ブルックナー生誕200年記念 ワーナー名演SACDシリーズ(SACDハイブリッド仕様/日本独自企画)

革新的な作曲へのアプローチで、当時のクラシック音楽界に多大な影響を与えたアントン・ブルックナー(1824~96)。2024年9月4日、オルガニスト、作曲家、そして音楽の巨匠アントン・ブルックナーは生誕200周年を迎えます。そこでワーナークラシックス(旧EMI 及び Teldec録音)所有のブルックナーの交響曲作品の名演を、新規にリマスター&マスタリングを行い、SACDハイブリッド仕様としてリリースしてまいります。

《発売にあたっての新リマスター》
今回の発売にあたって、オリジナルマスターより、日本の名マスタリング・エンジニアのひとりである藤田厚生氏にリマスターをお引き受けいただきました。藤田厚生氏は、これまでタワーレコード専売商品《Definition Series》でリマスターを行っており、定評のあるマスタリングを行ってきています。
2000年以前のデジタル録音(16bit/44.1kHz)では収録密度や情報量が少なかったため(またはアナログ/デジタル変換時に失われてしまった)、現在のハイレゾ対応のオーディオセットでは発揮できていないとも考えられます。そこで収録できなかった倍音やハイレゾ音域を、最新テクノロジーによる特別なプロセッサー処理により再構築し復活させ、広い周波数帯域とダイナミックレンジを最大限に活かすことによって、はっきりとした定位やダイナミックさにリアル感が生み出さます。ホール内の音楽本来の豊かな音色、滑らかさ、残響を維持し、名指揮者たちが意図した楽器配置や音量の絶妙なバランス等による名演奏がここではじめて明らかにされています。
SACD層に限らずCD層でも、リマスターされたDSD音源からその音が発揮されるよう細心の注意を図りながらマスタリングされ、その音を最大に反映させています。

最高品質の音をお届けするために、以下の高品位なプロ仕様の機器を使用
• 高解像度フォーマット用に設計されたプロフェッショナル DA-ADコンバーター。
• オーディオ信号を処理するためのプロフェッショナル用アナログ機器。
• 信号劣化を最小限に抑えるための高品質オーディオケーブル。
• 正確なタイミングと同期を維持するための、低ジッター・マスタークロック・ジェネレーター。
• 干渉を最小限に抑え、すべての機器の安定した動作のためのクリーン電源システム。
• リマスタリングプロセスを正確にモニタリングするための、モニタースピーカーシステム。

※国内盤は、ジュエルケース、グリーンレーベル仕様
※ブックレットには、鈴木淳史氏による新規書下ろし解説を掲載
※カイルベルトの2タイトルは、オリジナル・アナログマスターより新規リマスター。
※チェリビダッケのみインターナショナル発売の直輸入盤となります
(輸入盤ですがリマスターは藤田氏によるもの)
※各ジャケットは、オリジナル発売時のデザインを使用


ブルックナー生誕200年記念 ワーナー名演SACDシリーズ(SACDハイブリッド仕様)発売予定
国内盤は、各¥3,000(税抜) 各¥3,300(税込)

◆第1回発売:8/7(水)発売  
WPCS-13853 リッカルド・ムーティ&ベルリン・フィル/ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」
WPCS-13854 リッカルド・ムーティ&ベルリン・フィル/ブルックナー:交響曲第6番(ノヴァーク版)
WPCS-13855 ジェフリー・テイト&ロッテルダム・フィル/ブルックナー:交響曲第9番(ノヴァーク版)

◆8月23日発売 インターナショナル発売輸入盤 (オープン価格)
チェリビダッケ&ミュンヘン・フィル/ブルックナー録音集(12枚組)藤田厚生リマスター
(ワーナージャパン取扱い輸入盤のみ日本語解説書・帯付き)


◆9月発売予定
アントニオ・パッパーノ&サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団/交響曲第8番
(パッパーノBOXのみに収録の、2019年録音の未発表ライヴ音源)
新しい録音のため、藤田氏はSACDのためのマスタリングを担当。


◆10月発売予定
ヨーゼフ・カイルベルト、ベルリン・フィル/交響曲第6番
ヨーゼフ・カイルベルト、ハンブルク国立(州立)フィル/交響曲第9番
(カイルベルトは、オリジナル・アナログマスターから新規リマスター)
ロリン・マゼール、ベルリン・フィル/交響曲第7番
ロリン・マゼール、ベルリン・フィル/交響曲第8番

◆11月発売予定
ニコラウス・アーノンクール、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団/交響曲第3番
ニコラウス・アーノンクール、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団/交響曲第4番

◆12月発売予定
ニコラウス・アーノンクール、ウィーン・フィル/交響曲第7番
ニコラウス・アーノンクール、ベルリン・フィル/交響曲第8番

 

《新リマスターによるワーナーのブルックナーの名演の新発見》 音楽評論:西村祐

◆アントニオ・パッパーノのブルックナーの8番

パッパーノが2005年から23年までの長きにわたって音楽監督を務めてきたローマ聖チェチーリア国立音楽院管とのユニークかつエキサイティングなブルックナー。今年5月にまとめられた交響作品などを収めたボックスで初めてリリースされたライヴ録音(2019年4月26〜28日)で、彼らの実力と特色が十分に発揮された名演である。
今回も彼らの特色とも言える歌心が味わえ、ブルックナーとしては異例なほどカンタービレな演奏。静謐な第3楽章コーダでもそうで、ヴァイオリンにはヴィブラートがたっぷりかかっているが、品格は保たれている。
美感にあふれた暖かな音色の弦、パワフルかつ雄弁な金管と木管の瑞々しさが絡み合い、非常に濃密な音楽が連続する。この作品にこれほど曲線的な美しさが秘められていたとは、新たな発見だ。
今回のSACD化によって響きの密度とパワーが格段に上がった。楽章が進むにつれてオーケストラが熱を帯びていくのもよく聴き取れるようになっている。

◆チェリビダッケのブルックナー録音

チェリビダッケとミュンヘン・フィルによる有名なブルックナー録音。ブルックナーの理想像を高い集中力で実現させようとする晩年のチェリビダッケとオーケストラとの共同作業のさまがよくわかる演奏として知られてきたが、今回のリマスターは今まで聴いてきたものとは趣が異なり、会場を包む空気感や緊張感、そしてチェリビダッケの真に伝えたかったことが感じ取りやすい音質となった。
今回のリマスターのポイントは、当時の16bit/44.1khzによるデジタル録音、または変換されしまい収録できなかった倍音やハイレゾ音域を最新のテクノロジーによって復活させたこと。豊かで伸びやかな響きとなり、今まで平板にすら聴こえていた全合奏にはダイナミックな広がりと奥行きが加わったのが特徴である。
チェリビダッケのブルックナーは、晩年の演奏になればなるほどその「極限的な遅さ」が好悪を分けた。確かに彼が存在のすべてを賭けて臨んでいた演奏会を体験していない聴き手にとっては、弛緩しているように聴こえることもあったかもしれない。しかしこのリマスターからは、その「長い時間」こそに大きな意味があり、チェリビダッケにとってなぜこのテンポが必要だったのかが理解できるように思える。たとえばこれらの演奏では随所に登場する長大なクレッシェンドの末にもたらされるクライマックスがまさに巨大だが、オーケストラに経過と結果を(瞬間ごとの響きを聴き取りつつ)綿密に構築させたいというチェリビダッケの意図がわかってくる。すべての音とフレーズがある一点を目指して動き始め、各パートが連動し絡み合い、最後にそれが大きなまとまりとして爆発するさまを以前にもまして味わうことができるのだ。
現地での経験を記した多くの評論による、「透明感」や「暖かさ」といったキーワードのとおりの音が今回のリマスターで初めて再現され、チェリビダッケとオーケストラが細部にわたって作り込み、本番で実際に響かせていた音の姿を想像することができるようになったのだ。
 

◆ジェフリー・テイトのブルックナーの9番

アジェフリー・テイトが翌1991年から首席指揮者を務めたロッテルダム・フィルを指揮した演奏。当時のテイトは一部で「モーツァルト指揮者」とでもいうようなあらぬ誤解を受けていたが、元来はオペラ畑で修業し、デビュー直後にはメトでの《ルル》で注目されたように、劇的な表現に非常に長けていた。また透明ながら密度の濃い和声感を持っており、このブルックナーで彼はそれらを存分に生かしている。今回のリマスターで、和声のはまり具合、各セクションのバランスと音の美しさ(金管、特にテューバの艶のある音色が素晴らしい)、立体感、不協和音のぶつけ方など、彼の音楽作りの特徴が余すところなく聴こえてくるようになった。特に終楽章の不協和音(バランスも見事)と直後の長いパウゼの緊張感は筆舌に尽くしがたい。これはテイトの再評価につながる見事なリマスターと言っていい。

◆リッカルド・ムーティのブルックナーの4番

ムーティがベルリン・フィルと入れた2曲のブルックナーのうちのひとつ。この作曲家の録音が多いとは言えないムーティのディスコグラフィの中で、ブルックナーの交響曲の中で最も知られる名曲が残されていることの意義は大きい。今回のリマスターにより、これまでは聴こえにくかった録音会場の空気感やオーケストラ全体の響きがよく感じとれるようになっている。弦の絨毯とそれに乗るホルンのしっとりした音色から始まる冒頭部から素晴らしい。トレモロの粒がすべて聴こえるほどクリアにもかかわらず、頂点ではオケ全体がまとまって響くのだ。随所に出る全合奏の豊かな量感や弦の艶やかな音色は、このリマスターの特徴のひとつで、全く刺激的でないのに巨大なスケールで鳴り渡る両端楽章のコーダ(ホルンとティンパニ!)もすごい音だ。

◆リッカルド・ムーティのブルックナーの6番

ブルックナーの録音が多いとは言えないムーティのディスコグラフィ(他には第2、4、9番があるのみ)だが、中でも演奏機会の少ないこの作品をベルリン・フィルと取り上げてくれた喜びは大きい。これまでの発売されていたCDの音は、各パートが存分に自己を主張することによって立ち現れる緊張感が前面に出た印象だった。しかし今回のリマスターでは、その強いテンションをはらんだ音色の角が取れ、広い空間の向こう側から美しい内声の動きや対旋律が立体感を伴って聴こえてくることとなった。作品の叙情性と裏に隠された複層性へのムーティのバランス感覚の巧妙さを再発見できるだろう。



西村祐…音楽評論、フルート奏者。旧「レコード芸術」吹奏楽/管打楽器部門月評担当のほか、ハイレゾを含むオーディオや録音の批評や執筆も行っている。
 

ワーナーミュージック・ジャパン

Release Info

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Nikolaus Harnoncourt / ニコラウス・アーノンクールブルックナー:交響曲第3番(SACDハイブリッド)

2024.11.06 発売JPY3,000¥3,300(税込)/WPCS-13863

Nikolaus Harnoncourt / ニコラウス・アーノンクールブルックナー:交響曲第3番(SACDハイブリッド)

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