか!? って・・・。

太:そりゃ、ナラダが叩くんだったら「レッド・ブーツ」はやってもらわないと。ゲストでイントロだけ演ってもらってもいいくらいですよ!(笑)

細:これまでヴィニーが叩いても、誰が叩いても「レッド・ブーツ」のイントロだけはナラダに敵わなかったじゃないですか。なんで今回はそれが嬉しいというか、楽しみなんですよね。

太:ナラダなんて、ホイットニー・ヒューストンのプロデューサーの優しい目をした人って思ってる人も結構いますからね。キワモノ・ドラマーだぞ!って言ってやりたい!優しくないぞ、このオッサンてっね。俺らにとっては違和感ありましたよね。

細:あった! ありましたよ。ホイットニーが売れた時は、凄い変な名前だけどたまたま同じ名前の別人だと思いましたもん。だってドラマーじゃん!!(笑)

太:ホイットニー4分の7拍子をやるのかよ!? ってね。ナラダもライブに向けて、結構練習したんじゃないですかね(笑)。

細:じゃないですかね(笑)。今回、ジェフ・ベックに電話インタビューした際に言ってたんですが、ジェフがナラダに電話したんですって。「ドラムやって」って。そしたらナラダが「俺は35年間この日を待っていた!」って言ったそうですよ。これ結構いい話じゃないですか?(笑)

太:いい話ですね(笑)。まるで、真弓が阪神の監督になって、バースに「打撃コーチをしてくれ!」って言う・・・みたいな感じですね(笑)

細:(大爆笑)そんな感じですね。もしくは星野が日本代表の監督になったときに「また一緒にやろう」と田淵と山本浩二が集まった・・・みたいなね(笑)。

太:いい話だね~。だったらヤン・ハマーも付き合えや! って(笑)。

細:でも、ジェイソン・リベイロはすごいヤン・ハマーが好きなんですよ。今回のO2アローナでの「レッド・ブーツ」のキーボード・ソロも全部ヤン・ハマーのフレーズを完コピでやったそうですよ。

太:それはリスペクトですよね。

細:そうだそうだ。話を戻すと、同じジャズ・ロック路線とはいえ、『ブロウ・バイ・ブロウ』と『ワイアード』では、『ブロウ・バイ・ブロウ』の方がファンキーですね。そこが違いの肝の要素ではないか、と。それまでに第2期ジェフ・ベック・グループはもちろん、BBAも案外ファンキーだったりするんで、そういう路線がまだまだ残ってた感じがするんですよね。で、『ワイアード』になって、ホントのジャズ・ロックになったっていう印象が僕はありますね。

太:『ワイアード』の方がマハビシュヌ・オーケストラに近いのかな?

細:近いと思いますね。それ以前から引きずってたジェフ・ベックのファンキー・ロック路線が影をひそめたのが『ワイアード』。それがジャズ・ロックに直結したと思いますね。

太:なるほどね~。ギターのインストの音楽ではあるけれども、ジャズ・ロックに別れを告げたアルバム・・・『ゼア・アンド・バック』ってまだジャズ・ロック的なアプローチがあったのかな?

細:まぁ、楽曲的にはジャズ・ロック的なアプローチがありつつもギターはロックっていう感じですよね。

太:そこから『ゼア・アンド・バック』以降、独自のギター・インストみたいな世界に行ったときって、ジェフ・ベックには何があったんですかね? ジャズ・ロックはもういいやってなったんですかね。

細: でも、1985年の『フラッシュ』ってヴォーカル曲も入ってるじゃないですか。

太:その頃ってフュージョンのアルバムでヴォーカルが積極的に入ってきてた時代でもありながらも、いわゆるフュージョン好きがジェフ・ベックを聴かなくなった、ジェフ・ベックがロックの世界に戻っていったと言うか・・・。

細:フュージョンからジェフ・ベックに入った太郎さん的には、1985年の『フラッシュ』あたりのアプローチはこれ違うなって言う感じになっちゃったんですか?

太:違うってなりましたね。年齢が40代のフュージョン好きは、基本的にジャズ・ロックのレアな匂いが一番格好いいって意識があるんですよね。一番レアなグルーヴで。フュージョンってギターがヒーローなんですけど、ギターだけで成り立っているわけではなく、メンバー全員のテクニックがぶつかり合うスタンスなんですよね。そういう意味ではほんとマハビシュヌとかウェザー・リポートとか。

細:いくらジャコが凄くてもジャコだけでは成り立たない訳で。総合的な・・・ね。

太:そうそう。グループ的な要素でなくて、ジェフ・ベック一人が前面に出てきだしたのは『フラッシュ』以降かな。

細:やっぱりソロ名義でやってる以上はそうなるのはあったのかもしれませんよね。特に『フラッシュ』なんかは今では「あれはレコード会社に作らされたアルバム」みたいなことを本人は言ってて、全然彼の中では自分のアルバムっていう意識はないらしいんですよ。

太:そんなこと言うなよ・・・と(笑)。

細:あれはちょっと特別なのかもしれないですけどね。とはいえ、ヤン・ハマーが書いた「エスケープ」なんかはめちゃめちゃジャズ・ロックな要素のあるかっこいい曲ですけど。後に『ギター・ショップ』でジャズ・ロック感が全くなくなった様な気はしました。ギター・インストなんですけどロック・ギター・インストですよね。ジャズって感じはあんまりないかな。

太:あのアルバム自体はジェフの本意に沿ったアルバムなんですか?

細:あれはそうだと思いますよ。あれは本当にやりたいことをやってると思いますね。あの時はロック回帰と言うか、ラウドなドラマーがいてラウドにギターを弾きたい! ってなっちゃった時代なんじゃないですかね。

太:なるほどね~。

細:逆にヤン・ハマーからの呪縛が解かれたのが、あのアルバムなんじゃないかなーって思いますね。だからその後、方向性を見失っちゃったんですよ。どうしていいのかわかんなくなっちゃって10年空いちゃったんですよ。その間って『クレイジー・レッグス』って、ロカビリーのジーン・ヴィンセントのバンドのギタリストだったクリフ・ギャラップへのトリビュート・アルバム出したりとか、「この人何やってんだろう?」みたいな「失われた10年」があるわけですよ。ロックに回帰はしたものの、その後の方向性が見えなくなっちゃったんですよ。それで『フー・エルス!』でテクノに行っちゃったのかなって思いますね。

太:結局、ジャズ・ロックってソリストが一人じゃダメなんですよ。マイルス・デイヴィスもずっと自分に対抗するソリストを探して、コルトレーンに匹敵する人とかジミヘンに対抗するギタリストをずっと探してましたから。

細:そうですね。エレクトリック・マイルスは、本当吹いてないですよね。他のヤツらにやらせてて、たまにプイーみたいな。

太:隙間を大事にすると言うか。マイルスは共演者に「考えるな! ただやれ!迷ったときは弾くな!あけろ!感じたときに吹け!」って言ってたそうです。

細:へぇ~。深いですね~。

太:それがもしかしたら、ソリストというより「空間を作る、支配する」人間の哲学なのかもわからないですね。

細:ジェフ・ベックは多分あんまり出来ない人ですよ(笑)。バンドをまとめることはあまり出来ない感じの人だと思いますね。もちろんプレイの中で空間をあけることは出来るのかもしれない・・・いや、それもあんまり上手くない人なのかもしれないけど。とにかくいいメンバーにいいソロをそれぞれさせて、その中でバッキングに回って自分が光るっていうのは多分苦手な人だと思うんですよね。そういう意味でも、ジャズ・ロックとかフュージョンの人にはなりきれなかったのかもしれないですね。

第2回へ続く