透明感のある音色とクリアなタッチによる、考え抜かれたブッフビンダーのベートーヴェン

ブッフビンダーによる、2つのディアベリ変奏曲の大名演 作曲家・楽譜出版人として活動したアントン・ディアベリ（1781-1858）はハイドンの弟子で、音楽教師として生計を立てていましたが、一念発起して1824 年、楽譜出版社ディアベリ商会を設立。そこで思いついたのが、フンメル、ツェルニー、シューベルト、リスト…など、約 50 人の音楽家にディアベリが自作した 32 小節のワルツ主題をもとに作曲してもらい、彼らの名前を冠した「変奏曲集」を出版するという企画を思いついたのです。そしてそれらを集大成し出版したのが「ディアベリのワルツの主題による50の変奏曲」なのです。ベートーヴェンは当初この主題を酷評し、依頼に応じませんでした。しかし、交響曲「第九」の作曲中に気休めで筆を走らせ、１時間近くの大作を仕上げてしまったのが「ベートーヴェン：ディアベリ変奏曲Op.120」だったのです。 　1946年生まれで、神童と呼ばれた名ピアニスト、ルドルフ・ブッフビンダー（ウィーン音楽院に5歳で入学し、音楽院ホールに11歳でデビュー）は、ベートーヴェンのソナタ全曲を、何十年も勉強し演奏し続けています。さらに1970年代のはじめから、32曲のソナタ全曲演奏を50回もおこなっています。ベートーヴェンの〈ディアベリ変奏曲〉を最高の難曲と指摘し、「技巧的にも、知的な理解の面でも肉体的な面でも難度が高い」「登頂がむずかしい巨大な山」と、ブッフビンダーは語っています。そのベートーヴェンと、様々な作曲家による50の変奏曲を、1973年に録音した名演アルバムの再発売です。  

《Budget Box series》  

ブッフビンダーが得意とする、シューマンの名曲集。

幅広いレパートリーを持つブッフビンダーのショパン、大家の存在感を示す名曲。

全98トラック 約2時間7分収録 創作主題による6つの変奏曲 ト長調 WoO.77、ドレスラーの行進曲による9つの変奏曲 WoO.63、イギリス国歌 「神よ王を守らせたまえ」による7つの変奏曲 WoO.78、ディアベリのワルツの主題による33の変奏曲 ハ長調 Op.120など、1976年録音。

古典派音楽を得意としたピアニストと指揮者の出会いによるモーツァルトの傑作。1990年録音。

ヨーロッパの古都に流れる空気のようなしっとりとしたショパン。ドイツ音楽の正統派ピアニストとして名高いブッフビンダーは派手さはないがいぶし銀のような懐かしい風情が漂う表現。現代的なショパン演奏とは一線を画す得難い名演奏。

ウィーン育ちのブフビンダーには「ワルツ」の血が流れている。ヨハン・シュトラウスの名作（「美しく青きドナウ」「ウィーンの森の物語」他）のピアノ・トランスクリプション集（アルフレート・グリュンフェルト、エドゥアルト・シュット、エルネー・ドホナーニなどによる）。1999年録音。

同世代の中でも最も傑出したベートーヴェン演奏家の一人として、ブフヒンダーは1970年代の記念碑的なベートーヴェンのピアノ作品全集を完成。ソナタ集、変奏曲集、バガテル集、さらにヤーノシュ・シュタルケル（チェロ）や、ヴォルフガング・シュルツ（フルート）と共演した室内楽作品も収録、1976-1981年録音。

2020年、オリジナル・マスターテープより、24bit/192kHzリマスター音源使用。