ウィーン古典派レパートリーの熱心な愛好家であったリリー・クラウスにとって、その真髄はモーツァルトにこそ発揮されたと言えるだろう。レ・ディスコフィル・フランセ・レーベルによるこの全曲録音は、CD化の先駆けとなった作品の一つであり、多くの音楽愛好家にとってまさに啓示となった。クラウスは、その優美さと限りないエレガンスを一切失うことなく、それまで華麗で装飾的と思われがちだったモーツァルトのレパートリーの深みを余すところなく表現した。

リリー・クラウスは、素晴らしいソリストであっただけでなく、引く手あまたの卓越した室内楽奏者でもありました。彼女が1950年代にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターであったヴィリー・ボスコフスキーと組んだデュエットは、録音史（ディスコグラフィー）上、最も初期のベートーヴェン全集の一つを録音しています。そして、二人の間に見られる明白な阿吽の呼吸がいかに奇跡的な成果を生み出しているかを考えれば、これは疑いなく最高の全集の一つです。

ピアノ界の偉大な女流ピアニスト、リリー・クラウスが1930年代から1950年代にかけて、Les Discophiles français、Ducretet、Parlophoneといったレーベルのために録音した音源が、2014年リマスタリングされた高音質バージョンでオンライン配信。魅力的な人物だったリリー・クラウスは、その卓越した指導力や個性的なファッションセンスでも知られているが、何よりも特筆すべきは、彼女の奇跡的なタッチと、得意としたウィーン古典派のレパートリーにおける生き生きとした、情熱的な演奏。第1巻はハイドンの作品（5つのソナタと希少な「アンダンテと変奏曲」）を収録しており、今後モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトの作品も順次リリース予定。1937-1956年録音。