セルゲイ・マロフについて
セルゲイ・マロフは、ロシア・サンクトペテルブルク出身の最も多才な弦楽器奏者の一人です。彼はその卓越した技術と多彩な演奏スタイルで知られており、ヴァイオリン、ヴィオラ、バロック・ヴァイオリン、そしてヨハン・ゼバスティアン・バッハ自身がチェロ組曲を演奏したとされるチェロ・ダ・スパッラを演奏します。彼のレパートリーは、初期バロック音楽からバッハ、古典派やロマン派のヴァイオリン協奏曲、さらには現代音楽の世界初演まで多岐にわたります。彼は各時代の演奏様式や技術に関する深い研究を基に、その解釈を練り上げています。

セルゲイは2021年にアルバム『バッハ：無伴奏チェロ組曲全集』でOpus Klassikソロ録音（器楽部門）賞を受賞しました。また、ジェノバのパガニーニ国際コンクール、ザルツブルクのモーツァルト国際コンクール、ヴィリニュスのハイフェッツ国際コンクール、オークランドのマイケル・ヒル国際コンクールで受賞しています。さらに、ヴィオラ奏者としてはミュンヘンのARD国際音楽コンクールや東京ヴィオラ国際コンクールで受賞歴があります。ヴァイオリンおよびヴィオラのソリストとして、BBCロンドン交響楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、バイエルン放送交響楽団、エネスコ・フィルハーモニー管弦楽団、オークランド・フィルハーモニー管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団などのオーケストラと共演しています。

また、シベリウスの誕生日にはクラウス・マケラの指揮でヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団とシベリウスのヴァイオリン協奏曲を演奏するなど、多くの招待公演も行っています。その他、インスブルック古楽祭、日本でのリサイタルツアー、ヴュルテンベルク室内管弦楽団とのツアーにも出演しました。2019年夏にはフィンランドのトゥルク音楽祭でレジデンス・アーティストを務めました。

『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』について
約300年前に生み出されたヴァイオリニストたちの「聖書」とも言えるバッハの『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』は、その表紙にさえ謎が隠されています。「Sei solo」というイタリア語は、複数の独奏曲を指す場合には文法的に誤っています。しかし直訳すると「あなたは一人である」という意味になり、この作品において深い意味を持つ可能性があります。この楽譜に記された1720年という年は、バッハの妻マリア・バルバラが亡くなった年でもあります。

孤独はこの作品のテーマであり、その頂点に位置するのが「シャコンヌ」です。これはマリア・バルバラ・バッハへの不朽の記念碑とも言えるでしょう。ガブリエル・ガルシア＝マルケスの20世紀を代表する小説『百年の孤独』は、私のお気に入りの一冊でもあります。（セルゲイ・マロフ）