Rhett Millerレット・ミラー

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「ある意味、このアルバムは何年にも渡って作っていたとも言えるね」とレット・ミラーは言う。 彼はこの新しいソロ・アルバム『ザ・インスティゲイター』に至るまでの過程について語ってのことである。 「誤解のないように言うと、これは確かに全部新曲ではあるけど、このアルバムのイメージはずっと頭にあって、曲が今とは違うヴァージョンでずっと頭の中で鳴り続けていたものなんだ。 オールド97がいい例だけど、バンドという形態や、みんなの努力が集まった時のパワーというものを僕は大切に思っているけど、同時に、そのような環境の中で見えてくるヴィジョンのうち、ソロ・アルバムという枠組以外では実現できないようなものが出てくることも事実で、そのようなヴィジョンが『インスティゲイター』に繋がっていったんだ。」

『ザ・インスティゲイター』はレットにとって初めての徹頭徹尾個人としての作品である。 ロス・アンジェルスでレコーディングされ、友人でありポップの建築家とも言えるジョン・ブライオン(彼はフィオナ・アップル、メイシー・グレイ、エイミー・マンなどと仕事をした経験を持つ)によってプロデュースされたこのニュー・アルバムでは、“Come Aroundモや“World Inside The World"のような物悲しい曲に表れているように内面の隅々までを見つめる内省的な面と、“This Is What I Do"や“Four-Eyed Girl"のように陽気さに溢れ気持ちを高揚させるような曲との間に絶妙なバランスが存在している。

ジョン・ブライオンがハリウッド北部にあるNRGスタジオをのびのびとした且つ大事に見守るような雰囲気で満たし、最高のヴァイブを醸し出してくれること無しにはこのようなアルバムを作り上げることはできなかったとミラーは真っ先に語る。 「ジョンの音楽性に触発されるところがとてもあったし、全て自分次第という立場に自分の身をおくことにわくわくしてもいたんだ。 今思うと、多大なストレスを感じてもおかしくない環境だったような気もするけど、2人で一日一日が必ず楽しくて何か得るものがあるものになるようにお互い心掛けたんだ。 スタジオの床中がジョンのおもちゃでいっぱいだったということも助けになったとも言えるね。 一日中ずっとパジャマでいる日もあれば、所謂カジュアル・フライデーのロックン・ロール・ヴァージョンの“スーツの日"も決めたりしていたんだ。 音楽的な面では、ジョンは僕のルーツであるところと目指すところをきちんと理解してくれた。 お互いに同じレコードを拠り所として少年期を過ごしてきたもの同士なんだ。 僕達がゴールとしたのはまず音楽に全てを託し、そしてアルバムに入っている要素全てが絶対的な存在意義を見出せるものであり、且つテイスト溢れるものにしようということだったんだ。」

こう語るミラーは、この2人のミュージシャン間にお互いが最高の仕事のパートナーであるということを決定付け、またアルバムの中でも特に耳に残る楽曲“Things That Disappearモについて暗に語っているとも思われる。 「この曲は実は2年ほど前からできていたんだけど、このレコードをプロデュースするのはジョン以外にはないと確信するに至る原因となった曲でもあるんだ」とレットは言う。 「(The Old 97ユsの楽曲)“Murder (Or A Heart Attack)"でジョンにキーボードを弾いてもらったことがあって、それをきっかけに友達になったんだ。 (ハリウッドの有名なナイトクラブ)ラーゴではよくお互いのステージに飛び入りで参加したりしてね。 2000年の夏のことだったんだけど、今日は一日暇だっていう電話がジョンからあったんだ。 彼のその時の言葉を正確に言うと‘来いよ、スタジオでめちゃくちゃやろうぜ'だったと思う。 2インチの(レコーディング用の)テープをセットして制作中の曲を全部やってみたんだ。 “Things That Disappear"はまだ出来あがっていなかったんだけど、彼を刺激してしまったようで、彼がイントロ部分のアイデアを思いついて、歌詞を書き上げるよう僕も尻をたたかれてその場で歌詞を書き上げたんだ。 それは単に僕の見栄があってのことだったかもしれないけどね。 そしてスタジオに入って彼がドラムスを叩き僕がギターを弾いて、ものの6-7時間の間にレコーディングも何もかも含めて曲が出来あがってしまったんだ。 一緒に仕事するのもとても自然な感じでよくってね。 この曲のラフ・ミックスを1年半聴きつづけて、そして‘これを実現しなければいけない'と思ったんだ。 結果としてあの日に作ったトラックがレコードに入ることにもなったんだ。 このアルバムに存在するケミストリーに不可欠な要素全てがこの曲1曲の中に集約されているということが聴けば分かると思うよ。」

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