「わたしのフォーエヴァー・ヤング④」
数々の洋楽名盤をお届けするフォーエヴァー・ヤング・シリーズを、様々な形で応援してくれる「フォーエヴァー・ヤング・サポーター」の皆さん。
業界にゆかりのある方々から、人生に寄り添い、共に歩んできた一生モノの1枚への想いを綴っていただきました。

『ブルース・ブラザーズ』
SOULからBLUESに興味を持ち始めた20代に映画『ブルース・ブラザーズ』を観て、このアルバムを聴きました。
1曲目から、先日、天に召されたスティーヴ・クロッパーのカッコいいギターのイントロの「シー・コート・ザ・ケティ」に始まり、レイ・チャールズやジェームス・ブラウン、アレサ・フランクリン、キャブ・キャロウェイの素晴らしい歌の曲順で聞聴く度に映画のシーンを思い出してしまいます。
でも、やっぱりなんと言ってもアルバム全編を通して、ドナルド・ダック・ダンとウィリー・ホールの心地よいグルーヴ、ラストの「監獄ロック」のホーン・セッションやギターと共に後半のたたみかける盛り上がりは本当に最高です!
因みにクレジットを見て気付いたのですが、「エヴリバディ・ニード・サムバディ」のコーラスに大好きなパティ・オースティンも参加している事には驚きました。
改めてBLUES、SOUL、GOSPEL、JAZZなどの黒人大衆音楽が沢山選曲されているこのサウンドトラックを聴くと、今でも映画のシーンや思い出が鮮やかに蘇ります。
この映画に触発されて、後に音楽仲間でブルース・ブラザーズのライヴを企画、因みに私はアレサ役で歌いました(笑)。
そしてブルース・ブラザーズのコンサートが札幌で開催された時に打ち上げに参加させていただき、スティーヴ・クロッパーや伝説のレジェンド達と交流する機会に恵まれたのは今でも大切な思い出です。
宮澤 和子
Blues and soul singer

『地獄の黙示録・特別完全版』
映画『地獄の黙示録』を初めて鑑賞したときのことはよく覚えている。2016年1月30日、札幌プラザ2・5の地下劇場「メッセホール」(現・サツゲキの4番スクリーン)で行われた「札幌爆音上映 Vol.3」というイベント。地下へと続く階段を下り、重い扉を開けた会場には、大勢がひしめき合っていた。
ヘリコプターが徐々に近づいてくるオープニング。サラウンド・システムを最大限に生かした立体表現。そして寂しげなギターとともに、ジム・モリソンの枯れそうだがしっかりとした歌声が響く。「これで終わりだ、美しい友よ」・・・同時に映し出される、戦火に溺れるベトナムの土地。「気づき上げた理想はもろくも崩れ、立っていたものはすべて倒れた」というこれからの物語を予想させる歌詞に、ベッドに横たわるウィラード大尉の目がフェード・インしてくる。徐々にヘリコプターのプロペラではなく、部屋の天井に設置されたサーキュレーターの羽に移り変わる。そして戦争という極限状態の経験によって、"壊れてしまった人間"が映し出される。 わたしは1曲目の「ジ・エンド」を聴くだけで、オープニング映像が瞼の裏で再生される。歴史上でも指折りの名シーンだ。
そして外せないのが5曲目、ショルティ指揮ウィーン交響楽団による「ワルキューレの騎行」。ブラスの力強い響きを聴くと、否応なしにアガる。ヘリコプターに積まれたオープンリールのプレーヤーから爆音で響き渡る金管楽器。音が士気を高揚させ、軍人たちを暴力に扇動する。そして、この音が地上の人々の耳に入るころにはもう遅い。共に降り注ぐ大量の爆薬と銃弾。 人を鼓舞し、力を正当化し、思考を麻痺させる。これを“音楽”と言ってもいいのだろうか? さながら特別な効果を持った薬のようにも感じる。形は違えど、スポーツの応援も、選挙カーの演説も、ショッピング・モールのテーマ・ソングも似たようなものだ。間違った使い方をしなければ、いい効果をもたらすだろう。
今作は、音楽と戦争のつながりを印象づける一枚だ。
暴力による後悔、暴力による解放感、両方を描く。良くも悪くも、人を突き動かす推進力がある。
この音の魔法をどのように使うのかは、あなた次第だ。
スガラムルディAKIRA

『ハリー・ポッターと賢者の石』/ジョン・ウィリアムズ
映画『ハリー・ポッターと賢者の石』の公開から25年。現在、各方面で、「ハリー・ポッター」25周年セレブレーション的キャンペーンが展開されていますが、時の流れの早さを感じるとともに、サウンドトラック担当として、初期段階でこのプロジェクトに携われたことを光栄に感じます。
J・K・ローリングの原作小説が日本を含む世界中でベストセラーとなった状況下で、待望の映画公開は2001年12月。レコード会社としては、大作映画のサントラとしての魅力に加え、ハリウッドNo.1の作曲家、巨匠ジョン・ウィリアムズ入魂の新作であることをアピールしようと考えていました。そんな中、公開直前に都内某百貨店で開催された「ハリー・ポッターの世界展」的イベントで、輸入盤CDを先行販売したところ、最初の2日間(土、日)で数百枚が完売する想定外の事態に!「ハリー・ポッター」のコンテンツとしての凄まじいパワーを痛感させられました。
その後の社会現象化は周知の通り。シリーズを通じて流れる「ヘドウィグのテーマ」は、映画だけでなくミュージカルやテーマパークなど、あらゆる場面で愛される名曲となりました。この旋律を聴くたび、ホグワーツの夜空をふわりと舞う白フクロウ、ヘドウィグの姿が脳裏に浮かんできます。
ジョン・ウィリアムズが届けてくれた珠玉の音楽は、これからも魔法の世界の記憶とともに、世界中で鳴り響き続けるに違いありません。
堀内 英彦
Vaco Japan / Editorial Associate for Google Play Comics Hub

『燃えよドラゴン』
『燃えよドラゴン』を観たのは1973年12月の封切公開から半年は経った頃で、当時は現在のようなシネコンも無く、数多くあった独立した街中の映画館、それも大ヒットした映画が場所を変えながら長々と上映出来た環境のなかでの鑑賞でした。記憶の遠くにあるのだけれど、いつかの休日に見たテレビが、日本中でロングラン大ヒット中の映画ってことでこの作品を紹介してたのをたまたま見てしまい、画面の中のあの人に一瞬にして魅せられたことが全てのことの始まりでした。
仮面ライダー、ウルトラマンが目下のヒーローだった小学生のワタシにとって、取って変わってしまったのがあの人。リアルタイム世代にとっては急遽現れた香港のスーパースターのあのインパクトは、もう既にこの世に居ないということも相まって強烈かつ、一躍ブームとなったのも今は懐かしい。
あの当時は二本立て上映が当たり前だったのであの人の数少ない作品を追いかけるたびに一緒に観ている作品にもまた別の魅力を感じてしまい、それがワタシを映画好きに導いてくれたものとして、そのきっかけを作ってくれた『燃えよドラゴン』には、あなたの人生のベスト映画は?と聞かれるたびに無数のきらめきがあるなかでも何があっても最初に来るのはこの作品とワタシは決めている。
さて、音楽について触れなければならないのだけれど、ブームは映画業界のみならず音楽業界も席巻してしまったのでして、唄の無いインストだけのものがヒット・チャートの上位に食い込み、映画の音楽も大ヒット、『燃えよドラゴン』に続いてあの人の数少ない作品も立て続けて公開するたびにサントラ盤もセリフや奇声(怪鳥音なんて呼んでました)入りの主題歌で音楽産業を賑わせていましたっけ。このドラゴン・ブームのおかげでそのすぐ後に来るオカルト映画ブームやパニック映画ブームもすんなりサントラ盤が売れてしまう現象となっちまいました。 もうご存知のかたも少なくなったと思いますが、『燃えよドラゴン』にはサントラ盤が三種①インストだけ(今回の復活CDですね)、②セリフ・怪鳥音入り1枚組、③セリフ・怪鳥音入り2枚組(あの人の劇中セリフ全て網羅)がありました。劇中音楽を担当したラロ・シフリンの名前を当時は知らなくても、テレビで見ていた『スパイ大作戦』のあのテーマ(そうです、『ミッション:インポッシブル』っすね)のヒトだったと作曲者紹介のライナーノーツで知りました。その後、『ブリット』、『ダーティハリー』を観て、❗️となったりしたりね。
懐かしいだけでは終わらない、いま聴いても音楽と共に映像もまた甦る。そしてあの人、ブルース・リーもね。
つっちー(土田 篤)
さっぽろ村ラジオ
「わんだふぉ!パレットシネマ」
パーソナリティ

エレクトロニック『エレクトロニック』
エレクトロニックの1stが出た1991年、僕は社会人2年目。毎日慌ただしかったけれど、好きな音楽をせっせと聴きまくっていました。
ニュー・オーダーとザ・スミスの邂逅、そしてペット・ショップ・ボーイズの参加という結成のニュースを聞いたときは、3グループとも大好きだった僕にとって、まさに「盆と正月とクリスマスが一緒に来たような」高揚感でした。
でも、1stを初めて聴いたときに感じたのは、これは単なるスター共演の“お祭り企画”じゃない―――ニュー・オーダーの冷ややかな高揚感、ザ・スミス由来のギターの陰影、そこにエレクトロ・ポップの洗練がにじむサウンド…アルバムからは、各グループの「看板」を一旦横に置いて「自分たちのバンドではできないこと」を確かめ合っているような、解放と実験の匂いが強く伝わってきました。
80年代のポスト・パンク、シンセ・ポップと、90年代のダンス・ロックを橋渡しした重要なプロジェクトであり、ニュー・レイヴ以降のエレクトロ・ロックにも通じていると思います。1996年に『レイズ・ザ・プレッシャー』、1999年に『トゥイステッド・テンダネス』をリリース、アルバムごとにどんどんエッジが立っていくので、ぜひ一聴を。
そろそろまた「集合」してくれないかな…“期待せずに”ではなく“期待して”待っています。
西口 猛
アップフロントプロモーション

アズテック・カメラ『ストレイ』
僕がどっぷりハマった70年代後半から80年代前半にかけてのイギリスの音楽シーンは凄かった。次々とニューカマーが現れては消えてゆく。細身のスーツを着てジャンプするまだ10代のポール・ウェラー、若者たちの置かれた環境を憂うクラッシュやザ・スペシャルズたちをリアルタイムで体験することが出来たのは本当に幸運だったと思う。社会全体がほとばしるエネルギーに包まれていたその時代、溢れる暴力性の対極として現れるべくして現れたのが「ネオアコ」だった。シンプルにそぎ落とされたサウンドが紡ぎ出すリリカルでセンシティブな世界観。けれども内包している「静かな蒼い炎」に僕は一瞬で虜になったのだ。
ネオアコ・シーンの中でリーダー的存在だったのが「アズテック・カメラ=ロディ・フレイム」だ。1983年にラフ・トレードから今ではネオアコのバイブルとも評されている『ハイランド・ハードレイン』でデビュー。アコースティック・ギターがかき鳴らす軽やかなメロディに若者たちの閉塞感を綴った歌詞を乗せ、支持を得ていった。不幸にもその端正な王子様のようなルックスから日本ではアーティスト性を語られるよりもアイドル的な扱いが多かったように思う。
今回、紹介する『ストレイ』は4枚目のアルバム。アズテック・カメラの名前はそのままにロディ・フレイムのソロ・ユニットとしてスタイルを変え、「迷子」のタイトル通り、統一性よりも好きな音楽を束ねた感じの肌触り。アルバムと言うよりも作品集といったところか。リラックスした雰囲気でヴォーカリスト、ギタリストとして楽しんでいる感じに余裕すら見えてくる。ブレないミュージシャン、アーティスト、表現者としての矜持を感じる名盤。
昔、「白馬に乗った王子様」に憧れた僕は「吐くまで呑んだおじさま」にしかなれなかった現実には目をつぶろうか。
会田 隆
レコード屋 さっぽろアニマルズ