作曲家・ピアニストのビュシュラ・カイクチャ（Büşra Kayıkçı）による最新プロジェクトは、彼女のルーツであるアナトリアの古代織物の伝統に着想を得た、極めて個人的かつコンセプチュアルな作品です。彼女はこの音楽を通して、伝統的な織機とアップライトピアノを重ね合わせ、その壮大な姿と複雑な内部構造に共通するものを見出しながら、音楽と手仕事という二つの表現手段を通じて物語を紡いでいます。

「アナトリアにおいて織物は、単なる手工芸ではなく、表現のかたちだったのです」とカイクチャは語ります。「女性たちは、自分たちの人生の物語を一本一本の糸に託し、模様に織り込みました。喜びや悲しみ、希望や夢……言葉にできなかった感情を、織物として残したのです。私にとって作曲もまさに同じこと。表現の手段は違っても、私たちは皆、自分の内なる世界を何か目に見えるかたちに翻訳しているのだと思います。」

アルバムの各楽曲は、アナトリアの絨毯によく見られる象徴的なモチーフを中心に構成されています。たとえば、力や時には“敵”を意味するドラゴン、知らせや愛、幸福を象徴する鳥など。これらのシンボルは単なる装飾ではなく、深い文化的・感情的な意味を持ち、言葉では伝えきれない感情を語る“もう一つの言語”として存在しているのです。

この伝統の本質を現代の音響世界の中でより鮮明に呼び起こすために、カイクチャは繊細なピアノの旋律に実際の織機の音を融合させました。アルバムの冒頭では、織物工房で録音された実際の機織りの音が使われており、そのリズミカルで本物の響きが、彼女自身の鍵盤の動きとシンクロしながら楽曲を構成しています。

「これは単なる録音プロジェクトなのか、それとももっと深い何かなのか、正直私にもまだ分かりません」と彼女は振り返ります。「もしかすると、長く続いてきたこの伝統の中に、自分自身の“糸”を見つけ出そうとする試みなのかもしれません。ただ一つ言えるのは——この作品には、あの絨毯と同じように、個人的な何か、まだ言葉になっていない何か、音として織り上げられるのを待っている何かが確かに宿っているということです。」

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アナトリアの織物の伝統において、「チェスト（収納箱）」のモチーフは、婚期を迎えた若い女性たちの持参品を納める実際の嫁入り道具箱を表しています。このシンボルをカーペットに織り込むことで、彼女たちは自分が結婚の準備が整ったこと、持参品を用意したことを、周囲に示していたのです。

しかし私にとって、この「チェスト」は二重の意味を持っています。それは収納箱であると同時に、人間の胸部——呼吸と声の源でもある——を象徴しているのです。この繋がりは、今回の作品でさらに深まりました。というのも、この作品で私は初めて、大学時代に習い始めたアナトリアの管楽器「ネイ」を取り入れたからです。胸から生まれる息をネイに吹き込むという行為は、このモチーフの本質と深く結びついているように感じられました。

チェストは単なる準備の象徴ではなく、移行の象徴でもあります。それは旅立ちの物語でもあり、再会の喜びと同時に、故郷を離れること、根を離れることを意味しています。これを思うと、ルーミーの有名な詩句が心に浮かびます。「この葦笛の物語に耳を傾けよ、それは別離の物語を語る」。ネイが葦の根から引き裂かれた悲しみを嘆くように、このモチーフを織る女性もまた、結婚によって再会の期待と同時に、別れの悲しみを感じていたかもしれません。

そのような思いから、私はネイの息吹をこの作品に込めました。チェストのモチーフと結びつけることで、希望、憧れ、そして移り変わりの複雑な感情を表現したいと思ったのです。