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スウェーデン・ジャズの真髄が詰まった夢のBOX SET 『Jazz in Sweden』リリース記念 スペシャル・インタビュー[前編]
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1940年代後半~60年代前半にかけて隆盛を誇った、スウェーデンの名門ジャズ・レーベル<メトロノーム>の軌跡を収めた、伝説の9枚組ボックス・セット『Jazz in Sweden』。1993年の初回盤リリースから16年の時を経て、大幅にヴァージョン・アップが施されたスペシャル仕様のボックスが発売決定! ワーナーミュージック・ライフでは、今回の再発を記念して、ジャズ・ファン垂涎ものの同ボックス・セットの魅力に迫るべく、スペシャル・インタビューを敢行! ご登場いただいたのは、初回盤の企画、ブックレットの編集・執筆はもちろん、今回のスペシャル・エディションにおいてもリライトを手掛けられた、ジャズ評論家の後藤誠氏。同ボックス・セットへのこだわり、思い入れ、誕生秘話からスウェーデン・ジャズの素晴らしさに至るまで、とことん語り尽くしてもらいました。

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インタビュアー:ワーナーミュージック・ジャパン 宮治淳一

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スウェーデン・ジャズの素晴らしき世界

メトロノーム創始者ボルイ・エクベリ(左)、同アンダース・バーマン(右)、WEAインターナショナル社長、ネスヒ・アーティガン(中央)、1979 年メトロノームがWEA 傘下に入る契約締結時の貴重なショット

宮治淳一: まず、なぜスウェーデンではジャズが盛んなのでしょうか。

後藤誠: ヨーロッパって、もともとジャズが盛んな地なんですよ。アメリカはジャズ発祥の地なんだけど、1940年代当時って人種差別の影響で真っ当な評価を得られなかったんですね。黒人が関わっている音楽という理由だけで白人社会からは敬遠されてきたわけです。そんな時代に、ヨーロッパでは、ジャズを芸術として受け止める素養があったんですね。中でもジャズ先進国と言われているのが、スウェーデンとフランス。北欧には、デンマークとかフィンランド、ノルウェーもあるんですけど、その中でもスウェーデンはずば抜けてレベルが高い。第2次世界大戦にスウェーデンは参加していないことや、教育水準が高いことが影響しているのでしょうか。また、ジャズとは別に、スウェーデンは北欧の日本と言われるくらい、日本人とキャラクターというか感性が似ている気がします。だから、ジャズを愛でる国という括りで考えると、そのあたりよく理解できますね。発祥の国、アメリカですら都市部でしかジャズは聴かれない――そのくらいジャズを聴く国、人は限られているんだけど、日本でジャズが特に受け入れられたというのと、スウェーデンでジャズが盛んになったていうのは国民性を含め、つながっている気がしますね。

宮治: そもそもスウェーデンには、ジャズを受け入れる土壌があったわけですね。では、スウェーデン・ジャズ・シーンの成り立ちを教えてくだ さい。

後藤: このボックスにも入っているんですけど、当時20代の若者だった才能あるアメリカ人ジャズ・アーティストが、スウェーデンに行って、ご当地のミュージシャンたちと共演して、録音しているものがたくさんあるわけですよ。彼らのアメリカでの活動といえば、ビッグバンドのいちメンバー止まりなんですね。おまけに、バンド・リーダーからは、ソロ名義の作品をレコーディングすることを禁止されてるわけです。また、白人のプロデューサーが黒人のミュージシャンから搾取する、みたいな構図がありましたから。つまり、音楽家としてのアウトプットがアメリカにはなかったんですよ。彼らは20代前半とかで、やる気満々なのにね。クインシー・ジョーンズなんか特にそう。だから、彼らはリーダーの目を盗んで、フランスとかスウェーデンとかに行って、ライヴでどんちゃん騒ぎしたあとにスタジオで録音したんですね。そういった背景ゆえに独特のドラマが生まれるわけです。スウェーデンには、純粋にジャズが好きで、ジャズを志しているミュージシャンがいて、アメリカから渡ってきた若いジャズマンはスウェーデンのレベルに驚き、そこで共鳴し合うことによって、アメリカのジャズとは違う新しいジャズが生まれてきたんですよ。

宮治: ジャズを愛するもの同士だからこそ、生まれたシーンなんですね。

後藤: だからジェームス・ムーディと、<メトロノーム>のオーナーのボルイ・エクベリがいまだに付き合いがあるっていうのは、非常に納得いくんです。その2人って10代後半~20代前半の頃に知り合った仲間なんですよ。利害とか、打算とかはそこには介在しないわけですね。ある熱心なジャズ・ファンと、ひとりの才能豊かなジャズ・ミュージシャンが出会って、そこから生まれたリレーションがいまだにつながっているというね。これが、例えばビジネスライクな関係だったら、レーベルや契約が変わったりすれば、そこで終わるじゃないですか。さらに、ボルイさんは83年に引退しているんですよ。引退していても、いまだに近くに住んでいて、週に1回、日曜日の夜にはディナーを一緒に楽しんでいるんだそうです。面白いですよね。そういう人がいまだに生きていて、彼らが残してくれたものとコミットできるっていうのは、僕も幸せだなと思うんですよ。


『Jazz in Sweden』誕生秘話

宮治: さて、今回のこの『Jazz in Sweden』というボックスは、1993年に日本独自で9枚組ボックス・セットとしてリリースされたわけですが、そもそも1枚ずつバラバラに売ってた同シリーズを、9枚組のボックスにすべきだと提案したのは後藤さんですか。

後藤: そうです。言い出しっぺは僕ですね。先に1枚ずつ輸入盤が出回っていて、ミッドプライスとかで、お手ごろ価格で売られてたんですね。そうそう、ビックリ・マークのシールが付いてる感じで、輸入盤屋さんの普通のジャズコーナーの棚に漫然と置いてあったんですよ。でも、こんな扱いだったら誰も買わないでしょ? これじゃあ、スウェーデンのジャズ・シーンについて何もわかんないよなぁと思って。これまでスウェーデン・ジャズについて体系立って制作されたアルバムとか書籍とか、日本はもちろん世界的に見ても、まったくないかもしれないなと思いまして、“ないなら作ってみますか”というのがそもそもの出発点。

宮治: 実は私自身も、この存在を知ったのが、たかだか1年くらい前なんです。こういうものがワーナーからリリースされていることすら知らなかった。自分はジャズの専門家ではないので、知らなかったっていうこともあるんですが、たまたま持っている方からお借りしまして、まず中身を拝見して、愕然としたんですよね。これはすごいぞと(笑)。これだけのものがたった1回リリースされただけで、世のジャズ・ファンたちに触れられず、このまま倉庫に眠っていていいんだろうかっていうね。これが今回のリイシューの原動力なんです。

後藤: 本当にありがたいお話です。

宮治: とにかく音自体を聴く以前に、僕はこのブックレットを見て、すごいぞ!ってピンと来たんですよ。本来、音楽だから音を聴かないなんてありえないんですけど、パッケージの持っている力っていうか、その愛情あふれる仕事ぶりに、まず感銘を受けましたね。そもそも素晴らしいレコード・ジャケットって、聴く以前に心躍らせる要素が、アート・ワークを含めてあったわけですよね。それと同じものがこの中に見えたんですよ。あと、澤野工房(http://www.jazz-sawano.com/index.html / 入手困難な幻の名盤の復刻を手掛けるジャズ・レーベル)の澤野さんの貴重なコレクションが、ブックレット内にたくさん掲載されていますが、これもすごいなと。何とかしなきゃいけないってことで、今回のリパックに至ったわけです。


後編に続く

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