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SKRYU「絶(Zepp) Tour 2026」at KT Zepp Yokohamaライブレポート
2026.3.9
この男はラップと歌を自在に操るアトラクションマイスターか、はたまたマイクを握るパーティーオーガナイザーか。おふざけと真面目が共存したパフォーマンスで、一夜をまるごとエンタテインメントにしてしまうSKRYUの初となるZeppツアー「SKRYU 絶(Zepp) Tour 2026」が、3月4日、KT Zepp Yokohamaで幕を開けた。この日はリリースしたばかりのメジャーデビューEP『絶』を中心に、全25曲、約2時間にわたるライブを披露。MCを細かく挟みながらテンポよくステージを進行し、SKRYUらしさを余すところなく詰め込んだ、最高に楽しい夜となった。
まずはバックDJを務めるchakaがスタンバイ。「ピンクのワゴン -悶絶-」のイントロが鳴り始めた瞬間、SKRYUがゆっくりと姿を現した。「Everybody 調子はどうですか? 今日はみんなで乗り込んでくれますか!」。昭和のいかがわしいネオン街を思わせるような、真っピンクに光るDJブースをバックに、お得意の下ネタをエレクトロスウィング調のトラックに乗せたこの曲でSKRYUらしさ全開の幕開けだ。続く「Stardom」では観客が歌詞に合わせて声を上げ、「Real My House (Dance Remix)」では「Say Ho!Say KT Zepp!」のコール&レスポンスが発生。序盤からフロアが一気にひとつになっていく。
「今日は、みんなで作ってくれたこの時間、みんなのために、いや自分のためにも超絶楽しみたい」と挨拶したあとは、満員のフロアに向け、マイクを外して地声で「アァァァァー!」と絶叫。そのまま「Ahhhhhhh! -絶叫-」へとなだれ込み、新しいフロウとスポーツからの引用をちりばめたリリックで、改めて試合開始のゴングを打ち鳴らす。
その後のMCでは「こっから先は俺とお前らのデッドヒートマッチ」と観客を煽ろうとするも、「ココロ」と言いたいところで「カカラット……」と盛大に噛んでしまい、フロアが大爆笑。観客から「カカロット?」のツッコミが飛ぶ。本人も思わず笑ってしまうこの一幕で、会場の空気はさらにフレンドリーに。その後、気を取り直して「体と心を使って、命の限り、燃え上がれ!」と煽って、ダンサブルな「Heated」「Celebrate」でパーティー気分を高めていく。
ミディアムダンサーを並べた「Midnight Marauders」「Magic Potion」「S+ -絶世-」は、クールでスタイリッシュなSKRYUという趣。「この曲でみんなとひとつになりたい」と語って始まった「Haaaan!!」では、エイ、カニ、ジョーズ、さらにはウニまで飛び出すお決まりのコール&レスポンスが展開され、会場がそれまでとは一転してコミカルな空気に。フロアが笑いと共にヒートアップしていった。
この日のハイライトのひとつは中盤に訪れた。「Monstar」は、自身の姿をモンスターに例え、独自の道を突っ走る苦悩と喜びを描いた曲。「Bom Bon」は自身の成り上がリズムを描いた曲。少しテンポを落としたこの2曲で心の内側にある感情をスピットし、そこから老後の自分を想像して書いた「スパンコールじいちゃん -輝絶-」へと進めていく。そして、同曲の歌詞を替えて《横浜の街に〜、爆音流して〜、目覚まし代わりの……》とアカペラで歌い、「おはようございます」と囁いてから大人気曲「How Many Boogie」へ。楽曲の文脈も含めて流れが鮮やかで、その後の「GOKAICHO」「ハイブランド」で、さらに熱狂が加速していった。
後半の「Vent」「Country Roads」「Mou Vah」「Screw Driver」「Mountain View」は成功を夢見て走り続けてきたSKRYUの物語が浮かび上がるセクション。「Mountain View」では観客が一斉にスマートフォンのライトを点灯し、スーパースターへと駆け上がったSKRYUを祝福するようにフロアが光の海に変わる。その光景を見つめながらSKRYUはこう語った。「もしかしたらシャレにならねえぐらい売れちまうかもなって、自分でも思う。みんなの目を見て、たくさんの声を聞いて、俺はそうなる運命なんじゃないかって思う」。
そして、「前だけ見て走ってるけど、ふと振り返ったときに聞こえる歓声こそが本当の絶景なんじゃないかな」と続け、「まだみんなと一緒に見てみたい景色がたくさん残ってます」と語った。その言葉を合図に、ツアーのテーマ曲ともいえる「Shangri-La -絶景-」へ。この日公開されたばかりのミュージックビデオでも描かれる“世界へ羽ばたく覚悟”が、ライブのクライマックスとして鮮やかに響いた。
その後の「超Super Star」ではこの日最大の大合唱が巻き起こる。曲の途中でSKRYUが上裸になると、会場は興奮のるつぼ状態。ラストのサビで“悩み事なんて全部なくなった お前らのおかげだー!”とリリックを変えてシャウトすると、フロアからの歓声がそれに重なり、ライブのボルテージは最高潮へと達した。ラストは「KT Zepp Yokohama公演 Day One。これにてクランクアップだ」という言葉を合図に「クランクアップ」を披露。緻密に組み上げられた構成で、ツアー初日のライブは幕を閉じた。
この日のライブでは開演前の影ナレでスマホ撮影OKをアナウンス。「MCがスベっても途中で帰らないでください」「途中で全裸になっても訴えないでください」といったジョーク混じりの注意事項で会場の空気を和ませていた。このライブレポも初日公演にもかかわらずセトリを細かく公開。ネタバレも歓迎するかのようなこの姿勢は、ライブそのものへの自信を感じさせるものだ。コミカルもシリアスも、気骨もおふざけも、全方位で全力パフォーマンスして観客を徹頭徹尾楽しませるSKRYU。まだ上裸で湯気が立ち上がっている程の終演後の楽屋を直撃し、初日を終えたばかりの感想を聞いた。
「今日は滑り出しとして最高でした。最初からお客さんのバイブスが良すぎて、僕がきっかけだけ与えて、お客さんがライブをしてくれたような感覚。僕が盛り上げて大きな波を起こすというより、すでにできていた大きな波に乗っからせてもらったライブでした。
多少の緊張はありましたけど、MCでスベり散らかしてるうちにほぐれましたね。スベっても途中で帰る人いなかったのは開演前の影ナレ通り(笑)。そういう意味でも本当にお客さんのおかげ度数が高い初日でした。
セットリスト的には、『ピンクのワゴン -悶絶-』が出たときの最初のドカンが印象的でした。新曲なのにあそこまで盛り上がったのは、ちゃんと聴いてくれているんだなという愛を感じましたね。前半はとにかく飛ばしまくって、その後の『Ahhhhhhh! -絶叫-』と『They want SKR』は、最新のオールドスクールHIP HOPと、自分が最初にやったビートジャックを時を越えてつなぐような演出にしたんです。『They want SKR』で“今日のKT Zepp満員御礼”っていうフリースタイルを入れられたのも良かった。当時は到底言えないような言葉だったので、時間を越えた感じがありました。
『スパンコールじいちゃん -輝絶-』から『How Many Boogie』のMCの流れは自分でもうまくいったなと思います。『Vent』からの後半はこれまでの歩みを振り返るストーリー性をもたせて、リリックでつないでいくような聞かせ方を意識しました。
僕にとって絶景って、前を見て走っているときじゃなくて、ふと振り返ったときに見えるものなんです。『Shangri-La -絶景-』のMCでも話しましたけど、今日みたいに、みんながいてくれる景色こそが絶景なんだということが伝わっていたらうれしいです。
今回のツアーは、自分がやりたいことを何の制約もなしにやり散らかさせてもらってます。自分が一番表現したいことをノンストレスで詰め込んでいるので、軽薄な気持ちで元気をもらいに来てもらえたらうれしい。初めて僕のライブを見る友達にもおすすめできるライブになっていると思うので、ぜひお誘い合わせの上、軽々しい気持ちで踊りに来てくれたらなって思います!」
このツアーでは3種類のセットリストが用意されている。この日の公演は“いとset”。もうひとつが“いろset”だ。これらは半分以上の楽曲が異なり、さらに両方のオイシイところを集めた“ぜつset”も存在する。“絶”の文字を分解すると“糸”と“色”。幕の内弁当のように両方の魅力を詰め込んだのが“ぜつset”となる。つまり、どの会場に足を運んでも違った楽しみ方ができるというわけだ。Zeppツアーはまだ始まったばかり。SKRYUがこの先どんな“絶景”を見せてくれるのか、期待は高まるばかりだ。
文/猪又 孝