技体とも充実した張りのある演奏で欧州での人気もますます高まっているゴーティエ・カプソンが、チェリストにとっての一大事業でもあるベートーヴェン:チェロ・ソナタ全集をセッション録音で制作しました。共演は長年の親しい友人でもある今年48歳のフランク・ブラレイ。これまでに実演・録音の両面で実績を重ねてきた彼らのアンサンブルは、作品解釈を深い部分まで共有したもので、大胆でアグレッシヴな表現から繊細な弱音でのやりとりに至るまで室内楽に必要とされる、よく噛み合った音楽というスタイルで一貫しているのがポイント。
　初期の第1番と第2番では軽やかな躍動感を、中期に書かれた第3番では楽器の可能性を徹底追及した力強く雄大なスケール感を、後期に書かれた第4番では深遠な抒情美の探求、同じく後期の第5番では自在に変容するチェロの姿をときにパワフルにときにクリアーに描き出して実に魅力的。
　この全集ではソナタ5曲のほかに、チェロのピアノのために書かれた変奏曲3曲も収録されています。有名なモーツァルトのオペラ『魔笛』の中の有名旋律を用いた7つの変奏曲と12の変奏曲では親しみやすいチェロの味わいがよく示されており、おなじみのヘンデルの『マカベウスのユダ』の旋律を用いた変奏曲も、原曲の晴れやかさを屈託のないチェロの語法に置き換えて楽しい仕上がりとなっています。

【収録曲】
ベートーヴェン:
● チェロ・ソナタ第1番ヘ長調 Op.5-1
● チェロ・ソナタ第2番ト短調 Op.5-2
● チェロ・ソナタ第3番イ長調 Op.69
● チェロ・ソナタ第4番ハ長調 Op.102-1
● チェロ・ソナタ第5番ニ長調 Op.102-2
● 『マカベウスのユダ』の主題による12の変奏曲ト長調 WoO.45
● 『魔笛』の主題による7つの変奏曲変ホ長調 WoO.46
● 『魔笛』の主題による12の変奏曲ヘ長調 WoO.66

【演奏】
　ゴーティエ・カプソン(チェロ)
　フランク・ブラレイ(ピアノ)

【録音】2016年3月、ドイツ、エルマウ城