Sir Simon Rattleサイモン・ラトル
Discography
Bruckner:Symphony No.9 Wiht Finale / ブルックナー:交響曲第9番(第4楽章付補筆完成版)<SACDハイブリッド>
Bruckner:Symphony No.9 Wiht Finale / ブルックナー:交響曲第9番(第4楽章付補筆完成版)<SACDハイブリッド>
2012.05.09 発売¥3,457(税込)/WPGS-50002/3
未完の大作といわれる交響曲第9番の第4楽章を加えた演奏。これで作品の本質が明らかに、とラトルは語る。
【ラトルによる第4楽章】
このラトルがとりあげたヴァージョンは、ニコラ・サマーレとジュゼッペ・マッツーカによって始められ、後にジョン・アラン・フィリップスとベンヤミン=グンナー・コールスが加わって完成度を高め、1992年に刊行された「サマーレ、フィリップス、コールス、マッツーカ版(SPCM版)」の、2012年時点の最新版。
SPCM版の原型であるサマーレ&マッツーカ版が1984年に刊行された時点では発見されていなかった素材を反映するなどし、実に26年をかけて進化してきたこのヴァージョン、マッツーカは1987年には抜けてしまい、フィリップスもその後脱退してしまったため、2004年以降の改訂作業はコールスとサマーレの二人によっておこなわれてきました。
今回使用された最新の改訂版は、一連の作業の集大成として、これまでにない大幅な改訂を加えたものとなっているのが特徴。
1992年に刊行されたSPCM版としての初版の時点では少々懐疑的な部分があったラトルも、2007年改訂版をハーディングが指揮したコンサートが成功したこともあって、このSPCM版を評価するようになり、さらに純度を高めるべく改訂の進められた今回の新しいヴァージョンには深く満足したということです。
ラトルによる実際の演奏は、まず2011年10月に、ベルリンのユース・オケであるブンデス・ユーゲント管弦楽団を指揮しておこなわれています。これにはコールスも関わって入念な解釈の検討がおこなわれ、結果として、翌年のベルリン・フィルとの演奏を成功に導くことに繋がっています。
再現部の第3主題部まで、つまりコーダの部分を除き、大まかな構想はできていたといわれる第4楽章ですが、600小節を超えるこのヴァージョンのうち、三分の一ほどがブルックナー自身により完全に作曲された部分となっています。これを基本に、バラバラに残されていた弦楽パートや管楽器パートのスケッチが補筆して加えられており、研究者たちによる創作部分は、30小節前後となっているいうことです。
しかしながら、実際にその完成ヴァージョンを聴くと、ブルックナーらしさも感じられる一方で、違和感が感じられる部分もあります。ラトルはこれについて、こう語っています。
「このフィナーレで奇妙な個所は、すべてブルックナー自身の手によるものです。ここには、彼が当時体験した脅威、恐れ、感情のすべてが現われているのです」
また、2011年来日時の記者会見でも次のように述べて自信のほどを示してもいました。
「これまでに再構築を繰り返してきた第4楽章には、非常に多くの人の手が加えられていたと思われる。今回の完成版は今まで聴かれていたものとあまりに違うことに驚くでしょう。もっとワイルドで、奇異な感じがして、当時では考えられないようなたくさんの不協和音が用いられ、時代の先端をいっていたのです。」
実際、その言葉通り、これまでのヴァージョンで聴かれることの多かった薄味な響きとは大きく異なる迫力あるサウンドは説得力があり、「テ・デウム」や他の交響曲の引用なども含めて面白く聴くことができる仕上がりを示しています。
交響曲第9番本編(第1楽章~第3楽章)についての演奏は、ここのところの集中的な取り組みを反映してか、細部まで徹底的に練り上げられた凄い完成度を示すものとなっており、ラトルの隙の無い解釈の精度と、オーケストラの実力の高さを改めて証明するものとなりました。音質も優秀です。
・ブルックナー:交響曲第9番ニ短調 WAB109(第4楽章補筆完成版) [82:18]
第1楽章:Feierlich: Misterioso [24:02]
第2楽章:Scherzo: Bewegt,lebhaft [10:59]
第3楽章:Adagio: Langsam [24:34]
第4楽章:Finale: Misterioso, nicht schnell [22:43]
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
サイモン・ラトル(指揮)
録音:2012年2月、ベルリン、フィルハーモニーでのライヴ
DISC1
M-1 交響曲第9番 第1楽章:荘厳に、神秘的に
M-2 交響曲第9番 第2楽章:スケルツォ
DISC2
M-1 交響曲第9番 第3楽章:アダージョ
M-2 交響曲第9番 第4楽章:フィナーレ