島爺
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SymaG 10th Anniversary 10周年感謝祭「百歌老乱 -はじまりはじまり-」ライブレポート
2021.9.17
「何も出来なくても、意味や価値などなくてもいい。そこに存在してるだけで尊い」
島爺が10周年当日に披露した、観客に熱く歌い伝えた魂の弾き語り
2021年9月14日。この日は島爺にとって特別な一日だった。
大阪、梅田にあるライブハウス、バナナホールのステージに現れた島爺は、客席に向かってぺこっとお辞儀をし、舞台中央に設置された小さな畳の上のセットに座り、
アコギを持って弾き語り始めた。最初の歌は、「生爺のテーマ」。
自らかき鳴らすアコギのソリッドな音とともに、その歌声から放たれる力強い魂の叫びが場内いっぱいに響き渡る。
「島爺10周年感謝祭、『百歌老乱~はじまりはじまり~』にようこそおいでくださいました」
この日は歌い手/シンガーソングライター、
島爺の活動10周年目当日となる、記念すべき一日。その大切な節目のライブをバンド形式で華々しく祝うのではなく、
お孫さん(ファン)たちとダイレクトに対峙する”弾き語り”という形で届けることを、彼は選んだ。
「緊急事態宣言が出ている中、もどかしいところもありつつ、皆さんとこうやってコミュニケーションをとらせてもらえるのがありがたいな、と思っています。
10周年もそうですけど、前回バナナホールで演奏したのが4年前というのもえぐいな、と(笑)」
10周年ライブらしい思い出話を交えつつ、すべてのミュージシャンと音楽ファンが突きつけられているシビアな現実について、島爺はジョークを散りばめながらMCを続ける。
「最初に歌った曲は、2018年の弾き語りイベントのテーマソングとして作った「生爺のテーマ」。弾き語りをするたびに毎回歌う、という曲です」
この日、取材用に手渡されたセットリストには、1曲ごとに「MC」の文字が印刷されていた。客席とステージの距離も近い”弾き語り”だからこそ、歌い終わる毎に、
目の前の観客と会話をするように、曲に込めた感情や10年分の気持ちを伝えたい。「生爺のテーマ」について楽しそうに話す島爺を見て、
「MC」の文字には彼のそんな思いが込められているような気がした。
「歌い手として、歌うばかりで作詞作曲から遠ざかっていたけれど、この曲をきっかけに自分でも曲を作り始めました」
そう言って披露されたのは、「もいちど」。一度は音楽の道を諦めかけた島爺が、ソングライターとして再出発することを決めた決意の歌だ。失望や挫折。
それでも諦めずに希望を託す。それは、先が見えない状況の中にいる全ての人たちへのエールのように響く。
「歌ってみたを趣味で始めてみたことで、もう一度音楽活動に専念するようになった。(音楽を)諦めたつもりではおったんですが、
もっかいやるかぁってなった心境をそのまま、曲にしました。フォークソングを作ってみたいなと思ってた時期に作った、”なかなかいい感じにできたんじゃないかな”という曲です」
歌い終わったばかりの「もいちど」に込めた思いを、島爺は客席に向かってそう話す。
「今日、チケットに特典のCDがついてたと思うんですけど、歌詞が納期の問題でついてないので、後ほどブログかツイッターに載せます(笑)」
そう言って披露されたのは、今回のツアーのテーマ曲「雨唄」。
タイトル通り、雨音が軽く弾け落ちるような、スキップみたいに心地よく跳ねたリズムを掻き鳴らすギターと、気の置けない友に語りかけるような温かな歌声が響く。
この日は昼公演と夜公演の2部構成ということもあり、限られた時間の中、出来るだけみんなが聞きたい曲を披露したい、という思いがあったと島爺は言う。
「曲はボカロ曲をいっぱい歌おうと思ったけど、時間の都合上、メドレーで披露します。メドレーって曲と曲が繋がってるっていうイメージやけど、
そうじゃないので、適当に、終わったなと思ったら拍手をしてください(笑)」
メドレーとして最初に披露されたのは、「ブリキノダンス」のサビ部分。ピッチは早いまま、ギターを性急にかき鳴らして歌う島爺に負けじと、観客も手拍子で応える。
手拍子の中で始まった「ラットが死んだ」に続き、「生命線」、アコギだけだからこそエモーショナルな歌声が際立っていた「Mの心像」、
優しさと激しさが弾け合う「エンドロールに髑髏は咲く」と、豪華な曲たちが響き渡る場内には静かな熱気が漂う。
しかしメドレー披露後、ある事実が発覚。実はこの日、昼公演と夜公演ではメドレーの内容が異なっていたのだが、昼公演に披露されたのはなんと、夜公演用のメドレー。
しかも、スタッフ以外気づかないのに、正直に間違いを申告する島爺。お孫さんたちのマスクの下はきっと笑顔だったはずだ。
気を取り直し、メドレー曲ひとつひとつを解説しながら、ボカロ曲との出会いが、自分の”今”を作ってくれた原点だと島爺は言う。
「「ブリキノダンス」という曲抜きでは僕の人生は語れない。この曲がないと今の僕はない。死ぬまでお供しようかなと思ってます(笑)。
「ラットが死んだ」は、いい曲やけどあまり知られてない曲を歌う、という活動の方針が決まった分岐点の曲。「生命線」は、弾き語りの時はだいたい歌ってる”いい曲”。
「Mの心像」は、俺はロックな曲しか歌えないと思ってたけど、もしやこういう曲も歌えるのでは?と思った最初の曲。
試しに親父にも聴かせたら褒められたので、これはうまくなったのでは?と心が躍った覚えがある。
「エンドロールに髑髏は咲く」は、こういう曲も歌えるようになったのでは?と思った第2弾(笑)。名作やなと自分でも思える、もっと評価されるべきやと思う曲です」
メドレーの後は、「心を物理的に殴られる感じがした。やり場のない、どこにも持って行きようのない気持ちを形にできている曲やなと思う」という
「ままならない人生」と、「タイアップという機会じゃないと作れないなと思う、最たる曲」という、ニューアルバム『御ノ字』収録の「不可避」を披露。
感情を揺さぶるエモーショナルな歌声とドラマティックなメロディが溢れ出すステージを、誰もが食い入るように見つめている。
「10周年感謝祭、来てくれてありがとうございました。10年間、悩むことも、失敗することも多々ありました。次から次へと出てくる、
”歌ってみた”に打ちのめされることもありますけどね。ハラスメントとかいじめとかいろいろありますけど、一番あかんのは、無自覚に自分で自分をいじめることやと思う。
自分の思い描いてる理想を自分に押し付けて、こうじゃないといかん、ってしばりつけて疲弊していく。誰でもそういうところ、多少なりともあると思う。
聞こえはいいけど、向上心もドラッグみたいなものなので、持ち始めたら切りがない。上昇志向の人は、そうじゃない人を見下し始めたりもする。
だらしなくても、クズでもだらしなくても、足手まといでもいいしね(笑)。何も出来なくても生きててええので。そこらへんを他人にとやかく言われる筋合いはないのでね。
生きてる意味とか価値とかやなく、そこに存在してるだけでも尊いものでもありますから。そこが基本やから。もうちょっと、図々しく、たくましく生きていってください」
10周年の感謝の言葉は、島爺自身が経験した多くの挫折や失望の中で手に入れた言葉、だった。その言葉を象徴するように最後に披露されたのは、
「なんで生きてたんだろうってすげえ思うんだ」。
<死にたくなったら笑おうぜ/まだ嘘でもいいから>
弾き語りという、歌声とその魂をダイレクトに感じることが出来る空間で、しがみつくように生きようと歌う島爺。客席の中、
何度も何度も、あふれる涙をハンカチで押さえている女性の姿があった。
10年前。歌うことを諦めなかった自分へのプライド。支えてくれたファンへの思い。”今”へとつながる全てをギミックなく届けるため、
島爺は10周年という節目を、ただその歌声だけを武器にした「弾き語り」という形で届けることを選んだのだろう。
始まりは”歌”だった。そして”歌”からまた、次の10年が始まる。
(SymaG 10th Anniversary 10周年感謝祭「百歌老乱 -はじまりはじまり-」昼公演より)
SymaG 10th Anniversary
10周年感謝祭「百歌老乱 -はじまりはじまり-」
<公演日>
2021年9月14日(火)※弾き語りライブ
【昼公演】開場:16:30 開演:17:00
【夜公演】開場:19:00 開演:19:30
<会場>
LIVE HOUSE バナナホール(大阪)
ライター 早川加奈子
写真 ハヤシマコ
■SymaG 10th Anniversary 「挙句ノ宴 -リベン爺-」追加公演(沖縄公演)
2021年10月9日(土)
桜坂セントラル【バンド】
【昼公演】開場:15:00 開演:15:30
【夜公演】開場:18:00 開演:18:30
指定 ¥5,000(税込 ドリンク代別)
9/20(月・祝) 12:00~開始
https://l-tike.com/symag10th1009/
2021年10月10日(日)
ガンガラーの谷 CAVE CAFE【弾き語り】
18時開演予定
自由 ¥4,000(税込 ドリンク代別)
先着受付
https://l-tike.com/symag10th1010live/
島爺が10周年当日に披露した、観客に熱く歌い伝えた魂の弾き語り
2021年9月14日。この日は島爺にとって特別な一日だった。
大阪、梅田にあるライブハウス、バナナホールのステージに現れた島爺は、客席に向かってぺこっとお辞儀をし、舞台中央に設置された小さな畳の上のセットに座り、
アコギを持って弾き語り始めた。最初の歌は、「生爺のテーマ」。
自らかき鳴らすアコギのソリッドな音とともに、その歌声から放たれる力強い魂の叫びが場内いっぱいに響き渡る。
「島爺10周年感謝祭、『百歌老乱~はじまりはじまり~』にようこそおいでくださいました」
この日は歌い手/シンガーソングライター、
島爺の活動10周年目当日となる、記念すべき一日。その大切な節目のライブをバンド形式で華々しく祝うのではなく、
お孫さん(ファン)たちとダイレクトに対峙する”弾き語り”という形で届けることを、彼は選んだ。
「緊急事態宣言が出ている中、もどかしいところもありつつ、皆さんとこうやってコミュニケーションをとらせてもらえるのがありがたいな、と思っています。
10周年もそうですけど、前回バナナホールで演奏したのが4年前というのもえぐいな、と(笑)」
10周年ライブらしい思い出話を交えつつ、すべてのミュージシャンと音楽ファンが突きつけられているシビアな現実について、島爺はジョークを散りばめながらMCを続ける。
「最初に歌った曲は、2018年の弾き語りイベントのテーマソングとして作った「生爺のテーマ」。弾き語りをするたびに毎回歌う、という曲です」
この日、取材用に手渡されたセットリストには、1曲ごとに「MC」の文字が印刷されていた。客席とステージの距離も近い”弾き語り”だからこそ、歌い終わる毎に、
目の前の観客と会話をするように、曲に込めた感情や10年分の気持ちを伝えたい。「生爺のテーマ」について楽しそうに話す島爺を見て、
「MC」の文字には彼のそんな思いが込められているような気がした。
「歌い手として、歌うばかりで作詞作曲から遠ざかっていたけれど、この曲をきっかけに自分でも曲を作り始めました」
そう言って披露されたのは、「もいちど」。一度は音楽の道を諦めかけた島爺が、ソングライターとして再出発することを決めた決意の歌だ。失望や挫折。
それでも諦めずに希望を託す。それは、先が見えない状況の中にいる全ての人たちへのエールのように響く。
「歌ってみたを趣味で始めてみたことで、もう一度音楽活動に専念するようになった。(音楽を)諦めたつもりではおったんですが、
もっかいやるかぁってなった心境をそのまま、曲にしました。フォークソングを作ってみたいなと思ってた時期に作った、”なかなかいい感じにできたんじゃないかな”という曲です」
歌い終わったばかりの「もいちど」に込めた思いを、島爺は客席に向かってそう話す。
「今日、チケットに特典のCDがついてたと思うんですけど、歌詞が納期の問題でついてないので、後ほどブログかツイッターに載せます(笑)」
そう言って披露されたのは、今回のツアーのテーマ曲「雨唄」。
タイトル通り、雨音が軽く弾け落ちるような、スキップみたいに心地よく跳ねたリズムを掻き鳴らすギターと、気の置けない友に語りかけるような温かな歌声が響く。
この日は昼公演と夜公演の2部構成ということもあり、限られた時間の中、出来るだけみんなが聞きたい曲を披露したい、という思いがあったと島爺は言う。
「曲はボカロ曲をいっぱい歌おうと思ったけど、時間の都合上、メドレーで披露します。メドレーって曲と曲が繋がってるっていうイメージやけど、
そうじゃないので、適当に、終わったなと思ったら拍手をしてください(笑)」
メドレーとして最初に披露されたのは、「ブリキノダンス」のサビ部分。ピッチは早いまま、ギターを性急にかき鳴らして歌う島爺に負けじと、観客も手拍子で応える。
手拍子の中で始まった「ラットが死んだ」に続き、「生命線」、アコギだけだからこそエモーショナルな歌声が際立っていた「Mの心像」、
優しさと激しさが弾け合う「エンドロールに髑髏は咲く」と、豪華な曲たちが響き渡る場内には静かな熱気が漂う。
しかしメドレー披露後、ある事実が発覚。実はこの日、昼公演と夜公演ではメドレーの内容が異なっていたのだが、昼公演に披露されたのはなんと、夜公演用のメドレー。
しかも、スタッフ以外気づかないのに、正直に間違いを申告する島爺。お孫さんたちのマスクの下はきっと笑顔だったはずだ。
気を取り直し、メドレー曲ひとつひとつを解説しながら、ボカロ曲との出会いが、自分の”今”を作ってくれた原点だと島爺は言う。
「「ブリキノダンス」という曲抜きでは僕の人生は語れない。この曲がないと今の僕はない。死ぬまでお供しようかなと思ってます(笑)。
「ラットが死んだ」は、いい曲やけどあまり知られてない曲を歌う、という活動の方針が決まった分岐点の曲。「生命線」は、弾き語りの時はだいたい歌ってる”いい曲”。
「Mの心像」は、俺はロックな曲しか歌えないと思ってたけど、もしやこういう曲も歌えるのでは?と思った最初の曲。
試しに親父にも聴かせたら褒められたので、これはうまくなったのでは?と心が躍った覚えがある。
「エンドロールに髑髏は咲く」は、こういう曲も歌えるようになったのでは?と思った第2弾(笑)。名作やなと自分でも思える、もっと評価されるべきやと思う曲です」
メドレーの後は、「心を物理的に殴られる感じがした。やり場のない、どこにも持って行きようのない気持ちを形にできている曲やなと思う」という
「ままならない人生」と、「タイアップという機会じゃないと作れないなと思う、最たる曲」という、ニューアルバム『御ノ字』収録の「不可避」を披露。
感情を揺さぶるエモーショナルな歌声とドラマティックなメロディが溢れ出すステージを、誰もが食い入るように見つめている。
「10周年感謝祭、来てくれてありがとうございました。10年間、悩むことも、失敗することも多々ありました。次から次へと出てくる、
”歌ってみた”に打ちのめされることもありますけどね。ハラスメントとかいじめとかいろいろありますけど、一番あかんのは、無自覚に自分で自分をいじめることやと思う。
自分の思い描いてる理想を自分に押し付けて、こうじゃないといかん、ってしばりつけて疲弊していく。誰でもそういうところ、多少なりともあると思う。
聞こえはいいけど、向上心もドラッグみたいなものなので、持ち始めたら切りがない。上昇志向の人は、そうじゃない人を見下し始めたりもする。
だらしなくても、クズでもだらしなくても、足手まといでもいいしね(笑)。何も出来なくても生きててええので。そこらへんを他人にとやかく言われる筋合いはないのでね。
生きてる意味とか価値とかやなく、そこに存在してるだけでも尊いものでもありますから。そこが基本やから。もうちょっと、図々しく、たくましく生きていってください」
10周年の感謝の言葉は、島爺自身が経験した多くの挫折や失望の中で手に入れた言葉、だった。その言葉を象徴するように最後に披露されたのは、
「なんで生きてたんだろうってすげえ思うんだ」。
<死にたくなったら笑おうぜ/まだ嘘でもいいから>
弾き語りという、歌声とその魂をダイレクトに感じることが出来る空間で、しがみつくように生きようと歌う島爺。客席の中、
何度も何度も、あふれる涙をハンカチで押さえている女性の姿があった。
10年前。歌うことを諦めなかった自分へのプライド。支えてくれたファンへの思い。”今”へとつながる全てをギミックなく届けるため、
島爺は10周年という節目を、ただその歌声だけを武器にした「弾き語り」という形で届けることを選んだのだろう。
始まりは”歌”だった。そして”歌”からまた、次の10年が始まる。
(SymaG 10th Anniversary 10周年感謝祭「百歌老乱 -はじまりはじまり-」昼公演より)
SymaG 10th Anniversary
10周年感謝祭「百歌老乱 -はじまりはじまり-」
<公演日>
2021年9月14日(火)※弾き語りライブ
【昼公演】開場:16:30 開演:17:00
【夜公演】開場:19:00 開演:19:30
<会場>
LIVE HOUSE バナナホール(大阪)
ライター 早川加奈子
写真 ハヤシマコ
■SymaG 10th Anniversary 「挙句ノ宴 -リベン爺-」追加公演(沖縄公演)
2021年10月9日(土)
桜坂セントラル【バンド】
【昼公演】開場:15:00 開演:15:30
【夜公演】開場:18:00 開演:18:30
指定 ¥5,000(税込 ドリンク代別)
9/20(月・祝) 12:00~開始
https://l-tike.com/symag10th1009/
2021年10月10日(日)
ガンガラーの谷 CAVE CAFE【弾き語り】
18時開演予定
自由 ¥4,000(税込 ドリンク代別)
先着受付
https://l-tike.com/symag10th1010live/