Discography
チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」 / Tchaikovsky: Eugene Onegin のジャケット写真

グスターボ・ヒメノ / Gustavo Gimeno

チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」 / Tchaikovsky: Eugene Onegin

2026.10.23 配信/880242487452

ALBUMデジタル配信

愛と後悔、すれ違う運命。豪華キャストとグスターボ・ヒメノが、チャイコフスキー不朽の名作オペラ『エフゲニー・オネーギン』に新たな光を当てた、2025年テアトロ・レアルでのライヴ録音。

 ウクライナ出身のバリトン、ウクライナのユーリ・サモイロフは、冷淡で傲慢な態度から深い悔恨へと変化していくエフゲニー・オネーギンを説得力たっぷりに演じています。力強くも繊細なパフォーマンスで、オネーギンの複雑な感情の旅を見事に表現しました。特に、彼が一粒の真珠のピアスを付けて演じることで、キャラクターに謎めいた魅力を加えています。この細やかな演出は、チャイコフスキー自身の隠された同性愛への細やかなオマージュとしても機能しており、作品に深みを与え、秘められた身元や語られぬ欲望というテーマへの考察を促します。  
 相手役を務めるロシア出身のソプラノ、クリスティーナ・ムヒタリアンは、タチアナ・ラーリナ役として眩い輝きを放ちます。表現力豊かなソプラノと情緒あふれる演技でタチアナの内に秘めた葛藤を立体的に表現し、観客の心を捉えました。主役にふさわしい圧倒的な存在感を示し、このオペラを『タチアナ・ラーリナ』と改題してもよいと思わせるほどです。圧巻なのは「手紙の場面」で、タチアナが運命のラブレターを書き上げると、マドリード王立劇場の会場全体から自発的で鳴り止まない大きな拍手が湧き起こり、この場面の感情的な響きと彼女の素晴らしい歌唱を証明してみせました。   
 ウクライナ出身のテノール、ボグダン・ヴォルコフは、レンスキーを真摯に演じています。最初はオネーギンの圧倒的な存在感の陰に隠れがちだったレンスキーですが、運命と死が近づくにつれて、その悲劇性と美しさが際立っていきます。物語が進むにつれて引き込まれる演技を見せ、決闘直前の「レンスキーのアリア」では心を揺さぶる歌唱で悲劇的な結末を予感させます。   

 指揮者のグスターボ・ヒメノは、精密さと情熱を兼ね備えたタクトでマドリード王立劇場管弦楽団を率い、表現力豊かなスタイルでチャイコフスキーの音楽に深みを与えています。王立劇場の特別な配置により、観客はヒメノの身振りや表情をはっきりと見ることができ、親密でダイレクトな一体感を味わえます。テンポの変化から繊細なダイナミクスのコントロールに至るまで細部までこだわり抜き、ロシア・オペラの感情の機微を引き出しています。特に金管楽器セクションは彼の指揮のもと重要な役割を果たし、劇的な場面に重厚感と緊張感をもたらしています。   
 ヒメノの指揮が最も光るのは、オネーギンとレンスキーの決闘シーンです。金管楽器の鋭い響きや張りつめた弦楽器の鼓動が、元親友同士の緊迫感を捉え、オーケストラがまるで登場人物の感情の延長であるかのように響きます。突然の静寂と音の劇的な高まりを駆使して緊張感を高め、主人公たちの内面の葛藤を映し出します。物語が悲劇的な結末へ向かうにつれ、音楽は圧倒的な力で膨らみ、悲劇をドラマチックに彩ります。巧みなテンポ配分、プーシキンの原作に対する革新的な解釈、そして丁寧な人物描写が深い感銘を与えます。最終的に、この《エフゲニー・オネーギン》は「拒絶された愛の物語」という最もシンプルな純粋さに集約されており、シンプルでミニマルな美術は、観客をチャイコフスキーの音楽の奥深さ、そして彼の人生そのものへの思いへと誘います。  

ラーリナ:カタリーナ・ダライマン(メゾ・ソプラノ)  
タチアナ:クリスティーナ・ムヒタリアン(ソプラノ)   
オルガ:ヴィクトリア・カルカチェワ(アルト)   
フィリッピエヴナ(乳母):エレナ・ジリオ(メゾ・ソプラノ)   
エフゲニー・オネーギン:ユーリ・サモイロフ(バリトン)  
レンスキー:ボグダン・ヴォルコフ(テノール)   
ザレツキー/グレミン公爵:マキシム・クズミン=カラヴァエフ(バス)   
隊長:フレデリック・ヨスト(バス)   
トリケ:フアン・サンチョ(テノール)   
組頭:ダヴィド・ロメロ / アレクサンダー・ゴンザレス   
マドリード王立劇場管弦楽団・合唱団   
指揮:グスターボ・ヒメノ   
2025年1月22日 〜 2月18日、テアトロ・レアルでのライヴ