ピアニスト・建築家のビュシュラ・カイクチャ（Büşra Kayıkçı）はイスタンブールに生まれ、9歳よりピアノ、バレエ、美術を学び、大学でインテリア建築と環境デザインを学んでいます。「建築を学んだことでアートに対する新しい視点が 得られた」というカイクチャは、ジョン・ケージやマイケル・ナイマンらの影響を受け、2019年頃から音楽創作活動を本格化させ、シングル「Doğum(トルコ語で「誕生」)」を自主リリース。続いてスケッチを描くように作られた9曲のミニマルなピアノ・ソロ曲を集めたアルバム「Eskizler(トルコ語で「スケッチ」)」をリリースしました。その後、様々なアイデンティティ、文化、宗教を持つ人々が住んでいたイスタンブール・ガラタ地区にあるファッションブランドのショールームからインスピレーションを得た「Kuledibi No. 1」を発表。ニューヨーク・バレエ・シアターとのコラボレーション、そしてニルス・フラームが提唱している「Piano Day」のコンピレーションにも曲が収録されるなど急速に認知度を上げています。

このアルバム『Places』は、前出の『Eskizler（スケッチ）』の続編となるもので、2019年初頭に書かれた最初の作曲の試みであるエチュードが元となっています。音楽の実験は、新しいプロジェクトを始める際にインテリア建築家として描くスケッチを思い起こさせ、これら2つの分野（建築と音楽）が同じ原則で成り立っていることに強く影響を受けました。建築は目に、音楽は耳に訴えるため、音楽を書く際に建築家のプロセスに従うことは避けられませんでした。建築から派生した手法を使って、音楽のテンプレートを作り上げたのです。そして、この新しいアルバム『Places』では、それらのスケッチを一歩進めたように感じています。それらが進化しているのを、ある意味で感じ取れるのです。時には、恋しく思う特定の場所を再現しようとすることもありますが、時には単に感情がテーマになることもあります。人生にとって、場所は私たちが避難する空間であり、感情もまたそうした避難所になると信じさせる瞬間があります。それらの感情は、内なる平和を守るための盾となり、私たちの頭上に屋根を提供してくれます。

【収録曲】
1.    The Middle Of…
2.    Fernweh
3.    Unrooted
4.    Deep Seated Arrogance
5.    Olive Tree
6.    Quba
7.    Old Friend
8.    Tribute To Egyptian Song
9.    L'inno
10.    Into The Woods
11.    Vác
12.    …Nowhere

【演奏】
ビュシュラ・カイクチャ（Büşra Kayıkçı）［ピアノ］

【録音】
2023年１～３月、イスタンブール