ラヴェルは、敬愛するガブリエル・フォーレの75歳の誕生日（1920年）を祝うために、この作品を作曲しました。タイトルにあるように、「フォーレ（FAURÉ）」の名前を音名に変換し、それをモチーフとして使用しています。このような作曲技法は、音楽のアナグラム（musical cryptogram）と呼ばれ、19世紀末から20世紀初頭の作曲家たちの間でよく用いられました。フランス語のアルファベット表記を基に、フォーレ（FAURÉ）の名前を音楽の音名に当てはめ、（F-A-D-E）を基にした旋律が、静かで優雅な雰囲気を作り出しています。この作品はラヴェルの中では小品に分類され、単独で演奏されることもありますが、フォーレに関連するプログラムの中で取り上げられることもあります。録音も比較的少ないですが、ラヴェル愛好家の間ではよく知られています。

ラヴェルの《フーガ ヘ長調》（Fugue en fa majeur pour le Prix de Rome 1901, M. 27）は、1901年にローマ大賞（Prix de Rome）のために作曲された作品です。このフーガは、当時パリ音楽院の学生だったラヴェルが、ローマ賞の一次審査（フーガ作曲課題）の課題として提出したものです。ラヴェルはローマ賞に何度も挑戦しましたが、1901年の試みは一次試験で不合格となり、最終試験に進むことができませんでした。この年の試験官にはシャルル＝マリー・ヴィドールやテオドール・デュボワが含まれていましたが、彼らはラヴェルの作風をあまり評価しなかったとされています。このフーガはラヴェルの主要な作品と比べると演奏される機会は少なく、録音も限られています。しかし、ラヴェルの学生時代の作風や彼の対位法技術を知る上で興味深い作品といえます。

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