SKRYU
SKRYUメジャー1st『ザ・ライト』完成記念インタビュー前編! “光の速さ”で完成。笑いも苦悩も詰まったアルバム誕生秘話!
――いよいよアルバムが完成しました。今回の制作はどうでしたか?
SKRYU:これまでで一番急ピッチでした。前から練っていた曲も多少ありますけど、約1か月半で11曲。『ザ・ライト』というタイトルにふさわしく、光の速さで作った一枚ですね(笑)。それは後付けですけど(笑)。
――本格的に制作を始めたのは、いつ頃だったんですか?
SKRYU:3月末に『絶』ツアーが終わって、疲れたし、喉もやられてたんで、実家に戻って休んでいたんです。当初は1か月くらい休めると聞いていたのに、2週間でスタッフがザワザワし始めて、現場に戻されました(笑)。今回はCDも出すから配信より早く納品しなきゃいけないんですけど、それが完全に頭から抜けていて。インディーぼけ、配信リリース慣れですね(笑)。
―― “メジャー1stフルアルバム”へのプレッシャーはありましたか?
SKRYU:めっちゃありました。でも、作ることに必死すぎてコンセプトとかを考える余裕はなかったですね。ゲトったトラックに対して、その都度、100%の瞬間最大風速を叩き出す感じでした。前作の『絶』は、メインディッシュだけを集めたような作品をめざしたんですけど、今回は本当にいろんなものが入っている。いい意味で、アルバムだからこそ入れられるくだらないことを言っている曲もあります。
――副菜やデザートもある、みたいな?
SKRYU:そうです。お漬物もあったり、サラダもあったりする。それがピリッと効いてる感じもするし、自分がやれるスタイルを全部詰め込めたと思うぐらいジャンルの幅も広い。自分が一番たどり着きたかったフルアルバムの形になったんじゃないかと思います。
――今回は自分のどんな部分を更新したいと考えていましたか?
SKRYU:特に意識したのはレコーディングの時の歌い方です。以前はピッチが当たっていて大きい声で録れていればOKだと思っていたんですよ。でも、例えば「キラキラ・ドッパミン・ジュッジュワー」のBメロでは、少し力を抜いて、声を小さめにして息を混ぜた歌い方をやってみた。録った音源を聴き直すと結構いろんな声色を使ってるし、声に表情をつけられたと思います。あと、ラッパーと言えど、いろんな土俵で戦えるようにメロディーの雑味を取って精巧に作ることも意識しました。
――アルバム制作は、どの曲から始まったんですか?
SKRYU:確か最初にできたのが「ハヤスギテミエナイ (feat. サーヤ)」です。デモの段階で「絶対これはサーヤさんだ」と思って少し寝かせておいたんですよ。いつも僕はメロディーラインから作るんですけど、今回はもらったビートが渋滞していて。一旦メロディーラインをババババッと宇宙語で乗せたものが7、8曲溜まっている状態でした。
――それらを同時進行で作っていったんですか?
SKRYU:そうです。だから、これまでと全然違いました。これまでは1つのビートに対して9割程まで作り上げて、レコーディングの前後に少しアレンジするぐらい。一曲完成させてから次へ進んでいたんです。ただ、そのやり方だと、納得する歌詞が書けなかった日は何も進捗がないんですよ。今回は少しでも何かが進んでいないとメンタル的にヤバかったので(笑)。振り返ってみても、やっぱり1か月半で11曲は驚異のスピードですよ。「俺、できるじゃん!」って思いました(笑)。
――作りながらアルバムの全体像は見えてきましたか?
SKRYU:全体像は最後まで見えなかったですね。1つずつピースを作って、最後に集めた感じ。ただ、タイトルをカタカナで統一することだけは最初から決めていました。
――なぜカタカナで統一したんですか?
SKRYU:今年3月頃にZeebraさんがXで、海外アーティストの名前や作品名が、日本の配信サイトではなぜカタカナ表記になるんだろう、みたいなことを言っていて。実際、僕もCommonのアルバムをApple Musicで見たら、曲名が全部カタカナになっていたんですよ。じゃあ、それを逆手に取ってやってみようと(笑)。ヘンに和訳されたようなカタカナ表記が逆に日本人っぽいなと思って、英語も日本語も全部カタカナにしちゃえって(笑)。前回の『絶』では全曲のタイトルに「絶」という漢字を入れたし、メジャーデビューしてから自分で縛りを作って首を絞めてます(笑)。
――ハウスやラテンなど、さまざまなジャンルの要素を取り入れています。曲調やサウンド面では、どんな方向をめざしましたか?
SKRYU:基本的には“踊らせたい”なので、ハイテンポでダンサブルな感じです。「ハヤスギテミエナイ(feat. サーヤ)」も「キラキラ・ドッパミン・ジュッジュワー」も「ウォーター・メロン」も踊れるし、「グラスヲカカゲテ」もジャージークラブではあるけど、いつものSKRYUスタイルの延長。「ゼクシィ・ガール」と「カップリング」は若干変化球って感じですね。
――ぴあアリーナMMの景色を思い浮かべてトラックを選んだ部分はありますか? SKRYU:ぴあアリーナを想像して作った曲はないですね。幕張メッセのときは、会場に向けて歌おうと思って「Laser」を作ったんですけど、今回はそういうことを考える暇もないぐらい光の速さで作っていたので。ただ、今考えると、大きな会場で映える曲はいっぱいありますね。特に「マッパ・ノ・オウサマ」は、このアルバムで僕が一番好きな曲です。「こいつはヒップホップシーンのどこにいるんだ!?」と思われるような立ち回りを自ら選んで来た僕が、ぴあアリーナを沸かすっていう。
――自分のやり方でここまで来たことを示す曲ですよね。
SKRYU:そう。ぴあアリーナに対するマインドでいうと、一番たぎるというか、ステージで一番感情が高ぶる曲になると思います。
――今回のアルバムは、最初に現在の成功や華やかさを描き、最後は葛藤を抱えた自分のスタート地点に戻っていく流れに感じました。曲順はどのように考えたんですか?
SKRYU:結構、そんな感じにしました。人生を朝から夜に例えた感じというか、時間の流れを意識していて。最初は「俺は走り続けていて、今すごい勢いがあるぞ」と盛り上げて、4曲目の「ウォーター・メロン」までは朝から昼。そこから「カップリング」で夜の帳がおりて、「マッパ・ノ・オウサマ」で夜が深まり、「ウルフ・マン」で真夜中になる。「ゼクシィ・ガール」は、結婚したいという曲で、別にそういう相手がいるわけじゃないんですけど(笑)、流れとしては素敵な女性に出会って結婚した。そのあと「イッツ・ア・ニューデイ (feat. MONKEY MAJIK)」で、また新しい朝を迎えるんです。
――終盤の流れは?
SKRYU:「グラスヲカカゲテ」はエモすぎる曲だから、終盤に絶対入れたいと思っていたんです。これは“宴もたけなわ”になる前の乾杯だと思っていて。でも、僕はエモいまま終わりたくないんですよ。照れ隠しですけど、最後にワッショイみたいな曲があったほうが、逆にエモさが増すと思っていて、それが「イレブン・バック」です。
――「イレブン・バック」は、制作や成功の重圧に押し潰されそうになっても、初期衝動を取り戻し、逆境をひっくり返そうとする曲です。弱い立場からの大逆転を描いている。
SKRYU:この曲は、ラッパーSKRYUが誕生した地である愛媛県のサッカーチーム、愛媛FCに贈った応援歌なんです。去年も、愛媛FCに「Dancing in the dark (feat. SKRYU)」という曲を書いたんですけど、そのあとJ3に落ちちゃって、SNSで疫病神扱いされて(笑)。鼓舞できる曲を書けなかったから申し訳ないと思い、今年は本当にみんなの背中を叩く曲を作ろうと。
――サッカーということで、タイトルに「イレブン」を入れたんですか?
SKRYU:そうです。そこから、トランプの大富豪で革命を起こす“イレブン・バック”が降りてきて。リリックに入れた《バック・トゥ・ワンダー》というフレーズには、あの頃の気持ちを思い出すとか、ワクワクを取り戻すという意味があって、それは僕自身にもめっちゃ言えることだなと思ったんです。夢を前にして、「歌詞が書けない」とか「忙しさに負けちゃう」なんて言っていられない。昔の自分が見たら、すげえ悲しむぞ、頑張れよっていう、自分を鼓舞する歌でもあるんです。
――アルバムタイトルの『ザ・ライト』は、どんな思いから付けたんですか?
SKRYU:『絶』ツアーの千秋楽で、ぴあアリーナ2DAYSを発表することになっていたから、先にそっちのタイトルを「The Light」と決めたんです。
――『絶』ツアーのMCで、「俺を光らせてくれているのはみんなだと気づいた」と話していましたよね。そこから生まれた言葉なんですか?
SKRYU:まさにそれです。MCで話したことが頭に残っていて、千秋楽が終わったあと、会場ロビーに張り出した大きなポスターに「君が俺の光」と直筆で書いたんですよ。パッと思いつきで書いたし、別にアルバムタイトルは変えてもよかったんですけど、「ザ・ライト」のままでいいんだろうなって。タイトルの後ろには“You are the light”が隠れているというか、自分を光らせるのはあなたたちだ、という思いがアルバムタイトルにも繋がってるんです。
――今回のアルバムには、スターとして光を放つSKRYUと、その光を維持するために走り続ける一人の人間の苦悩や葛藤が描かれています。それは意図したものですか?
SKRYU:闇があるから光がある、という単純なことですけど、確かに今回は煌びやかな曲がある一方、産みの苦しみを書いた曲もむちゃくちゃ多くて。切羽詰まったときに出てくる歌詞が産みの苦しみというのは、あまりにも素直過ぎるんですけど(笑)、このスパンでアルバムを作らなきゃいけないし、周囲から「作れる」と期待もされている。それってメジャーアーティストだからこそ味わえることかもしれないし、だったら産みの苦しみを歌うことも1周回ってスターの証なんじゃねえか?と思って、吹っ切れたところはありますね。あと、今回は「光」という言葉を歌詞にめっちゃ入れてるんですよ。
――《流れ星》《スポットライト》《朝日》《夜明け》など、光を連想する言葉も数多く登場します。
SKRYU:意識していないものも多いですけど、あとから「この曲にも“光”って入れてるわ」と気づきました。「グラスヲカカゲテ」の《ヒカリデミタシテ》も、もともとは「光を探して」だったんですよ。闇のなかにいる俺が産みの苦しみを歌う曲になっていて、「こんな辛気くさい曲、聴いてらんねえ」と思って逆の言葉にしたんです。けど、それぐらい無意識に光を追い求めているということは、ちょっと怖いです。それだけ暗闇にいるということだから(笑)。
――光が強いほど、影が濃くなるといいますから。それだけ大きなスターになったということかもしれません。
SKRYU:そう思いたいですけどね。今回アルバムを作りながら、より強いスポットライトを浴びるためには、飲み込まなきゃいけない、乗り越えなきゃいけない闇があるんだなって実感しました。でも、夢って呪いみたいなところもあるじゃないですか。大きなステージをめざして走り続けて、いつ止まればいいんだろうって。ずっと闇なんじゃないかという怖さもちょっと感じました。
――今年9月3日で30歳を迎えます。30代に入ることをどのように捉えていますか?
SKRYU:僕が考える本当のスーパースターは、かつてすごかった人ではなくて、死ぬまで常に光り輝いている人なんですよ。僕は40歳、50歳になっても超スーパースターでいたいし、30代が一番モテると思っているので(笑)、一番楽しみです。早く30歳になりたい。30歳の俺を早く奏でたいです。
――本作には、《無冠の帝王》や《キング・オブ・ミュージック》という歌詞が登場します。音楽の王とは、どんな姿ですか?
SKRYU:今はタイトルも賞も獲っていないから《無冠の帝王》と書いたんです。29歳でワーナーに入ったときは、目標を聞かれても「僕を知らない人を減らすことです」と答えていて、漠然としていたんですよ。でも、これからははっきりした目標を口にしていかなきゃいけないと思っていて。だから、ここで言っちゃいます。3年以内に国立競技場に立ちたい! MUSIC AWARDS JAPAN、紅白、レコ大……想像できるタイトルも3年以内に獲って、「これがキング・オブ・ミュージックだ」という曲を書きたいですね。
――あと3年ということは33歳までに実現したいと。
SKRYU:そうです。世界のナベアツさんに、3の倍数と3がつく数字のときにアホになるネタがあるじゃないですか。30から39までずっとアホになるところが一番のクライマックスですけど、30代って公私ともに、いろいろ現実的な問題を考える年代だと思うんです。そこで30から39までアホになるんですよ?(笑) 俺、マジでこれからの10年、人生で一番アホになってやろうと思っていて。最もバカになれる33歳ですべての層を総なめにしてやろうと思ってます。
――最後に、ぴあアリーナMMでの 2公演は、どんな内容になりそうですか?
SKRYU:8月29日の「PINK -Moonlight Paradise-」は“with Secret Guests”と書いてある通り、客演もりもりで、むちゃくちゃエキサイティングなライブになります。30日の「SEPIA -Midnight Rendezvous-」は、去年、幕張メッセをほぼ1人でやり抜いた経験を活かして、僕自身を深く見せるステージになると思います。客演を交えたステージも、1人で立つステージも、どちらも成立させられることが僕の強みだと思っているので、敢えて内容を変えることにしたんです。
――セットリストも変わるんですか?
SKRYU:1日30曲弱を歌唱する予定で、2日間でかぶる曲が一曲もないんですよ! そこが一番のポイント。どちらが強いかわからないくらい、どっちも贅沢なセトリになっているので、両方観ないと「あの曲、聴けなかったじゃん!」ということになると思います。
――ライブに向けて、プレッシャーと楽しみは、どんな割合ですか?
SKRYU:半々ですね。いや、楽しみしかないかも。どうひっくり返っても、ワンマンはむちゃくちゃ盛り上がるし、僕のことを好きなお客さんと同じ空間を一緒に楽しめることはご褒美だと思っているので。そのために日々、産みの苦しみを味わっていると考えると、ライブで回復させてもらってるんですよね。だからプレッシャーでナイーブになるのは、もったいないし、僕のお客さんはすごくいい人たちなので「僕もライブで元気させてもらいまーす」という感じ。2日間、どちらに来ても面白いと思うし、両方来たらさらにディープにSKRYUを楽しめると思います!
インタビュー・文/猪又 孝