ホーム >> 口笛太郎のFUSION万歳! >> 特別企画 ジェフ・ベック対談(第3回)
口笛太郎のFUSION万歳! 特別企画 ジェフ・ベック対談(第3回)

みなさま、こんばんは。口笛太郎です。
毎度お馴染み「口笛太郎のFusion万歳」、今回は特別企画として初めてゲストをお招きしての対談形式。
テーマは、そろそろワーナー移籍第一弾のアルバム『エモーション・アンド・コモーション』をリリースするジェフ・ベック。ご存知の通り、伝説のロック・ギタリストですが、40代前後の音楽ファンには、名盤『ブロウ・バイ・ブロウ』『ワイアード』の大ヒットなどで、ジャズ・ロック(フュージョンと言われる前の呼び名)のギタリスト・・・・という印象も強いのです。
今日は、この「ジェフ・ベックのジャズ・ロック」ということに焦点を当てて、日本のジェフ・ベック研究家の第一人者とも言える音楽ライター、細川真平さんをゲストにお迎えして、赤坂見附の「わたみん家」での対談になりました。

●第3回
ジェフで1曲と言われれば・・・

バックナンバー

ジェフ・ベック対談(第3回) ジェフ・ベック対談(第2回) ジェフ・ベック対談(第1回) 011 010 009 008 007 006 005 004 003 002 001 FUSION MASTERPIECE 1500

太郎(以下「太」):ジェフ・ベックの共演歴で典型的なジャズ・ロックやフュージョン系の人ってどんな人ですか?

細川(以下「細」):ジョン・マクラフリンとは1990年代に「ジャンゴ」をやっているんです。

太:それはエレキで?

細:エレキでやってます。すっごくいいですよ。マクラフリンの『プロミス』ってアルバムの1曲目に入ってます。

太:ジェフ・ベックって他の人の客演ってしているんですか?

細:いっぱいしてます。それこそスタンリー・クラークともやってるじゃないですか。スタンリー・クラークの『ジャーニー・トゥ・ラブ』で「ジャーニー・トゥ・ラブ」と「ハロー・ジェフ」って曲をやってます(笑)。

太:そのまんまですね(笑)。ジェフ! あんた弾きなさいよ! って曲ですね(笑)。

細:そう、まさにジェフ・ベックのための曲です。

太:でもスタンリー・クラークがジェフ・ベックを好きな理由はなんとなくわかります。

細:ジェフ・ベックもあの時代スタンリー・クラークが大好きだったんですよ。『ゼア・アンド・バック』の為の録音でスタンリー・クラークと多分やってるはずなんですよ。ただ、お蔵入りしちゃったんです。1978年に一緒に日本に来てますしね。ジェフ佐藤さんに言わせると「あの時はあんまり良くなかったよ」だそうですけど(笑)。見てんだ、さすがだと思いました。

太:でもスタンリー・クラークもベーシストとしては革新的じゃないですか。

細:あと、ナラダ・マイケル・ウォルデンの1976年のソロア・ルバムにも客演してますよね。

太:それはキワモノ系アルバムなのか、ホイットニー系の優しいアルバムなのか?

細:歌ものもありますけど、ドカドカやってます。1976年ですから、まだホイットニーとかとは出会ってない頃ですから。

太:あっ、そっかそっか。

細:そのアルバムの曲なんか「めちゃくちゃ『ワイアード』じゃん」みたいな曲です。あといろいろやってるんですが、そんなにフュージョン系でこれはっていうのは少ないかもしれないですね。やっぱり、スティーヴィー・ワンダーの『トーキング・ブック』とかになっちゃいますね。客演でいいやつって言うと。

太:うーん、スティーヴィーとジェフっていうと「Superstition(邦題:迷信)」ですけど、やっぱりスティーヴィーも影響もあったんですかね?

細:多分大好きだったんじゃないですか?

太:あの時はスティーヴィーの天下の時代でしたからね。グラミー賞で最優秀アルバム賞を2年連続でとっちゃう勢いでしたからね。グラミー史上でも最優秀アルバムの2年連続はあとにも先にもスティーヴィーだけなんじゃないかな。

細:そうですよね。でも、もともとジェフ・ベックってモータウンが好きなんですよ。

太:へぇ~、そうなんですか。

細:第2期ジェフ・ベック・グループを結成する前に、コージー・パウエルを連れて2人でモータウンへ行ってセッションしてるんですよ。その時に面白い話があって、モータウンの有名なドラマーに、ジェフとコージーが「とにかくモータウンのサウンドの秘密を教えてくれ」ってお願いしたらしいんです。で、コージー・パウエルが、モータウンのスタジオにもともとあったドラム・セットをどかして、自分のデカいドラム・セットを入れたらしいんだけど、「この瞬間にモータウンのサウンドはなくなったよ」って言われたっていう(笑)。

太:26インチのバスドラで、ノー・ミュートでしょ、しかもウッドヘッドのキックか?そりゃ言われますがな!(笑)

細:(笑)。その瞬間に違うよ君らって言われたらしいですけどね。でも、そんなことするくらいジェフ・ベックはモータウンのサウンドを取り入れたいと思っていて、それで作ったのが『ラフ・アンド・レディ』なんですよ。ビートルズが黒人のR&Bとかロックンロールを真似しようと思って、真似しきれずに新しい格好いいものが出来たように、第2期ジェフ・ベック・グループも凄い格好いいと思っているモータウンを取り入れようと思って取り入れきれなくて格好良くなちゃったって感じじゃないですかね。だからスティーヴィー・ワンダーの事は本当に好きだったみたいですね。

太:「迷信」には、結構愛を感じますけどね。スティーヴィーの真似は出来ないから俺等なりの形で表現しようって。

細:先にスティーヴィーの「迷信」の方がヒットしちゃってジェフ・ベックはショックを受けたらしいですけどね。

太:BBAってグループ自体のジェフ・ベックの中の位置付けとしてはどういう位置付けなんですか?

細:いやぁ~、やりきれなかった感じはあるんじゃないですか?

太:うん、なんかね。ライブ・アルバムが大好きで、いいと思うんですけど。。

細:いいとは思いますけど、本人的には中途半端に終わったんじゃないですかね。

太:でも、あれも言うとスーパー・グループじゃないですか。

細:めちゃくちゃスーパー・グループですよ。もともと、第1期ジェフ・ベック・グループが終わったときにあの2人とバンドを組もうとしていたんですけど、ジェフが交通事故にあって3ヶ月くらい入院しちゃって、その間にティム・ボガートとカーマイン・アピスがカクタスを組んじゃったから、それでしょうがなく第2期ジェフ・ベック・グループを他のメンバーと組んだんですよ。

太:つまり待望の3人だったんですね。

細:でも、スーパー・グループって、ブラインド・フェイスなんかもそうですけど、凄い人ばっかり集まっちゃうと、エゴみたいなことになるんでしょうね。しかも、あの3人て自ら引かなさそうな人たちじゃないですか。

太:確かに・・・。

細:90年代終わりぐらいにCharが、CBAって、チャー・ボガート・アンド・アピスをやったんですが・・・武道館でやってライブ・アルバムも出てます。その時とかあの2人は練習してこなくて酷かったみたいですよ。「スモーキー」とかやるんですけどタイミングとかバラバラ。Charがステージ去るときに、カーマインに向かってこうやってましたね(中指立てる)。その後に、Charがレコーディングでイギリスに行ったときにドラムがジミー・コープリー(元ジェフ・ベックのバック・メンバー)で、彼のツテでジェフ・ベックとセッションをしたんですって。ジェフ・ベックの家で。その時にティムとカーマインとやったって話したら「それは大変だっただろう」って言われたって。まぁ大変な2人だったんだと思います。って言いながらあの頃のジェフ・ベックも多分わがままな大変な人だったから、そんなバンドが上手くいくわけないですよね。

太:あれ初めて聴いたのって、僕が中学生か高校生だったけど、とにかくトーキング・モジュレーターだけでもうコーフンものの衝撃でしたね。あれを使いすぎると頭が悪くなるとか言われてましたよね。だから今オレこんななってんのか(笑)とか。

細:そうそう、脳みそを揺らすって言われてたんですよ(笑)。

太:Charとジェフ・ベックはその後交流あるんですかね?

細:その時だけ・・・みたいですよ。あと2006年のUDOフェスで両方出てるんですよね。僕はCharさんの楽屋に行ったんですけど、途中でCharさんが奥さんと一緒に、「ジェフに挨拶しに行こう」ってピキッとした顔をして2人で去っていく姿を見ましたね。
で、ジェフ・ベックとジェフの家でセッションしたときに、ジェフ・ベックが新品のベースを用意してくれたらしく、Charさんはそのベースを弾いたらしいんですよ。でも、「この距離で見てるのに俺はジェフが何をやってるかわからなかった」って言ってましたね。

太:当然アンプで鳴らしてるわけですよね。

細:もちろん。ジム・コープリーがドラム叩いて。ほんとに近くで見ても何やってるかわからなかったそうですよ。

太:俺、さいたまスーパー・アリーナの大モニターで見てもわからなかったな。

細:Charさんが、ジェフ・ベックはトイレに行くときにもギターを持っていったのが凄いって言ってましたよ(笑)。

太:ジェフ・ベックほどの人間だったらトイレに専門のギター置いとけよ(笑)。何か、ジェフ・ベックって機材は全部テクニシャン任せなイメージがありますね。弦も張り替えないくらいで俺は弾くだけだ! みたいな。

細:そうだと思いますね。チューニングも多分しないでしょうし。ステージの途中でもチューニングしないですからね。

太:あんなことやってチューニング狂わないんですかね。

細:以前、山野楽器の人と話をしたら、その人はジェフ・ベックのライブが終わった後のギターを弾かせてもらったことがあって、やっぱりチューニングがバラバラなんですって。そのバラバラなところをちょっとしたチョ―キングとかアームで音程を補正してるって言ってましたね。

太:え~、そうなんだ!? でもジャストのチューニングじゃ心揺れないからね。

細:そうそう。でも山野楽器の人は、ほんとにバラバラでしたって言ってましたね。そんな噂はあるけど本当にそうだったんですよ。

太:なるほど~。細川さんにとってジェフ・ベックの最高のジャズ・ロックの名演の曲って何でしょうか? 「スキャッターブレイン」ですか?

細:難しいですね~。「スキャッターブレイン」テクニックの凄さはわかるんですが、曲としてそんないい曲かって言われると・・・。

太:ビビる曲だけど、涙を流す曲ではないですね(笑)。

細:そうそう。僕は「ソフィー」かな~。『ワイアード』の。ジャズ・ロック路線って言われる中だとあれが僕は大好きですね。途中静かになるところでベースがプンっていう音がすごく好きだったりとか(笑)。そういうのも含めて。だからジェフ・ベックだけがすごいんじゃないくて・・・。

太:ジャズ・ロックってバンドですからね。

細:そう! さっきおっしゃった様に、そのバンドとしての格好良さみたいなものが出てると思うんですよね。あの曲は好きだな~。もちろんソロ対決っていう意味では「ブルー・ウィンド」かもしれないし、さっきのナラダの凄いドラムが入ってる「レッド・ブーツ」もいいんですけど、総合的に見て曲の良さ、バンド・メンバーみんなが光ってるっていう意味でのジャズ・ロックの名演っていう意味では、「ソフィー」だと思いますね~。

太:アルバムで言えば『ワイアード』。ちなみに細川さんが一番最初にジェフ・ベックにハマったアルバムってなんですか?

細:やっぱり『ワイアード』かもしれないですね。最初にラジオで聴いたのが「ブルー・ウィンド」だったんですよ。

太:ラジオで「ブルー・ウィンド」が流れるなんて本当いい時代でしたよね。

細:でも今回のアルバムには、いろんなテレビ番組のバックで流れそうな曲がいっぱいありますね(笑)。

太:新作『エモーション・アンド・コモーション』から細川さんが一番好きな曲ってなんですか?

細:ボーナス・トラックの「クライ・ミー・ア・リヴァー」が好きなんですよ(笑)。なぜ本編に入らなかったんだろう。実はジェフ・ベックってこの曲はずいぶん前から演ってるんですよ。2004年くらいから。去年もイメルダ・メイのバンドと一緒にやったときもイメルダ・メイに歌わせて演ったり。あと、ブルースのマーティン・スコセッシ・プレゼンツのDVDってあったじゃないですか・・・ブルースの歴史を辿るやつ・・・その中でルルってイギリスの昔のシンガーに歌わせて「クライ・ミー・ア・リヴァー」演ってるんですよ。
さっきも言ったように、今回ってメロディをどれだけ歌心豊かに表現するかに挑んだアルバムだと思うんですけど、それで言うと「クライ・ミー・ア・リヴァー」は、ボーナス・トラックなんですけど一番歌ってるんじゃないかなって気がしますね。 是非、購入するなら国内盤を。今なら私のライナーもついてきます(笑)。

太:是非、国内盤で(笑)。今日は本当にどうもありがとうございました。