ちゃんみな
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「PAIN IS BEAUTY」オフィシャル・インタビュー公開!
2018.11.16
ちゃんみな『PAIN IS BEAUTY』痛みがわたしを綺麗にした
11月30日にニューシングル『PAIN IS BEAUTY』をリリースするちゃんみな。二十歳の誕生日でもある10月14日に行われたワンマンライブで本作を初披露すると、多くのファンが心を打たれ、涙を流した。リリース前から話題の楽曲は、自身のつらく悲しい経験がモチーフとなり、二十歳になる直前に書き上げられたのだという。では、具体的にどんな過去があったのか? そしてそれらをどう乗り越えたのか? 彼女は「痛みがわたしを綺麗にした」「傷ついた人は優しい」と語る。「未成年」というキーワードとともにシーンに登場したちゃんみなの、二十歳だからこそ伝えられる強い言葉たちに耳を傾けよう。
『PAIN IS BEAUTY』は「自分が生きてきた証拠」
――『PAIN IS BEAUTY』は、これまでのちゃんみなの作品のなかで、もっとも歌唱力がフィーチャーされた作品だと思います。
ちゃんみな:ずっとこういう作品をつくりたかったんです。ハタチというタイミングで、自分が生きてきた証拠を残したくて。だから、原点である歌とラップにすごくシンプルに焦点を当てました。
――この曲は自身の痛みにまつわる経験がもとになっていますよね。ちゃんみなにとって最初の痛みの記憶って、どんなものですか?
ちゃんみな:小学2年生の頃のいじめだと思います。初めて人に蹴られたり、暴力をふるわれたりしたのはその頃。韓国で生まれて、小学生になってから日本に来たから、当時は日本語があまりわからなかった。だからいじめられている理由もわからなかったんです。ランドセルを盗られて逃げられる、追いかけたら転ばされて笑われる、そしてそのランドセルを池に落とされる……。
――親には相談しなかった?
ちゃんみな:言わなかったです。家では泣かないようにしていたんです。ランドセルは乾かしてから家に帰っていました。わたし、親と年がすごく離れていることを昔からずっと気にしていて。他のお父さんお母さんたちよりも早く死んじゃうって。だから心配させたくなかった。両親のことが本当に好きなんです。
――いじめはいつ頃まで続いたんですか?
ちゃんみな:小学4年生くらいまでです。でもいちばん悲しかったのは、リーダー格の人に気に入られようとして全然関係ない人を自分から傷つけてしまった時。今思い出しても、すごく苦しい……。
――自分が傷つけられたことより、誰かを傷つけたことの方がより深く心を傷つけたんですね。
ちゃんみな:今でもそうなんですけど、優しくされないことより、優しくできないことの方がつらいんです。
――誰かを傷つけてしまった時に苦しくなるのは、他人の気持ちに対する想像力があるからだと思います。それは今のちゃんみなのスタイルにもつながっていますね。
「死のうと思った」
ちゃんみな:でもいちばん大きかったのは、『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』。
――まだ高校3年生になったばかりの頃でしたよね。
ちゃんみな:不特定多数の人たちにいろいろ言われるようになったのはあれからです。「こんな地獄みたいな世界なんだ」と思った。一気に体重が10キロ以上落ちたし。あの時は、もう「消えたい……」っていう感じ。「消えたら誰が悲しんでくれるかな」とか考えた。
――有名になってからの方がつらかったと。
ちゃんみな:そうかもしれない。その時は、心が荒れました。初めて「死にたい」と思って自暴自棄になりました。
「これまでの痛みがわたしを綺麗にした」
――ネガティブな気持ちからはどうやって解放されたんですか?
ちゃんみな:『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』のあとある夢を見たんです。倉庫でリンチされる夢でした。主犯格は、14歳の時に仲が良かったその子。わたしは抵抗して山道を逃げる。その山道は、いじめられていた小学2年生の時によく見た夢に出てきた山。逃げ続けると、次第に自分の身体が軽くなって、宙に浮いて、あるポイントで突然落ちる。わたしは地面に叩きつけられる……。怖い夢でした。気になって夢占いをしたら、「過去の過ちを繰り返すな」という警告だった。それで考えたんです、何が自分の過ちだったのか。それは、「自分を大切にしないこと」でした。
――「死にたい」と思って自暴自棄になったということですね。
ちゃんみな:そうです。それから自分を大切にしよう、愛そうと思って。意識して笑うようにもしました。その頃から人生がすごくうまくいくようになった。いまはもう、死にたいとは思わない。
――でも、いまでも痛みのなかにはいるんですよね。
ちゃんみな:もちろん。生きていたら悲しいことなんてたくさんありますよね。
――自分の痛みや悲しみをオープンにするのは勇気が必要じゃないですか?
ちゃんみな:そうですか? わたしは隠そうと思ったことはないです。だってぜんぶ自分の経験だから。だけどそう言えるのは、自分のなかで整理がついたからかもしれないですね。いじめられている時は、いじめられているって言えなかったし。
――濡れたランドセルを乾かしてから家に帰っていた女の子が、自分の痛みからうまれた曲を多くの人に届けようとしている。それはありていな言い方をすれば、成長ですよね。しかも『PAIN IS BEAUTY』では、そういった痛みを「美しさ」だと言っている。
ちゃんみな:痛みは美しいですよ。わたしは『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』に出てから絶対に綺麗になった。綺麗になる努力をしたからじゃなくて、これまでの痛みがわたしを綺麗にしたんだと思う。
「傷ついた人は優しい」
――「愛されてたんだ」という歌詞もありますけど、そう思えたきっかけは何だったと思いますか。
ちゃんみな:やっぱりダンサーたちの存在が大きいです。愛されていることって気づきにくいじゃないですか。でもステージに立った時、ダンサーのみんなからの愛をストレートに感じて、「わたしはひとりじゃない、みんなで戦っているんだ」って実感できたんです。
――ということは、ライブの時に気づいたんですね。
ちゃんみな:初めてのワンマンライブで「愛されてるかも?」と思って、2回目のワンマンで「愛されてる!」という確信に変わりました。そしたら、自分がこれまでいろんな人に愛されていたことにも気がついた。特に両親からの愛はあらためて感じます。本当に素晴らしい両親に育てられた。
――ちょっと意地悪な質問ですけど、ちゃんみなは自分の痛みを作品に昇華できるから美しいと言えるんじゃないですか? 作品にできない普通の人々の痛みは、何にもならないのではないか。
ちゃんみな:いや、そんなことはないんじゃないかな。だってその人が優しいから。傷ついた人って絶対に優しいと思う。その時点でもう美しいんですよ。
――なるほど。
ちゃんみな:美しさって、内面から出るものだと思う。それはちゃんと人に伝わる。一緒にいれば「優しい人だな」ってわかるし、その逆もしかりですよね。もちろん、痛みを経験してない人がだめだってことではないですよ。というか、痛みを経験してない人なんていないから。
「一生尖っていたい」
――『PAIN IS BEAUTY』は自分の痛みについて歌っているけど、人の痛みを引き受ける曲でもあると個人的には解釈しました。そういうハタチの覚悟が現れているのではないかと。
ちゃんみな:これは昔の自分に対して書いた曲だけど、曲を聴いて「自分も似てるな」って思ってくれたらすごく嬉しい。でも基本的には、聴いた人に自由に解釈してもらいたいと思っています。
――「戦ってみせてよ」という歌詞も印象的です。バースデーライブのMCでも「みんなの“戦っている”という意志をわたしに誕生日プレゼントしてください」って言ってましたよね。
ちゃんみな:そこはいちばん気に入っているフレーズで、ファンの子たちに向けて書いた箇所でもあります。自分が悩んだり疲れたりしている時にいちばん言われたい言葉だなと思って。「がんばれ!」でも「もういいんだよ」でもなく、「戦ってみせてよ 疲れたらここにおいで」。
――つくづく思うのは、ちゃんみなの発言には芯が通っていて一貫しているということです。以前から自分の原動力は痛みだと言っていた。でも痛みそのものが美しいと言い切れるようになったのは大きな成長ですよね。ハタチになり、未成年ではなくなったわけですが、今後はどのようなヴィジョンを描いていますか。
ちゃんみな:「新人」の枠を抜けたいと思っているし、守りに入らず挑戦していきたいと思っています。どこのジャンルにも属したくないし、ちゃんみなというジャンルを確立させたい。とにかく一生尖っていたいですね。わたしが本当のロック、って感じで。
11月30日にニューシングル『PAIN IS BEAUTY』をリリースするちゃんみな。二十歳の誕生日でもある10月14日に行われたワンマンライブで本作を初披露すると、多くのファンが心を打たれ、涙を流した。リリース前から話題の楽曲は、自身のつらく悲しい経験がモチーフとなり、二十歳になる直前に書き上げられたのだという。では、具体的にどんな過去があったのか? そしてそれらをどう乗り越えたのか? 彼女は「痛みがわたしを綺麗にした」「傷ついた人は優しい」と語る。「未成年」というキーワードとともにシーンに登場したちゃんみなの、二十歳だからこそ伝えられる強い言葉たちに耳を傾けよう。
取材・文 山田宗太朗
『PAIN IS BEAUTY』は「自分が生きてきた証拠」
――『PAIN IS BEAUTY』は、これまでのちゃんみなの作品のなかで、もっとも歌唱力がフィーチャーされた作品だと思います。
ちゃんみな:ずっとこういう作品をつくりたかったんです。ハタチというタイミングで、自分が生きてきた証拠を残したくて。だから、原点である歌とラップにすごくシンプルに焦点を当てました。
――この曲は自身の痛みにまつわる経験がもとになっていますよね。ちゃんみなにとって最初の痛みの記憶って、どんなものですか?
ちゃんみな:小学2年生の頃のいじめだと思います。初めて人に蹴られたり、暴力をふるわれたりしたのはその頃。韓国で生まれて、小学生になってから日本に来たから、当時は日本語があまりわからなかった。だからいじめられている理由もわからなかったんです。ランドセルを盗られて逃げられる、追いかけたら転ばされて笑われる、そしてそのランドセルを池に落とされる……。
――親には相談しなかった?
ちゃんみな:言わなかったです。家では泣かないようにしていたんです。ランドセルは乾かしてから家に帰っていました。わたし、親と年がすごく離れていることを昔からずっと気にしていて。他のお父さんお母さんたちよりも早く死んじゃうって。だから心配させたくなかった。両親のことが本当に好きなんです。
――いじめはいつ頃まで続いたんですか?
ちゃんみな:小学4年生くらいまでです。でもいちばん悲しかったのは、リーダー格の人に気に入られようとして全然関係ない人を自分から傷つけてしまった時。今思い出しても、すごく苦しい……。
――自分が傷つけられたことより、誰かを傷つけたことの方がより深く心を傷つけたんですね。
ちゃんみな:今でもそうなんですけど、優しくされないことより、優しくできないことの方がつらいんです。
――誰かを傷つけてしまった時に苦しくなるのは、他人の気持ちに対する想像力があるからだと思います。それは今のちゃんみなのスタイルにもつながっていますね。
「死のうと思った」
ちゃんみな:でもいちばん大きかったのは、『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』。
――まだ高校3年生になったばかりの頃でしたよね。
ちゃんみな:不特定多数の人たちにいろいろ言われるようになったのはあれからです。「こんな地獄みたいな世界なんだ」と思った。一気に体重が10キロ以上落ちたし。あの時は、もう「消えたい……」っていう感じ。「消えたら誰が悲しんでくれるかな」とか考えた。
――有名になってからの方がつらかったと。
ちゃんみな:そうかもしれない。その時は、心が荒れました。初めて「死にたい」と思って自暴自棄になりました。
「これまでの痛みがわたしを綺麗にした」
――ネガティブな気持ちからはどうやって解放されたんですか?
ちゃんみな:『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』のあとある夢を見たんです。倉庫でリンチされる夢でした。主犯格は、14歳の時に仲が良かったその子。わたしは抵抗して山道を逃げる。その山道は、いじめられていた小学2年生の時によく見た夢に出てきた山。逃げ続けると、次第に自分の身体が軽くなって、宙に浮いて、あるポイントで突然落ちる。わたしは地面に叩きつけられる……。怖い夢でした。気になって夢占いをしたら、「過去の過ちを繰り返すな」という警告だった。それで考えたんです、何が自分の過ちだったのか。それは、「自分を大切にしないこと」でした。
――「死にたい」と思って自暴自棄になったということですね。
ちゃんみな:そうです。それから自分を大切にしよう、愛そうと思って。意識して笑うようにもしました。その頃から人生がすごくうまくいくようになった。いまはもう、死にたいとは思わない。
――でも、いまでも痛みのなかにはいるんですよね。
ちゃんみな:もちろん。生きていたら悲しいことなんてたくさんありますよね。
――自分の痛みや悲しみをオープンにするのは勇気が必要じゃないですか?
ちゃんみな:そうですか? わたしは隠そうと思ったことはないです。だってぜんぶ自分の経験だから。だけどそう言えるのは、自分のなかで整理がついたからかもしれないですね。いじめられている時は、いじめられているって言えなかったし。
――濡れたランドセルを乾かしてから家に帰っていた女の子が、自分の痛みからうまれた曲を多くの人に届けようとしている。それはありていな言い方をすれば、成長ですよね。しかも『PAIN IS BEAUTY』では、そういった痛みを「美しさ」だと言っている。
ちゃんみな:痛みは美しいですよ。わたしは『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』に出てから絶対に綺麗になった。綺麗になる努力をしたからじゃなくて、これまでの痛みがわたしを綺麗にしたんだと思う。
「傷ついた人は優しい」
――「愛されてたんだ」という歌詞もありますけど、そう思えたきっかけは何だったと思いますか。
ちゃんみな:やっぱりダンサーたちの存在が大きいです。愛されていることって気づきにくいじゃないですか。でもステージに立った時、ダンサーのみんなからの愛をストレートに感じて、「わたしはひとりじゃない、みんなで戦っているんだ」って実感できたんです。
――ということは、ライブの時に気づいたんですね。
ちゃんみな:初めてのワンマンライブで「愛されてるかも?」と思って、2回目のワンマンで「愛されてる!」という確信に変わりました。そしたら、自分がこれまでいろんな人に愛されていたことにも気がついた。特に両親からの愛はあらためて感じます。本当に素晴らしい両親に育てられた。
――ちょっと意地悪な質問ですけど、ちゃんみなは自分の痛みを作品に昇華できるから美しいと言えるんじゃないですか? 作品にできない普通の人々の痛みは、何にもならないのではないか。
ちゃんみな:いや、そんなことはないんじゃないかな。だってその人が優しいから。傷ついた人って絶対に優しいと思う。その時点でもう美しいんですよ。
――なるほど。
ちゃんみな:美しさって、内面から出るものだと思う。それはちゃんと人に伝わる。一緒にいれば「優しい人だな」ってわかるし、その逆もしかりですよね。もちろん、痛みを経験してない人がだめだってことではないですよ。というか、痛みを経験してない人なんていないから。
「一生尖っていたい」
――『PAIN IS BEAUTY』は自分の痛みについて歌っているけど、人の痛みを引き受ける曲でもあると個人的には解釈しました。そういうハタチの覚悟が現れているのではないかと。
ちゃんみな:これは昔の自分に対して書いた曲だけど、曲を聴いて「自分も似てるな」って思ってくれたらすごく嬉しい。でも基本的には、聴いた人に自由に解釈してもらいたいと思っています。
――「戦ってみせてよ」という歌詞も印象的です。バースデーライブのMCでも「みんなの“戦っている”という意志をわたしに誕生日プレゼントしてください」って言ってましたよね。
ちゃんみな:そこはいちばん気に入っているフレーズで、ファンの子たちに向けて書いた箇所でもあります。自分が悩んだり疲れたりしている時にいちばん言われたい言葉だなと思って。「がんばれ!」でも「もういいんだよ」でもなく、「戦ってみせてよ 疲れたらここにおいで」。
――つくづく思うのは、ちゃんみなの発言には芯が通っていて一貫しているということです。以前から自分の原動力は痛みだと言っていた。でも痛みそのものが美しいと言い切れるようになったのは大きな成長ですよね。ハタチになり、未成年ではなくなったわけですが、今後はどのようなヴィジョンを描いていますか。
ちゃんみな:「新人」の枠を抜けたいと思っているし、守りに入らず挑戦していきたいと思っています。どこのジャンルにも属したくないし、ちゃんみなというジャンルを確立させたい。とにかく一生尖っていたいですね。わたしが本当のロック、って感じで。