「わたしのフォーエヴァー・ヤング2」

業界の方々から届いた思い出のフォーエヴァー・ヤング作品へのコメント

アズテック・カメラ『ストレイ』

僕がどっぷりハマった70年代後半から80年代前半にかけてのイギリスの音楽シーンは凄かった。次々とニューカマーが現れては消えてゆく。細身のスーツを着てジャンプするまだ10代のポール・ウェラー、若者たちの置かれた環境を憂うクラッシュやザ・スペシャルズたちをリアルタイムで体験することが出来たのは本当に幸運だったと思う。社会全体がほとばしるエネルギーに包まれていたその時代、溢れる暴力性の対極として現れるべくして現れたのが「ネオアコ」だった。シンプルにそぎ落とされたサウンドが紡ぎ出すリリカルでセンシティブな世界観。けれども内包している「静かな蒼い炎」に僕は一瞬で虜になったのだ。

ネオアコ・シーンの中でリーダー的存在だったのが「アズテック・カメラ=ロディ・フレイム」だ。1983年にラフ・トレードから今ではネオアコのバイブルとも評されている『ハイランド・ハードレイン』でデビュー。アコースティック・ギターがかき鳴らす軽やかなメロディに若者たちの閉塞感を綴った歌詞を乗せ、支持を得ていった。不幸にもその端正な王子様のようなルックスから日本ではアーティスト性を語られるよりもアイドル的な扱いが多かったように思う。

今回、紹介する『ストレイ』は4枚目のアルバム。アズテック・カメラの名前はそのままにロディ・フレイムのソロ・ユニットとしてスタイルを変え、「迷子」のタイトル通り、統一性よりも好きな音楽を束ねた感じの肌触り。アルバムと言うよりも作品集といったところか。リラックスした雰囲気でヴォーカリスト、ギタリストとして楽しんでいる感じに余裕すら見えてくる。ブレないミュージシャン、アーティスト、表現者としての矜持を感じる名盤。

昔、「白馬に乗った王子様」に憧れた僕は「吐くまで呑んだおじさま」にしかなれなかった現実には目をつぶろうか。

 会田 隆
レコード屋 さっぽろアニマルズ

モリッシー『ヴィヴァ・ヘイト』

モリッシーのファースト・ソロ・アルバム。80年代半ば、僕はイギリスで生まれたネオ・アコースティック・ムーブメントに夢中だった。ザ・スミスやエコー&ザ・バニーメン等に毎日どっぷり浸っていた。だからザ・スミスの解散はショックだったし、このアルバムはドキドキしながら聴いたものだ。タイトルからして「憎悪万歳」なのだからモリッシー節全開である。まだ個人的には「スミス的なもの」を引き摺っていたし、期待もしていた。改めて全体を通して聴くと、モリッシーのエキセントリックな部分とザ・スミス時代からのファンを安心させる穏やかな曲調とで、うまくバランスが取れた作品になっていると思う。「エヴリデイ・イズ・ライク・サンデイ」や「スエードヘッド」、「トリート・ミー・ライク・ア・ヒューマン・ビーイング」辺りを好んで聴いた。独特の孤独感や虚無感が滲み出るボーカルに惹かれていたのだ。

そして思い出すのは1991年の初来日公演。僕は初日(8月27日)の福岡サンパレスを観た。それは、日本で最初のモリッシーを「目撃した」と言っていいかもしれない。1曲目はこのアルバムから「エンジェル・エンジェル」。初めて見る生モリッシーに会場全体が緊張と興奮に包まれる。そしてライヴの後半、お客さんが前方に押しかけ、中にはステージに上がってモリッシーに抱きついて服を引きちぎった猛者もいてカオス状態。僕は2階席からその光景を唖然と眺めていた。ある意味モリッシーらしいエンターテイメントで、自由奔放なライヴだった。アンコール前の本編最後にザ・ジャムの「ザッツ・エンターテインメント」歌ってたしね。

元永 直人
福岡ロック研究所

ザ・スミス『ザ・スミス』

音楽を聴くシチュエーションによって、その時のアルバムが人生においてかけがえのない1枚になると思う人は何人いるのだろう。格好をつけているわけでもなく単純に思うのだ。

私にとってザ・スミスの『ザ・スミス』はとても印象深く思い入れがあるアルバムだ。しかし当時はなかなか大好きなバンドとは周りに言いづらく(言ったところで洋楽ファンは限りなく少数派)密かに、こっそりとヘッドホンをつけてヘビロテしたバンドであった。

イギリス・のマンチェスターにて1982年に結成されたバンド。当時は既に社会風刺を謳っていたバンドは多数いた。活動期間はたった5年と短い。しかし、後世のバンド達に絶大な影響(過大評価?)を与えたと言っても過言ではないだろう。

労働者階級社会だったイギリス。仕事と家との単純な往復。楽しみといえば休日にパブでビールを飲み、バンドの演奏に身を委ねる。当時の現地の若者に突き刺さる、行きどころのない発散の要素だったのかもしれない。日本の片田舎にいた私も多感な時期を過ごしていた。青春を謳歌しているように見えていたに違いない。しかし実は親友達との永遠の別れが立て続けに訪れ、やり場のない怒りをぶつける事が出来ず静かに音楽を聴くことに没頭するしかなかったのである。1人ぼっちになってしまったような切なさ、また社会から孤立したような絶望感。

そんな時はこのアルバムをよく聴いたのである。
文学少年、少女達の心を掴むかのようなモリッシーの歌詞、ジョニーの物悲しいギターのリフ。
モリッシーの歌詞が後に色々な場面で物議を醸し出していても私には気にならなかった。だってこれは彼自身の表現の一部なのだ。嫌なら聴かなきゃいいのだ。そう思っている(笑)。

解散(1987)を知った時(某音楽雑誌)は日本でもバブルが弾け、(1990突入)私も転落人生まっさかさま(笑)谷あり、谷ありようやく今でもまだ少し丘を登った状態なのだ。頂上には辿りつかない。いゃ、頂上はないのかもしれない。

インターネットが普及し、簡単に情報を入手出来る時代。自由に音楽を聴ける。
「良い時代になったなぁ」としみじみ思うが、モリッシーが皮肉った社会的危機感、また若者や弱者が持つ悩みなどは現代においても解決などされておらず、もしかするともっと酷い事が起きてしまっているのではなかろうか。

後に大ヒットとなるアルバムを発表しているが、まずはこの『ザ・スミス』をじっくりと聴いて欲しいと思う。

しかし再結成は決して望まないバンドである事を付け加えておきたい。

chibi-tomo
UK ROCK愛好家

ペット・ショップ・ボーイズ『リリース』

1980年代半ばエアチェックに夢中だった自称好青年の頃から、気づいたら2025年。
年齢も50を超えて気がついたら音楽に携わる仕事を続けさせてもらい、間もなく35年。
常に音楽と隣り合わせの人生を歩ませて頂いておりますが、私の音楽人生にはペット・ショップ・ボーイズが常に隣り合わせでおります。
それくらい新曲は常にチェックさせて頂いております。

1985年リリースのデビュー曲「ウエスト・エンド・ガールズ」から現在までミュージック・シーンの最前線にいるだけあって、数々のヒット曲は数知れず。今回このレビュー依頼を受け、改めて楽曲を聞き聴き倒しました。(本年度聴いたアーティストNo.1当選確実)。

ロンドンの空模様を何処となく思い出すクールな楽曲から、シンセポップありの、ディスコ〜クラブを盛り上げてきたダンス・チューンあり、EDM的なものもあり、どのアルバムも時代によって変化を遂げているアルバムの数々はまさに「凄い」の一言です。 しかも、ニールの声が40年間変わらないのも驚きです。MIXやアレンジも歴史を感じて、
まるで音楽史を勉強するかのように、それぞれの時代を自分の思い出と照らし合わせながら聴き入りました。その中で、今の私がこれだ!と思ったアルバムが2002年にリリースされた8枚目のアルバムとなる『リリース』(因みに、この頃の私はCD SHOP BOYでした)。

こちらのアルバムは他のアルバムとはまた一味違うと感じた”メロウ”を重視し、「ホーム・アンド・ドライ」(MV必見)や「バースデイ・ボーイ」を筆頭に、哀愁漂うのに、もう少し頑張れよ。でも、休んでいいんだよ。と、そんな気持ちにさせてくれる一枚です。
もう年も重ねてくると心に響く音楽を求めているのかな…?
と、無我夢中でこちらのレビューを書いているうちに喫茶店が閉店の時間のようです。

あっ、早く家に帰らなきゃ。

ハービーモンコック
フリープロモーター

WARNER MUSIC JAPAN SPECIALS