ZAZザーズ

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ショウケースライブ@パリのオフィシャルレポート【完全版】!

2014.12.3

11月15日にフランス・パリのMaison de la Radioで行ったショウケースライブの完全盤レポートが到着しました!

ZAZ live at Radio France 15 November 2014

 2012年来日して、日本でもファンの心を獲得し話題を呼んだザーズ。本国フランスのラジオ局、ラジオ・フランスのパリのスタジオで11月15日土曜日、一般の観客を迎え新作『ZAZ(ザーズ)~私のパリ~』の生演奏で披露してくれた。800人を収容するラジオ番組収録の為の小箱コンサート・ホール形式のスタジオは、フランスのファンの熱気で一杯だった。

 ラジオ局の司会者の紹介に迎えられ、9時を回ったころにメンバーを引き連れてザーズがステージに現れた。「パリの空の下」でスタート、新作からの曲を立て続けに歌った。「いつものパリ」「パリの手紙」「私の心のパリ」「モンマルトルの丘」「5月のパリが好き」「パリの午後」・・・・。パリという街が、いかに多くのミュージシャンを触発したのか、そして名曲を生み出すインスピレーションとして愛され続けて来たのか痛感させられた。どの曲もそれを異なる形で表現している。そして更にそれらの曲を、ザーズが彼女なりの感覚で21世紀に甦らせた。

 ギター、ドラムス、ダブルベース、アコーディオンとピアノという5人組みのバック・バンドを核に、曲に合わせてブラス・セクションや黒人コーラス、弦楽四重奏やハーモニカが加わるという形を取った。前半は彼女のヴォーカルをほぼアカペラに近い形で聞かせるアレンジで、生音を生かした形でのバンドの演奏だった。例えば「いつものパリ」はディキシー・ランド・ジャズ風のアレンジが特徴、サックス、トレンペット、クラリネットが陽気なメロディーを放った。「私の心のパリ」や「モンマルトルの丘」ではアコーディオンが登場、ギターとクラリネットのソロに合わせて、軽くダンスのステップを踏みながら歌うザーズ。会場から感激したファンの掛け声があがった。「パリのロマンス」では黒人男性シンガーが登場してむつまじくデュエットした。「パリ野郎」ではハーモニカ奏者が登場し、熱の入ったソロを披露してくれた。この曲はエレクトリック・ギターとハーモニカの掛け合いによる、ブルース色の強烈な曲、力強いザーズのヴォーカルが映えた。シャンソンで大衆の心をつかんだザーズ、初期の頃はブルースを経験したというだけに、パフォーマンスを見ていぁ・・と、このあたりの彼女の音楽基盤があるように思えた。
続く「Si」はフランスの人気シンガー、ジャン・ジャック・ゴールドマンの曲のカヴァー、前作アルバム『Recto Verso』からの選曲だ。その後に続いた2010年にリリースされたデビュー・アルバムからの曲「Éblouie par la nui」。この2曲はこの日の選曲の中では珍しいバラードで、高らかにうたうザーズの声に観客は酔いしれた。これに対して「二つの愛」は6人組の男性バッキング・ヴォーカルを加えた、ラテン色の強いナンバーだ。ステージあちこちを徘徊しながら楽しそうに歌うザーズ。シンプルな膝丈ドレスにブーツ姿という着こなしが、彼女の音楽の複合性とモダンさを象徴しているかのようだった。

 コンサートも一息ついたところで、ステージに司会者が再登場。左手の檀上に設けられたソファーに座って、ザーズに短いインタビューをした。ラジオ番組ならではの企画だ。主催したフランス・ブルはローカル局を結ぶネットワークで、2001年に設立された比較的新しい放送網。インターネットやペイチャンネルの出現で今や地上波テレビでさえ危うい状況に直面している現在、こうやってラジオがコミュニティーの中で重要な位置を占め活躍しているからこそ、リスナーに支えられ今回のコンサートも実現したはず。フランスのジャズ文化とラジオ文化の重みを痛感した。
 後半はステージにビッグ・バンドが登場し、フィナーレに突入した。黒のラメのイヴィニング・ドレスに着替えてザーズが再登場。「私の心のパリ」のビッグ・バンド・ヴァージョンを披露した。開場は歓声とともに、ビートを刻む拍手が沸き起こった。そして次はフランスの第二の国家?と言いたくなるあの曲「シャンゼリゼ」。誰もが歌い、拍手し、会場は愛国心で満たされた。外国人としてはそんな瞬間を分かち合える貴重な体験だった。そしてしめくくりは「I live Paris」のアカペラ版。観客の拍手と彼女の声で幕が下りた。

 2010年のデビューでフランスでは一躍記脚光を浴び、その人気はヨーロッパ全土に波紋した。チェコ、スイス、ベルギー、ドイツ、ポーランド、オーストリアでゴールド・ディスクやプラチナ・ディスクを獲得している。昨年リリースされたセカンド・アルバムで、その人気は確固なものに。フランスではあの元ジョニー・デップ夫人、バネッサ・パラディの強力ライバルとして君臨するまでになった。彼女を語るとき、エディット・ピアフやモーリス・シェヴァリエがひきあいに出されるが、それは現代っ子である彼女が、フランスの心を忘れずにシャンソンやブルースやジャズが融合したオリジナルな音楽をやっているからだろう。

アメリカや日本同様、ジャズを愛する国フランス。20年代にジャズがこの国に到来して以来、フランス文化の一部として浸透したが、この日のザーズの観客はそれを物語っているようだった。80歳代と思われる老夫婦、若い女性、小学生の子供をつれた若い家族など、まさにフランス国民の縮図がそこにあった。古い世代がザーズの中にある昔ながらのシャンソンやジャズの要素に酔いしれる一方で、ジャズもヒップホップの区別もわからないような子供たちが真っ白な心でザーズの音楽に触れる。陽気なメロディーをきいて自分のほっぺを叩きながらコンサートを楽しむ小学生の少女がほほえましかった。(高野裕子)
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