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【ライブレポート】D’ERLANGER、ツアーファイナルで爆音に託した思い

  • LIVE/EVENT

2018.7.24



D’ERLANGERが7月14日東京・EX THEATER ROPPONGIにて、“TOUR 2018 in the Beginning…”のファイナル公演を開催した。このツアーは再結成10周年を経て、11年目のスタートとして行なわれたもので、この公演で盛大なファイナルを迎え、華々しいスタートを飾るものだと思っていたが、この日、メンバーの思いは他にもあった。

西日本を中心に各地に大きな被害を与えた西日本豪雨災害。ファイナル公演前日の夜、Tetsu(D)は自身のSNSで手書きの文書を掲載した。そこには西日本豪雨被災地に向けた思いと、被災者に向けたお見舞いの言葉が綴られ、最後は「99%の気持ちを被災地に向け、残り1%はSTAGEの成功へ向け挑みます」と締めくくられていた。こんなに真摯な言葉が他にあっただろうか。かくいう私も愛媛出身。このメッセージをしっかりと受け止め、特別な思いを胸に会場に向かったのだった。

会場が暗転すると、パープルの光が点滅する中、D’ERLANGERのロゴが入ったバックドロップがゆっくりと降りてくる。SEの音とライティングが激しさを増し、静けさの中に不穏な空気が宿った頃、メンバーがステージに登場。D’ERLANGERのステージではよく目にする光景だが、音の先陣を切るドラムの方を全員が向いて、メンバー4人が目を合わせ、呼吸を合わせるロックバンド然としたオープニングに毎度心が踊る。そんな高鳴る心をスコンと打ち抜くTetsuのドラムイントロ。「バライロノセカイ」で幕が開けた。重厚な轟音で打ち鳴らすTetsuのドラム、爆音なのにメロディックなSEELAのベース、CIPHERのギターはエモーショナルなメロディを奏で、kyoのヴォーカルはその轟音の中を心地よく抜けて心まで響く。どれかに寄り添うなどということはなく、4つの音が強烈な個を放っているのに、絶妙なアンサンブルで聴かせる。キャ
リアという言葉だけでは足りない、この4人だからこそ為せる技に感嘆しきり。さらに刺激されるのは聴覚だけではない。「Masquerade」では、妖艶に歌うkyoのパフォーマンスや、弦を爪弾いて広がっていく音の方へとスッと手を流すCIPHERの仕草に、視覚も刺激された。

kyoのコール&レスポンスで始まった最初のMCでは、大きな歓声に「いいね、TOKIO」と満足げな表情を浮かべながらも、「全身で喜びを示してくれないとわからないからさ」と、さらに反応を煽る。そして「しっかりといろんな思いを、この六本木から日本全国に届けたいと思います」と、今の思いをまっすぐに伝えた。「濃厚なラブソングを一発」と「13段目の陶酔」を艶美に聴かせると、一転して切ない悲恋を歌う「Romeo & Juliet」へ。転調を繰り返し、徐々に熱を帯びていくバンドアンサンブルは絶品だった。続くスウィンギーなナンバー「TABOO」では、シャッフルするTetsuのリズムとSEELAのジャジーなベースが心地よく響いた。

「TABOO」終わりに思わず「最高!」と口にしたkyoに対して、あのラテンナンバー「TABOO」のリズムを鳴らし始めたTetsu。だいたいここで上着の革ジャンを脱ぐところだが、この日は「Tetsu、せっかくだからもうちょっとヤセ我慢する」と返したkyo。「今日はリハの時も結構いいから、今夜のD’ERLANGERは最高なんだよ。ここでめいっぱい俺たちのことを弄んでってよ」と、「LOVE is GHOST」から始まった中盤戦は、「Mona Lisa」「Je t’aime」と、アルバム『J’aime La Vie』の世界観へどっぷりと誘われる。その後、「今、D’ERLANGERのメンバーのLINEは、W杯のネタから始まります」というkyoの言葉を受けて、TetsuとCIPHERがテーマソングの一つを鳴らし始め、笑いを誘う場面も。そして会場が一体感を増したのは、メロディックなキラーチューン「LULLABY」。「Singe et Insecte」では、どんどんジャムセッションのようになっていくバンドサウンド。Tetsuが刻むビートに合わせてフロアも手拍子を打ち、一緒になってテンションを上げていく。体の奥から熱くなっていく感覚は気のせいではなく、ここでkyoがついに革ジャンを脱いだ。「俺たちはもう1曲目から、この辺が熱くて熱くてたまんねーんだよ。知らなかったら教えてあげるからさ、D’ERLANGERにさ、抱かれてみろよ!恥ずかしがらずにでかい声出してみようか」。kyoのセクシーなMCと、その後の投げキッスに悩殺されたまま「CRAZY4YOU」を大合唱。広がる快感。ここでしか味わえない恍惚感を、メンバーとオーディエンスとで共有する。この瞬間に小難しい言葉は不要で“うっとりするほどカッコいい”ただただこの一言に尽きる。そして抑え気味なkyoのヴォーカルと、ミディアムでありながら熱情的なサウンドが心を掻き立ててくる「Everlasting Rose」、ダークな「Harlem Queen Complex」から、オーラスは「Harlem Queen Romance」。kyoのシャウトと熱のこもったバンドプレイで場内を圧倒し本編を終了した。

鳴り止まぬ拍手とアンコールに導かれ、ツアーTシャツ姿で再びステージに登場したメンバーは、「MY BLOODY BURROUGHS POEM」「Love me to DEATH」とハードなナンバーを畳み掛け、ラストは「沈む」。エンディングに向かってどんどん熱量が高まっていくヘヴィーチューンに、ステージは最高潮を迎えた。

この日、彼らが伝えたかった思いは、重厚かつパワフルな歌とサウンドで、伝えたい場所にしっかりと届いただろうと思う。いや、ライヴ中はそんなことも考えさせないほど夢中にさせてくれた。それも大きな癒しだ。ファイナル公演が終わってからもなお、オフィシャルのSNSで綴られ続けている心のこもった言葉に、それが決して一時的なものではないことが伝わってくる。圧倒的な存在感を放つ音楽はもちろんのこと、彼らのこの真摯な人間性が人を惹きつけてやまないのだろう。





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