Fieldsフィールズ

Profile

2007年の最も魅惑的なデビュー・アルバムになるかもしれない作品で、ロンドンを拠点に活動する5人組のフィールズは聴く者を酔然とさせる音楽を演奏している。去り、失われ、使われてしまったものを喚起する「EVERYTHING LAST WINTER」という美しいタイトルがついたこの作品は、サイケデリックな味付けのギターと、道に迷った小女のヴォーカルの混合に、時折輝かしいホワイト・ノイズがはじける。敢えて例えるならば、クリエイティブさの頂点に立つMy Bloody Valentineと、1970年代初期フォークの田園的要素を思い浮かべさせるとでも言おうか。モノクロであると同時に色彩豊かなこの作品は、なかなかの旅を楽しませてくれる。

フィールズには歴史がある。ヴォーカルにニック、ギターにジェイミー、ベースにマッティー・ダーハム、ドラムにヘンリー・スペンナー、そしてアイスランド生まれのソルン・アントニアがヴォーカルとキーボードという5人編成のバンドは、2005年の秋に全く違う所から・・・つまり野原から集まって結成された。ニックは10年前からあらゆるバンドに所属していたが、バンド結成直前には小学校で教鞭をとっていた。
ジェイミーも同じく1990年代はあらゆるグループに在籍していた。

18ヶ月前一緒になった時の彼らは、フィールズのサウンドの方向性がどういうものになるかは漠然としたものでしかなかった。何故なら、このバンドは全員の意見を取り入れる、民主主義なバンドだからだ。

「僕達2人はミニマル・エレクトロニック・アンビエンスからPentangleみたいなフォーク・バンドまで好きだよ」とニックは言う。

そしてしかるべしそういうサウンドになった。彼らはここイギリスだけでなく、アメリカや日本も廻るライヴ・サーキットを2006年中行い、その印象的な音を磨くと同時にバンドのビジュアル面をより強調していくようになった。

「ダブリンにある、Temple Barの下にあるスタジオでレコーディングしたんだ」とジェイミーが言う。「(元アイルランドの革命家の)Michael Collinsが一時使った事もある古い地下貯蔵室で、彼の城まで繋がる通路があるんだ。歴史深い建物なんだけど、凄くダークで、とても趣があって、圧政的な所だった。あ、それにいつもジメジメしていたね。」

太陽の光があまり入ってこなかったせいもあって情動不安になるメンバーもいたが、逆にそれによって強烈な演奏が可能になった。「EVERYTHING LAST WINTER」は3次元の作品で、そこに収録された曲は繊細で散在であると同時にクレッシェンド満載だ。囁きのようなもの静かなフォーク・リズムから始まる1曲目の”Song For The Fields”は突然音量が上がり、冒頭から2分のところでアグレッシヴなギターと男性/女性ヴォーカルのバトルが展開され、曲が終わる6分目には消耗しきった壮大な頂点へ到達する。”Feathers”も優しいフォークと独立した憎悪が完璧に一体化した曲で、臆病的なソルンの声はノイズの悪夢に飲み込まれていく。彼らはこういう事を得意とするが、その勢いでアルバムを聴いていくと最後の曲”Parasite”で驚きの展開となる。タイトルからは予想も付かないような美しい曲調だが、人間関係がゆっくりと下り坂を辿っていく歌詞には手加減など全くない為、その内容にはぎょっとさせられる。

「それは筆が進まない小説家が本を執筆するのを助けたり、金に困っている人が富を手に入れるのを手助けするというんだ」とジェイミーは言う。「そこでニックは記事を切り取って僕達にもそんな魔法的な事が起こるか試してみたんだ。でもその瞬間、マジでその瞬間だよ、それを机の上に置いた途端、スピーカーがぶっ飛んだんだ。あんなに恐ろしい事はなかったね。不気味だったよ。」

「それだけでなく、それからの24時間」とニックが付け加える。「録音にどうしても必要な5〜6台の楽器がどうしても動かなくなっていったんだ。スタジオから出しても、思うように動かなかったんだよね。本当に不思議な現象だった。」

レコーディングという狭苦しい環境とこの5人の個性的な性格によって、 「EVERTHING LAST WINTER」は普通とはちょっと違う不思議な世界とラプソディー的な豪華さが共存する作品に仕上がった。それが最も顕著なのが”Skulls and Flesh and More”という曲。アルバムに収録するにはちょっと変わった曲かもしれないが、本能的であるがゆえに、単なる血、汗と涙よりも印象的である。
フィールドが到着した。じっくり味わってもらいたい。

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