2023年に生誕100年、没10年をむかえた指揮者《ヴォルフガング・サヴァリッシュ》 その職人的な指揮ぶりが堪能できる、旧EMIへのシンフォニック、歌曲、合唱作品録音全集

サヴァリッシュとドレスデンによる名盤「シューマン：交響曲全集」が、 アナログLP盤として復活。  

サヴァリッシュ生誕100年記念の100トラック・アルバム。録音キャリアは40年以上に及ぶ20世紀で最も影響力のある音楽家であり、そのドイツ音楽については高い評価を獲得した。リヒャルト・シュトラウス、シューマン、シューベルト作品の名指揮ぶりと、引っ張りだこであったピアニストとしてのバーバラ・ヘンドリックスやフィッシャー=ディースカルとの歌曲、アントンセンとの室内楽録音など、1956-1997年録音。 100トラック／10時間21分収録

サヴァリッシュがロンドン・フィルを指揮してのブラームスデジタル・シリーズ第2作。1989-1990年録音。

サヴァリッシュお得意のリヒャルト・シュトラウス デニス・ブレインとのホルン協奏曲（2曲）、英雄の生涯、ヘンドリックスとの「４つの最後の歌」など、1956-1996年録音。 55トラック／約4時間収録

サヴァリッシュのディスコグラフィ・シリーズ　 2023年8月はサヴァリッシュの生誕100年。ナターリヤ・グートマンとのチェロ協奏曲、名曲交響曲第7番、モラヴィア地方の歌を基にした交響的変奏曲の組み合わせ、1991-1992年録音。 28トラック／1時間37分収録

サヴァリッシュのディスコグラフィ・シリーズ 80年代後半～90年代前半にロンドン・フィルと録音したブラームスの名録音、1989-1991年録音。 10トラック／1時間41分収録

2023年8月26日サヴァリッシュ生誕100年 得意としたロマン派作品のデジタル化　 音楽監督就任直前のフィラデルフィア管とのドヴォルザーク、 1988-1989年録音。　 9トラック／1時間33分収録

イタリア中心だった19世紀以前のオペラ界。そこに登場したウェーバーによってドイツ・ロマン派のオペラは本格的に始まったと言えるでしょう。数多くのオペラを残したウェーバーですが、よく知られているのは『魔弾の射手』ほか数作。しかし序曲は良く演奏・録音され、ロマンティックなメロディ、魅力的な色彩、豊かなオーケストレーション、熱きドラマ展開、叙情詩の垣間に見せる瞬間など、ドイツ・ロマン派精神が受け継がれています。正に伝承の語り部のような存在指揮者だったのがサヴァリッシュと言えるでしょう。必要以上の自己主張を避け、音楽の背景を熟慮、熟考しながら、作曲家の精神を伝達しようとする彼の指揮によって、ウェーバーの存在価値は一層顕著にこちらに伝わってきます。

演奏にあたっては大編成のオーケストラを要し、透明で室内楽的なサウンドから管弦楽曲的な巨大音響まで含むという表現の幅の広さは、オーケストレーションの達人であるシュトラウスとしてもかなり高度なもので、スコアが完璧に再現された際のオーケストラ・サウンドの雄弁さには凄いものがあります。このバイエルン放送響を指揮したセッション録音盤は、作品理解に最適な全曲盤とても大きな存在意義を持っています。

シューベルト演奏に力を注ぎ、マイナーな作品の紹介にも熱心に取り組んできたサヴァリッシュならではの完成度高い内容。シューベルトのミサ曲は、親しみやすい美しさにあふれたものが多く、ときに感傷的な旋律も交えながら、平明さの中にもときおり独自の奥深さをのぞかせる音楽が印象的。作曲された時代は古典派とロマン派の端境期で、志向していた音楽はロマン派的、しかし技法的には古典派的というシューベルト独特の立ち位置を、サヴァリッシュはあくまでも楽譜に即した形で甘美さに溺れることなく入念に表現、結果としてシューベルトの音楽の多様性が際立つことにもなり、情報量の多さが作品の包含する可能性についても考えさせてくれるのが印象的です。 世俗合唱曲（と重唱曲）もシューベルトならではの旋律美に恵まれており、酒や恋、自然や戦いについての率直な心情が歌い上げられた作風が魅力的です。サヴァリッシュはここで、小編成の合唱団であるカペラ・バヴァリアのほか、ミュンヘン拠点に活躍する気の合う歌手たちを起用し、親密な世界をつくりあげています。  

若かりし時の指揮者サヴァリッシュが、作曲家カール・オルフ監修のもとで録音した、グリム童話を元にしたオペラ。