演奏が素晴らしく上手なヴァイオリニストは少なくありませんが、よく知られた名曲から思いがけない表情を引き出し、意表を衝くプログラムで聴衆を （そして同業者を） 唸らせるのは、クレーメルの独壇場です。せつせつとした哀歓が胸を打つ、この独創的なCDは、クレーメル自身によれば「有名な映画音楽のメロディだから弾く、といった安易で打算的なプロジェクトではなく」、無類の映画好きのヴァイオリニストが音で綴った心の日記です。  

ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、雄大な構想と抒情的な美しさで「4大ヴァイオリン協奏曲」の一つに数えられます。 ヴァイオリン界のリーダー、クレーメルは、カラヤン及びバーンスタインという時代を代表する巨匠達と録音を重ね、ブラームス生誕百年に合わせて発売された3回目の録音では、巨匠アーノンクールとの共演で21世紀に残すにふさわしいレベルに到達しました。チェロを加えた二重協奏曲はジプシー風の第3楽章が魅力です。  

シュニトケの親しい音楽仲間として積極的にヴァイオリン関連作品を録音しているクレーメル。ヴァイオリン協奏曲全曲録音からの2曲と小品2曲の組み合わせ、1993年録音。