Metronomyメトロノミー

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ニュー・アルバムは、イースト・ロンドンのワッピングにある、ガレージを改装したスタジオでレコーディングされた。「僕たちは、しょっちゅうフェイセズかツェッペリンについて話している正統派のオールドスクールなオッサンがやっている、スモークハウスというスタジオでレコーディングした」マウントは語る。「次回はLAでやるかも知れないけど、とりあえず今回はワッピングだったんだ」

もし『NIGHTS OUT』が、次のパーティを待つ午前4時頃の薬物に酔った雰囲気に取り付かれているというなら、『THE ENGLISH RIVIERA』は、うららかな夏の日に静かな波に浮いているところへ、マウントが不安げな夜の曖昧さを、フリートウッド・マックや、スティーリー・ダン、そしてスティーヴィ・ワンダーといった1970年代の有名アーティストが持っていた温もりのあるスタジオの雰囲気にすり替えてしまっているようなものだ。最近のマウントがロンドンとパリを行き来しているにも関わらず、このアルバムは、10年以上も前に彼がアルバムを作り始めたのと同じ場所、デヴォンで、新たに見出した視点から生まれた。

『THE ENGLISH RIVIERA』のアイディアは、マウントとその仲間たちを、マウントがその近くで育ったというイギリス南東部の海岸沿い一帯へと結びつけた。「僕はただ、その地域を音楽とユース・カルチャー(若者文化)の発信地だと勝手に空想してみたんだ。実際は全く違うんだけどね」彼はそう説明する。「イギリスのこの特定の地域から――「デヴォン・サウンド」と呼ばれる――独特な音楽が生まれ、まるで1970年代のウェスト・コースト・スタジオ・ミュージックと似たようなものになっているのだと想像を膨らませながら。もしそこを訪ねたことがあって、その辺りの地形や風景が頭に入っていたなら、実際は結構思慮深く、内省的な音楽を作ることになってしまうと思うんだ。この作品は僕が、デヴォンがまるでオレゴン州ポートランドのようなクールな場所であるかのように描いたファンタジーだ。音楽評論家たちに『僕はイギリスのリヴィエラから来たんだ』と話せば、記事が数インチ多くなるような気がするんだよね。『フォルティ・タワーズ』(デヴォンのホテルを舞台にした英国のコメディー番組)を思い出されるよりはさ」

メトロノミーはデヴォンのトートネスで、マウントが学校で“数え切れないほどの沢山のバンド、中には怪しいものもいくつかあったが”でドラムを叩いて何年も過ごした後から始まった。ビヨークとエイフェックス・ツインに酔いしれた彼は、自分の寝室に閉じこもり、コンピューターを使ってレコーディングし始めた。教育上の都合でブライトンへ引っ越した彼は、2006年にデビュー作『PIP PAINE (PAY THE £5,000 YOU OWE)』をリリースした。エロール・アルカンに彼のクラブでライヴを行うことを依頼されたとき、マウントはオスカー・キャッシュとゲイブリエル・ステビングをプロジェクトに加えた。

マウントは未だに、全ての曲を自分で作っており、バンドのプロデュース等に関してはケヴィン・ロウランド的主導権を持つ役割を担っているが、ライヴでのメトロノミーは間違いなく4人編成のバンドである。『THE ENGLISH RIVIERA』の前に、ゲイブリエルはメンバーに祝福される形でバンドを離れたので、マウントは彼の代わりに、ドラマーとベーシスト、Anna PriorとGbenga Adelekanを残った中心メンバーである彼とオスカーのラインアップに加えた。「これを始めたとき、僕ら3人は文字通り、ただ生演奏しているだけの状態にまで到達したいと思っていた」彼は説明する。「時間は少し掛かったけど、でも今の僕たちは、バッキング・トラックの類は使っていないんだ。つまり、全てを演奏しているから、より見所が増えたって感じだね」

マウントはバンドが向かっている方向に満足しているが、同時に、次の作品もまた新鮮なものにしていきたいと強く思っているのである。「同じことを繰り返すつもりは間違いなく、一つもないね。僕は変化していくものが好きなんだ」そう彼は語る。「僕はまだ自分たちがキャリアの始まりにいると感じている。でも、いつか、沢山の作品をリリースした後だったら、作品毎に線を引いたり、類似点を探したりできるような日がくるかも知れないけどね」しかし今のところ、我々はメトロノミーの最新作『THE ENGLISH RIVIERA』に描かれているポップの中核地帯への壮大な冒険の温もりを楽しむほかないようである。

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