「わたしのフォーエヴァー・ヤング④」

数々の洋楽名盤をお届けするフォーエヴァー・ヤング・シリーズを、様々な形で応援してくれる「フォーエヴァー・ヤング・サポーター」の皆さん。
業界にゆかりのある方々から、人生に寄り添い、共に歩んできた一生モノの1枚への想いを綴っていただきました。

『燃えよドラゴン』

『燃えよドラゴン』を観たのは1973年12月の封切公開から半年は経った頃で、当時は現在のようなシネコンも無く、数多くあった独立した街中の映画館、それも大ヒットした映画が場所を変えながら長々と上映出来た環境のなかでの鑑賞でした。記憶の遠くにあるのだけれど、いつかの休日に見たテレビが、日本中でロングラン大ヒット中の映画ってことでこの作品を紹介してたのをたまたま見てしまい、画面の中のあの人に一瞬にして魅せられたことが全てのことの始まりでした。
仮面ライダー、ウルトラマンが目下のヒーローだった小学生のワタシにとって、取って変わってしまったのがあの人。リアルタイム世代にとっては急遽現れた香港のスーパースターのあのインパクトは、もう既にこの世に居ないということも相まって強烈かつ、一躍ブームとなったのも今は懐かしい。
あの当時は二本立て上映が当たり前だったのであの人の数少ない作品を追いかけるたびに一緒に観ている作品にもまた別の魅力を感じてしまい、それがワタシを映画好きに導いてくれたものとして、そのきっかけを作ってくれた『燃えよドラゴン』には、あなたの人生のベスト映画は?と聞かれるたびに無数のきらめきがあるなかでも何があっても最初に来るのはこの作品とワタシは決めている。
さて、音楽について触れなければならないのだけれど、ブームは映画業界のみならず音楽業界も席巻してしまったのでして、唄の無いインストだけのものがヒット・チャートの上位に食い込み、映画の音楽も大ヒット、『燃えよドラゴン』に続いてあの人の数少ない作品も立て続けて公開するたびにサントラ盤もセリフや奇声(怪鳥音なんて呼んでました)入りの主題歌で音楽産業を賑わせていましたっけ。このドラゴン・ブームのおかげでそのすぐ後に来るオカルト映画ブームやパニック映画ブームもすんなりサントラ盤が売れてしまう現象となっちまいました。 もうご存知のかたも少なくなったと思いますが、『燃えよドラゴン』にはサントラ盤が三種①インストだけ(今回の復活CDですね)、②セリフ・怪鳥音入り1枚組、③セリフ・怪鳥音入り2枚組(あの人の劇中セリフ全て網羅)がありました。劇中音楽を担当したラロ・シフリンの名前を当時は知らなくても、テレビで見ていた『スパイ大作戦』のあのテーマ(そうです、『ミッション:インポッシブル』っすね)のヒトだったと作曲者紹介のライナーノーツで知りました。その後、『ブリット』、『ダーティハリー』を観て、❗️となったりしたりね。

懐かしいだけでは終わらない、いま聴いても音楽と共に映像もまた甦る。そしてあの人、ブルース・リーもね。

つっちー(土田 篤)
さっぽろ村ラジオ
「わんだふぉ!パレットシネマ」
パーソナリティ

エレクトロニック『エレクトロニック』

エレクトロニックの1stが出た1991年、僕は社会人2年目。毎日慌ただしかったけれど、好きな音楽をせっせと聴きまくっていました。

ニュー・オーダーとザ・スミスの邂逅、そしてペット・ショップ・ボーイズの参加という結成のニュースを聞いたときは、3グループとも大好きだった僕にとって、まさに「盆と正月とクリスマスが一緒に来たような」高揚感でした。

でも、1stを初めて聴いたときに感じたのは、これは単なるスター共演の“お祭り企画”じゃない―――ニュー・オーダーの冷ややかな高揚感、ザ・スミス由来のギターの陰影、そこにエレクトロ・ポップの洗練がにじむサウンド…アルバムからは、各グループの「看板」を一旦横に置いて「自分たちのバンドではできないこと」を確かめ合っているような、解放と実験の匂いが強く伝わってきました。

80年代のポスト・パンク、シンセ・ポップと、90年代のダンス・ロックを橋渡しした重要なプロジェクトであり、ニュー・レイヴ以降のエレクトロ・ロックにも通じていると思います。1996年に『レイズ・ザ・プレッシャー』、1999年に『トゥイステッド・テンダネス』をリリース、アルバムごとにどんどんエッジが立っていくので、ぜひ一聴を。

そろそろまた「集合」してくれないかな…“期待せずに”ではなく“期待して”待っています。

西口 猛
アップフロントプロモーション

アズテック・カメラ『ストレイ』

僕がどっぷりハマった70年代後半から80年代前半にかけてのイギリスの音楽シーンは凄かった。次々とニューカマーが現れては消えてゆく。細身のスーツを着てジャンプするまだ10代のポール・ウェラー、若者たちの置かれた環境を憂うクラッシュやザ・スペシャルズたちをリアルタイムで体験することが出来たのは本当に幸運だったと思う。社会全体がほとばしるエネルギーに包まれていたその時代、溢れる暴力性の対極として現れるべくして現れたのが「ネオアコ」だった。シンプルにそぎ落とされたサウンドが紡ぎ出すリリカルでセンシティブな世界観。けれども内包している「静かな蒼い炎」に僕は一瞬で虜になったのだ。

ネオアコ・シーンの中でリーダー的存在だったのが「アズテック・カメラ=ロディ・フレイム」だ。1983年にラフ・トレードから今ではネオアコのバイブルとも評されている『ハイランド・ハードレイン』でデビュー。アコースティック・ギターがかき鳴らす軽やかなメロディに若者たちの閉塞感を綴った歌詞を乗せ、支持を得ていった。不幸にもその端正な王子様のようなルックスから日本ではアーティスト性を語られるよりもアイドル的な扱いが多かったように思う。

今回、紹介する『ストレイ』は4枚目のアルバム。アズテック・カメラの名前はそのままにロディ・フレイムのソロ・ユニットとしてスタイルを変え、「迷子」のタイトル通り、統一性よりも好きな音楽を束ねた感じの肌触り。アルバムと言うよりも作品集といったところか。リラックスした雰囲気でヴォーカリスト、ギタリストとして楽しんでいる感じに余裕すら見えてくる。ブレないミュージシャン、アーティスト、表現者としての矜持を感じる名盤。

昔、「白馬に乗った王子様」に憧れた僕は「吐くまで呑んだおじさま」にしかなれなかった現実には目をつぶろうか。

 会田 隆
レコード屋 さっぽろアニマルズ

WARNER MUSIC JAPAN SPECIALS