『シネマ・チェンバロ』は、素晴らしいチェンバロ奏者の曽根麻矢子が、彼女の楽器のレパートリーとクラシック映画のサウンドトラックとのつながりを探求したアルバム。たとえば、スタンリー・キューブリックの『バリー・リンドン』で象徴的に使用されたヘンデルの《サラバンド》や、イングマール・ベルイマンの『野いちご』で取り上げられたバッハの音楽などを演奏しています。
この魅力的なアルバムに収録された、あまり知られていないレパートリーの中で特筆すべきは、ポーランド国歌の作曲者ともされるオギンスキによる愛国的なポロネーズ《祖国への別れ》。これは、アンジェイ・ワイダの傑作映画『灰とダイヤモンド』を彩っています。さらに注目すべきは、曽根自身が編曲した、シンプルでありながら深く感動的な、ヴァレリオ・ズルリーニ監督の『鞄を持った女』のテーマ。この映画ではイタリアの名女優クラウディア・カルディナーレの輝かしい存在感も印象的です。
1994年録音