充実した響き、スタイリッシュな造形で聴かせるモーツァルト。

若々しい推進力に溢れる歌心に富んだベートーヴェン。

ムーティ＆フィラデルフィアの見事な融和。

熱いカンタービレ、豪快なサウンドが炸裂するのチャイコフスキー。

記念すべき年に披露された、ムーティ＆VPOの暖かな信頼関係。

みずみずしい感覚で描き上げられたメンデルスゾーン。

　人心の機微を活写したロレンツォ・ダ・ポンテのイタリア語台本に、モーツァルトが熟達した音楽を書き上げた『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『コシ・ファン・トゥッテ』の3作は、クラシック音楽の長い歴史の中でも指折りの傑作とされています。 　モーツァルトを得意とし、オペラにも精通した指揮者であるリッカルド・ムーティは、早くからこれらの作品に取り組み、数多くの各地での実演を通じて解釈を深めてもいます。 　今回、セットに収められた演奏は、どれもウィーン・フィルを起用したもので、長い伝統を有する特別なオケとの共同作業により、めざましい成果が達成されています。 　演奏スタイルは伝統的なモダン楽器によるものですが、楽器編成は少なめに構成され、キビキビとしたテンポで、ウィーン・フィルならではの副次旋律強調や見事な抑揚の伴奏を聴かせ、アリアやレツィタティーヴォ、重唱、合唱が入り交じる多彩な筆致のモーツァルトの魅力に迫っています。 　オペラ指揮に高度な手腕を持つムーティだけに、多くの歌手をまとめあげての絶妙なカンタービレ美学の構築も成功しており、随所に華のある表現が表れています。

フィラデルフィア管のゴージャスなサウンドが炸裂。ムーティ唯一の《シェエラザード》。

溌剌とした若さ漲るベートーヴェン。

ムーティのパワーが炸裂する痛快なプロコフィエフ。

ムーティ2度めの、劇的な表現力に富んだヴェルディの《レクイエム》。