『ゴリラ』(1975年)

JTを最初に聴いたのはいつか?よくよく考えてみたら中学3年生です。この頃ワーナーさんが、今も続いてる<ForeverYOUNG>シリーズで、2000円以下の廉価で名盤CDをいち早く出してくれた最初の時期だったと記憶している。当時、家の物置でレコードを漁って聞き狂っていたレッド・ツェッペリンが3200円から1800円に値下げになったもんで、狂喜乱舞で真っ先に買い揃えて、その後シリーズの中から月に1~2枚「名盤購入枠」というのを決めて買ってた中の1枚がJTの『マッド・スライド・スリム』でした(確かヴァニラ・ファッジと一緒に買うみたいな相当節操の無い買い方をした記憶がありますが…)。まあこれが皆さん言うように、聴いた最初の印象は「地味」なんです…ただ「きみの友だち」とかは、ど素人の耳で聴いても今でいうところの"神曲"で、すんなりと受け入れることが出来たし、当時から70年代の空気感が好きだったんで、その後アメリカン・ロックとかシンガー・ソングライター以前のフォークみたいな所まで、高校になるとアメリカン・ロックやそのルーツにどっぷり、と言った具合で。思えばスプリングスティーンと並んでJTはルーツ・ミュージック好きになる原点のような存在です。
特に80年代半ば位から洋楽をたしなみ始めた世代というのは、旧譜のリイシューと新譜が一緒くたにやって来て、さらにボックス・セットといったやや値が張る企画モノと、新旧あらゆる作品がいっぺんにCD化され、かなり変則的な聴き方をしながら育って来た訳で――JTに関しても最初はワーナー時代の『スウィート・ベイビー・ジェイムス』『マッド・スライド・スリム』『ワン・マン・ドッグ』あたりを漁りつつ、『ネヴァー・ダイ・ヤング』(88年)あたりからオンタイムに入って、90年代にフライング・マシン時代の発掘ものやらが出て来て、その後は不足分を加えつつ一応リリースしたものは全て追うことが出来ております。
まあそんな中から、敢えてお気に入りの1枚を選ぶとしたら『ゴリラ』(1975年)。ワーナー時代後期の作品、レニー・ワロンカー/ラス・タイトルマンの2人によるプロデュースでバーバンク録音。バックにダニー・コーチマー、ラス・カンケル、ウィリー・ウィークス、ジム・ケルトナー、アル・パーキンス、アンディー・ニューマーク、リランド・スクラー等々。爽快なアコースティック・ギターの音色からはAOR的な軽さも漂わせ、それでいてJTの朴訥とした個性を殺さず、西海岸の緩さが良い意味で中和したイメージのアルバム。聴いてても軽いノリで作っちゃった雰囲気がひしひし伝わります。
ゲストも凄い。「Mexico」と「Lighthouse」で、デヴィッド・クロスビーとグレアム・ナッシュの素敵なハーモニーが聴け、「Angry Blues」ではリトル・フィートのローエル・ジョージとヴァレリー・カーターが参加。心地よさ極まるAORナンバー「You Make It Easy」でデヴィッド・サンボーンが、これぞという流麗なソロを聴かせてくれたりetc…繰り返し何度聴いても飽きない至福の39分と言った感じです。
最後に余談になりますが、一昨年LAに行った時にラジオから延々とジミヘンが流れて来て、なんとも言われぬ感動が押し寄せて来た体験がありまして、それは以前、大雨の中大好きなPHISHのライヴ・コンサートへ向かう渋滞の中で聴いたディランの「激しい雨が降る」やら、ボストンからニューヨークへ一人向かう道中で聴いたJTの「ファイアー・アンド・レイン」等々、当たり前に聴いて来た音源を現地で聴くことで"ガチで萌える"という新ジャンルの音楽との接し方に気付いた訳です。やはり現地の水と食べ物を食べ、その上で音聴くとこれが全然違う、ステレオを高級なモノに替えるとかとはまた違い、魂に刺さってくる系の愉しみ、これが新たな音楽との向き合い方かと――そんな事から「ノースハリウッドで『ゴリラ』を聴く」これは数年中に実現したいなーと、本作を久し振りに引っ張りだして思った次第です。