●マルチ･プラチナ･ロック･バンドであるスウィッチフットの8枚目のスタジオ･アルバム『ヴァイス･ヴァーサス』が完成した。ニール･アヴロン（ウィーザー、リンキン･パーク）をプロデューサーに迎え、アルバムの大部分をカリフォルニア州サンディエゴにある彼らのホーム･スタジオでレコーディングされた新作だ。グラミー賞を受賞した前作『ハロー･ハリケーン』のプロデューサーをつとめたマイク･エリゾンド（エミネム、レジーナ･スペクター）は、エグゼクティヴ･プロデューサーとして参加した。2009年にリリースさせた『ハロー･ハリケーン』は、全米アルバム･チャートで13位に初登場し、収録曲にはモダン･ロック･ヒット「ザ･サウンド（ジョン･M･パーキンズ･ブルース）」や「メス･オブ･ミー」が含まれていた。

●「『ヴァイス･ヴァーサス』は、緊張と解放のアルバムなんだ。人間が日々経験する両極端を表現しようとトライした作品。太陽と影。ハイとロー。笑いと痛み。希望と恐怖。不信感と信頼。」とリード･シンガーでギタリストのジョン･フォーマンは言う。タイトル･トラックで彼はこのような歌詞を書いた。「“全ての恵みは呪いとセットでやってくる。俺には悪徳があるけど、美徳もある。”そういう意味で、俺たちは常に緊張感の中で生活してるんだ。『ヴァイス･ヴァーサス』は魂の音楽なんだ。人間の心に迫る作品。その日々の緊張感を曲に変えるんだ。」

●『ヴァイス･ヴァーサス』は、じっとしていられない彼ららしい作品で、その為に1曲を丸々その「じっとしていられない」状態を表現するのに費やした。トライアスロンよりランニング･マシンを選ぶ事に対する不本意さにも似ているバンドが抱く不安感こそ、彼らの力となり、新しい音楽の域に踏み込んだり、ジョン･フォーマンに揺るぎなく正直な歌詞を書かせるのだ。その緊張感は、アルバム1曲目「アフターライフ」の冒頭のコードからいきなり聴き取る事が出来る。そして曲が進むにつれ、更に意志がハッキリと語られる。「俺は火の味を知った。そして生まれる準備が整った。思いを押し殺して、大丈夫だとは言えない。準備は出来た。来世なんて待てない。今から永遠が始まる。」

●「アフターライフ」や「ザ･ウォー･インサイド」は、『ハロー･ハリケーン』のハードなエッジのきいたアプローチを更に一歩前進させた曲だ。それについてビルボード誌は、次のように評している。「パワフルでアンセム的なロック･ナンバー…U2の『アクトン･ベイビー』とリンキン･パークの融合」。全体的に見ると『ヴァイス･ヴァーサス』は、今までの作品よりも幅広いアルバムになっている。物静かに輝く「スーヴェニール」とタイトル･トラックが、クセになる「ザ･オリジナル」、そしてフー･ファイターズを髣髴とさせ、大部分がセリフのような「セリング･ザ･ニュース」とぶつかり合う。「セリング･ザ･ニュース」は、ベック･ミーツ･ビースティー･ボーイズとも言えるメディアにコントロールされる国について歌われた、詩的な1曲だ。歌詞の一部は、このように歌っている。「アメリカは報道されるストーリーに耳を傾ける。押し売り、全て大文字で太字のニュース。不安を助長するような疑問を投げかける。目に衝撃を与え、耳をくすぐる。真実は見えるものだけじゃない。ニュースを商売道具にしているんだ。」

●しかしスウィッチフットは、身の回りの矛盾を詳細に語る事で満足している訳ではない。刺激的なリード･シングル「ダーク･ホーセズ」が明確に語っているように、我々は乗り越える力と、暗闇に立ち向かっていける力を授かり、そのように作られているのだ。最近、ジョンがハフィングトン･ポスト紙に語ったインタビューで、この件に触れている。（http://www.huffingtonpost.com/jon-foreman/meaning-of-life_b_874934.html）下記は、その記事からの抜粋だ。

「芸術は、不器用な痛みから生まれる。腹の痛みからの方が、心地よさよりも沢山学ぶことが出来る。彫刻家の彫刻刀は、固まりに命を吹き込み、新しいものを生み出す。同じように、俺たちは周りを取り囲む世界を攻撃する事で、新しい何かを生み出そうとしているのだ。過去と現在を的確に観察する事で、将来を創造する。一息、一息。」