
アレサ・フランクリン、ダニー・ハサウェイ、オーティス・レディング、ロバータ・フラック…といったソウル・レジェンドたちの名盤をナイス・プライスで提供する「Forever YOUNG ATLANTIC SOULシリーズ」のリリースを記念して、ソウル・スペシャル対談第2弾をお届け! 『ブラックミュージックこの1枚』の著者であり、業界きってのソウル・ファンとして知られるライター/コピーライターの印南敦史氏と、韓国をはじめアジアの香りが色濃く漂うディープ・タウン、大久保にある名ソウル・バー「STONE」の神山廣司氏に登場いただき、ソウルの魅力、面白さ、とっておきの楽しみ方…など、とことん語りつくしてもらいました。
印南敦史:僕が神山さんと知り合ったのっていつごろでしたっけ?
神山廣司:かなり前ですよね。
印南:そうですよね。しょっちゅう来るわけじゃないんだけど、ときどき無性に来たくなるんだよなあ。開店してからどれくらいでしたっけ?
神山:今年で17年目です。
印南:17年って、けっこうな年月ですよねえ。
神山:ここの前にもずっと別のお店をやってたんですけど、そっちは大きい店で大変だったんですよ。だから、ちっちゃいバーをしたくて。
印南:なるほど。
神山:でもこういう場所ですから、普通じゃないお店にしないと人は来ないだろうと思ったんです。それで、ソウルはもともと聴いてたし「レコードをかけるお店にしようか」って。
印南:たしかに大久保って、ソウル・バーがあるべき場所じゃないですよね(笑)。この怪しい雰囲気が僕は好きなんだけど。
神山:実際、韓国のソウル(Seoul)と間違えられることがありますよ(笑)。
印南:“E”が多いぞって話ですよね(笑)。アジアの人も来るんですか?
神山:アジアの人たちはあんまり来ないですね。基本的にソウルを聴かないのかもしれないですけども。
印南:お客さんの年齢層は?
神山:30代半ばぐらいから40代半ばぐらいの人がいちばん多いと思います。比率としては、やっぱり男性の方が多いですね。6、7割は男性だと思います。
印南:オジサンが若い女の子と来てる光景もよく見ますよね。
神山:そういう方も多いですね。
印南:女の子を口説くにはいいかもしれないですよね。大久保だから、いざとなったときにも便利だし。
神山:はははは。
印南:それはそうと、神山さんの音楽のベースはファンクでしょ?
神山:そうですね。ジェームス・ブラウンよりもJB’sとか、あと初期のころのキャメオとかはけっこう好きですね。
印南:リアルタイムという意味では、僕も初期のキャメオあたりからの影響って大きいなあ。

神山:最初のころはよかったですねえ。
印南:神山さんとは育った環境も違うけど、同い年だからかぶる部分がありますね。リアルタイムっていう意味でいうと、やっぱり僕はザップにヤラれたクチなんですよね。あとブーツィー・コリンズは、ソロになってからも好きだったし。
神山:ああ、ザップ。昨日もお客さんからリクエストがあって映像をかけてました。僕も大好きで、日本に来たときはけっこう観に行ってましたよ。
印南:「STONE」オススメの曲としては、どのあたりですか?
神山:僕が好きなスライとか、あとJB絡みでスウィート・チャールズあたりですかね。でも、変にマニアックにするとどうなのかなっていう思いもあるんですよ。僕の自己満足になっちゃうのも問題ですから。
印南:アトランティック系とかは?
神山:もちろん。オーティスもアレサもけっこうかけますね。あと、もちろんモータウンも。テンプテーションズとかをリクエストして、踊り出すステップ世代の人もいますよ。
印南:踊りまくられちゃ困るよね。だからこそ、これくらいのスペースがちょうどいいのかも(笑)。

印南:神山さんって、生粋の新宿っ子なんですよね?
神山:そうです。
印南:そりゃ音楽にもハマりますわな。
神山:でも中学校2年生ぐらいで初めて聴いた洋楽はカーペンターズとかビートルズだったんですよ。
印南:ああ、僕も中1のときにカーペンターズの日本公演に行きました。あの時代に洋楽の入り口にいた子どもにとって、カーペンターズははずせなかったですよね。
神山:そうですね。で、そこからなぜか僕はチャック・ベリーみたいなロックンロールを聴くようになったんです。とはいってもソウルにつながったわけじゃないんですよ。ソウルは、15、6歳で夜に遊びに行くようになったことがきっかけかな? たまたま先輩がDJをやってたので「ゲット」に行くことが多かったんですよ。
印南:えっ、「ゲット」ってその時代にもまだあったの?
神山:後期で、ニック岡井さんがやられてたころとはずいぶん変わってましたけどね。それでもあんまりミーハーな曲はかからなかったディスコだったと思います。
印南:そっかー。
神山:他にも、歌舞伎町にいっぱいあったディスコには行ってましたね。コマの脇のビルにあったディスコって、最後は「ゼノン」でしたっけ?
印南:そうそう、サーファーディスコの。
神山:僕が行ってたころ、あそこは「ビッグ・トゥゲザー」だったんですよ。そこから「ハロー・ホリデー」になって。
印南:松本みつぐさんがDJやってた「ニューヨーク・ニューヨーク」とかね。
神山:あの辺にも行ってましたね。

印南:僕は「ツバキハウス」派だったんですけど、「ニューヨーク・ニューヨーク」もたまに連れてかれたなあ。「GBラビッツ」はもっと後でしたっけ?
神山:「GBラビッツ」は、僕が19、20歳ぐらいのときにはもうありましたね。17歳ぐらいから夜の仕事をはじめてたんですけど、働いてた店に「GBラビッツ」の店長が飲みに来てたりしてたから、その関係で入れてもらったりしてました。
印南:早いなあ。
神山:中途半端に早いんですよ(笑)。
印南:ソウルにハマッたのもそのころですか?
神山:ソウルのレコードを買いはじめたのは、16歳ぐらいだと思います。でも飽きっぽいので、途中でオートバイ買うために全部売っちゃったりとか、何回かしてましたけども。
印南:必ずやりますよね、若いときはお金がないから。
神山:それでまた買いなおしたりとか。
印南:僕もそれで、どれだけ名盤を失ったことか。ところで、アナログに対するこだわりってまだありますか?
神山:やっぱりありますね。「CISCO」も廃業してしまったことが、けっこうショックでした。いまじゃクラブDJもパソコンでやってますから、いよいよDJもアナログを買わない時代になってしまったのかなっていう。
印南:僕もねえ、最近はアナログよりもRANEの“Scratch Live”みたいな機材の方に興味が向いちゃってるかなあ。
神山:どんどんそうなっちゃってますからね。でも、そうなるとアナログをかける店がどんどん特異になってくるわけですから、うちみたいな店にとっては逆にいいんじゃないですか?(笑) ノイズがなければ音がいいっていうことだけではないと思いますし。
印南:それはそうですね。
神山:最近アンプを70年代の古いものに変えたんです。ずいぶん音が違いますね。そんなことをすごく気にしてるのは、僕ぐらいなのかなとも思いますけど(笑)。

印南:ところで「STONE」の特徴のひとつとして、ライヴがありますよね。
神山:はい。生演奏の音はとっても好きなので。
印南:しかもソウル・バーのライヴっていうとコテコテの歌モノとかを想像しがちだけど……。
神山:全然そんなことないんです(笑)。先月は琵琶と尺八とキーボードとパーカッションでしたし、次回もブラジル寄りの音楽をギター一本で。
印南:口笛のライヴもありましたしね。
神山:歌を歌いたいってメールもけっこうもらうんですよ。でもそういう人って、「音源を持ち込む」っていうケースが圧倒的に多くて。バンドをバックに歌えるんであればまた違うんですけども、CDをバックに歌うっていうとカラオケになっちゃうので、そういう方はお断りしてます。
印南:ライヴですもんね。
神山:ただ歌モノを拒否してるわけでは当然なくて、たとえば去年の2月には、ORITOさんのライヴをやる予定だったんですよ。ギターとキーボードとヴォーカルとコーラスでやるはずだったんですけども、でも直前に大阪で亡くなってしまったので結局は実現せずに……。
印南:ああ、もう1年か。惜しいシンガーを亡くしましたよね。
神山:そうなんです。だからそのときは、ギターとキーボードとコーラスで追悼ライヴをやったんです。
印南:なるほど。
神山:第一回目のソウルのライヴが追悼になってしまった。みんな泣いてるような状態だったんですけど。
印南:だけど、それも神山さんの柔軟な考え方があったから実現したものですよね。一般論ですけど、ソウル・バーの人ってガチガチの人も少なくないじゃないですか。
神山:僕はミーハーなので、いいものがあれば受け入れたいんですよ。
印南:その広さがいいんですよ。
神山:どうなんですかね。うちの店のトイレに「FUNK SOUL」って描いてあるイラストがあるんですけど、「SOUL」の下に「そうなのか?」って誰かがいたずら書きしてるんですよ(笑)。そう言われると、「なるほど、そうかもしれない」って思いますけど(笑)。
印南:でもガチガチだと一見さんは入りにくいし、逆にいいんじゃないかなあ。
神山:一般的なソウル・バーだとレコードが飾ってあったり、マーヴィン・ゲイのジャケットでおなじみのアーニー・バーンズのイラストが飾ってあったりするじゃないですか。僕はそういうのがいまいち……。だからソウル・バーだと知らないで来られた女の人が奥で普通に飲んでて、たまたまトイレに立ったとき、「あ、レコードかけてるの、この店? 全然気がつかなかった」みたいな。そういうこともけっこうあるんです。それでいいかなと思ってるんですけど。
印南:僕も、オーナーのファッションやライフスタイルすべてが中途半端に黒人っぽくなってるようなスタンスって引いちゃうかな。あくまで、僕自身が日本人のソウル・ファンでいたいから。
神山:そうですね。
印南:あと「STONE」で僕が好きなのは、この広いカウンターなんですよ。
神山:カウンターは80センチも幅をとってるんです。狭いと、お客さんが近すぎるので。常連さんはいいですけど、そうじゃない人はあんまり店の人が近くにいると落ち着かないんじゃないかと思うんですよね。
印南:たしかにそうですね。
神山:それにこっち側は客観的にお客さんを見られるので、おもしろいんですよね。リクエストがなければ、「この人はこういう曲が好みかな?」って選曲できるんですよ。それで、反応があると「よしよし」とか思ったり(笑)。お客さんの顔を見ながらレコードをかけるのは楽しいです。
印南:それ、わかる! 僕も昔、御徒町のソウル・バーでDJしてたことがあったんですけど、カップルが来ると「今日はあいつらをシケこませてやる!」って甘~い選曲してたから(笑)。
神山:でも、お客さんの反応を見ながらかけてるのに、ネットで「STONEはモータウンばっかりかかってて選曲がヌルいよ」とか書かれちゃったりね。「ああ、そうか」とか思って。
印南:そんなことがあったんですか?
神山:僕の趣味ばっかりでかけてるわけじゃないんで、「わかってもらえないなあ」とは思いますけど。その日はたぶん、モータウンを聴きたかった人がモータウンばっかりリクエストをしてくださったときだったんでしょうけども。
印南:ネットに書き込んだ人は、たまたまそこに居合わせただけでしょうね。一回来ただけで決めつけんなって感じですよね。「週3回通ってから言え!」と(笑)。
神山:仕方がないですけどね。
Soul Bar「STONE」
〒169-0073 東京都新宿区百人町1-22-26 白浜ビル1F
TEL : 03-3366-3005
営業時間 : 19:00 ~ 4:00(日・祝 休)
MAIL : soul@t3.rim.or.jp
URL : http://www.t3.rim.or.jp/~soul/
■ 70年代の王道が好きな方へ
1. 「Knocks Me Off My Feet」 / Stevie Wonder
2. 「He's Misstra Know It All」 / Stevie Wonder
3. 「Bird Of Beauty」 / Stevie Wonder
4. 「Love, Love, Love」 / Donny Hathaway
5. 「Little Ghetto Boy」 / Donny Hathaway
6. 「I Thank You」 / Donny Hathaway
7. 「The Making Of You」 / Curtis Mayfield
8. 「So In Love」 / Curtis Mayfield
9. 「You're So Good To Me」 / Curtis Mayfield
10. 「Tired Of Being Alone」 / Al Green
11. 「How Can You Mend A Broken Heart」 / Al Green
12. 「You Ought To Be With Me」 / Al Green
13. 「Your Precious Love」 / Marvin Gaye
14. 「After The Dance」 / Marvin Gaye
15. 「Trouble Man」 / Marvin Gaye
16. 「Come Get To This」 / Marvin Gaye
■ 80年代のDance Classicsが好きな方へ
1. 「You are」/ Niteflyte
2. 「Love Collect」 / The Bendeth Band
3. 「Keep On Movin'」 / Deodato
4. 「Get Down [12" Version]」 / Gene Chandler
5. 「Dance To The Funk」 / Natural High
6. 「Keepin' Love New」 / Howard Johnson
7. 「Give It Up」 / Magic Lady
8. 「Please Don't Fall In Love」 / Average White Band
9. 「Young, Free & Single」 / Sunfire
10. 「Mind Blowing Decisions」 / Heatwave
11. 「Love, Need & Want You」 / Patti Labelle
12. 「Changin'」 / Sharon Ridley
13. 「Last Night Changed It All」 / Esther Williams
14. 「You Know How To Love Me」 / Phyllis Hyman
15. 「Our Trade Is Life」 / Firefly
■ 最近のR&Bが好きな方へ
1. 「Hot Stuff」 / Craig David
2. 「Shut Up And Drive」 / Rihanna
3. 「Waiting For Your Love」 / Alicia Keys
4. 「Work That」 / Mary J. Blige
5. 「Honey」 / Erykah Badu
6. 「Be OK」 / Chrisette Michele
7. 「No One」 / Alicia Keys
8. 「Before You Walk Out My Life」 / Saranayde
9. 「Wait Until Tonight」 / Range
10. 「What I Need」 / Deep Side
11. 「Officially Yours」 / Craig David
12. 「Sexy Love」 / Ne-Yo
13. 「Can We Chill」 / Ne-Yo
14. 「Just Fine」 / Mary J. Blige
15. 「Portrait Of Love」 / Cheri Dennis
16. 「Valerie」 / Mark Ronson feat. Amy Winehouse